いすゞグループ人権方針

2022年2月25日、「いすゞグループ人権方針」(以下、本方針)を取締役会で決議し、制定しました。
2023年12月、同年5月に発表した新経営理念体系「ISUZU ID」の内容を踏まえ、本方針を改定しました。
本方針は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠したものであり、国際社会において、人権尊重に対する企業文化の醸成と事業活動全般にわたる取り組みが期待される中、企業の社会的責任として人権を尊重した事業活動を推進することで、持続可能な社会の実現に貢献するいすゞの考え方を改めて表明するものです。
いすゞは、本方針に従い、国際規範、法令、グループ規範などを遵守し、グループ人権推進体制の整備、人権デュー・ディリジェンスへ取り組むとともに、役員・従業員への適切な教育を行っていきます。また、ビジネスにおける人権尊重の重要性を踏まえ、ステークホルダーとの対話を行い、事業パートナーおよびお取引先様に対しても理解促進に努めていきます。
本方針は、より多くのステークホルダーにご理解いただくために、現在9つの言語で公開しています。詳細は「いすゞグループ人権方針」をご参照ください。

マネジメント体制

人権尊重に対する企業文化の醸成と事業活動全般にわたる取り組みが期待される中、いすゞグループは、企業の社会的責任として人権を尊重した事業活動を行っています。人権課題は、取締役副社長を委員長とし、各部門の担当役員をはじめとする経営層で構成されるサステナビリティ委員会で審議され、重要事項に関しては、経営会議、取締役会に報告しています。執行については主に専任部署であるサステナビリティ推進部が関係部門とともに推進しています。サステナビリティ委員会の下部組織で、社会性課題を扱うワーキンググループである社会性推進部会では、全部門の代表者が人権課題について議論しています。
また、2022年度からは、グループサステナビリティ連絡会において、国内外のグループ企業のサステナビリティ責任者と情報を共有するとともに、各社の人権担当者を選任し、グループ一体となって人権尊重の取り組みを推進しています。

取締役会 経営会議 サスティナビリティ委員会 事業系CN推進部会 製品系CN推進部会 資源循環推進部会 環境管理推進部会 社会性推進部会 グループサステナビリティ連絡会

人権デュー・ディリジェンス

いすゞグループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)に則り、いすゞグループ人権方針のもと、人権デュー・ディリジェンスのプロセス構築を進め、人権尊重の実践に取り組んでいます。

人権デュー・ディリジェンスのプロセス

人権方針 人権デュー・ディリジェンス 1.負の影響の特定・評価 2.負の影響の防止・軽減 3.取り組みの実行性の評価 4.説明・情報開示 救済・苦情処理メカニズム ステークホルダーとの対話

負の影響の特定・評価

2023年いすゞグループは、外部有識者である経済人コー円卓会議日本委員会(CRT)の協力を得て、グループの事業活動が人権に及ぼす潜在的なリスクの洗い出しを実施しました。具体的な手順としては、サステナビリティ委員会の下部組織である社会性推進部会において全部門が参加し、バリューチェーンの工程ごとに懸念される人権リスクについて討議しました。更に、関係部署にインタビュー調査を実施し、討議やインタビューの内容を社会からの視点で分析、整理の上、優先的に取り組む人権テーマを特定。サステナビリティ委員会で議論の上、決定しました。

特定した優先的に取り組む人権テーマ

①販売会社を含む自社グループ、および広義のサプライチェーンの外国人労働者問題
②物流・バリューチェーン下流を含むバリューチェーンにおける人権課題と取り組みの管理

社会性推進部会でのワークショップの様子

外国人労働者に関する人権デュー・ディリジェンスの取り組み

現在、日本の自動車産業において、多くの技能実習生などの外国人労働者が従事しており、いすゞグループおよびお取引先様においても多数の企業で外国人技能実習生を受け入れていることを確認しています。そのため、外国人労働者に係る問題をいすゞのサプライチェーンにおいて重要な人権テーマの一つとして、さまざまな対応を行っています。
2022年4月には、これまでのいすゞの取り組みが認められ、「優良な実習実施者」に認定されました。引き続き、働きやすい職場環境整備や監理団体と連携したサポート体制の構築・維持を推進していきます。

外国人技能実習生へのインタビュー実施

人権デュー・ディリジェンスの取り組みの一つとして、2023年1月~2月にグループ会社1社、お取引先様2社において、外国人技能実習生へのインタビューを実施しました。インタビューは、客観性ならびに中立性を確保する目的で、第三者機関(経済人コー円卓会議日本委員会(以下、CRT))の協力のもと、対面で実施しました。その結果、CRTの石田事務局長より、全般に外国人労働者と会社の関係は健全であり、一部改善の余地はあるものの、現時点において特段懸念すべき人権課題はないとの評価コメントをいただきました。今後も、お取引先の皆様のご協力のもと、当該活動を継続・拡大するとともに、改善提案等に関して真摯に対応していきます。

A社(グループ会社) B社(お取引先様) C社(お取引先様)
実施日 2023年1月31日 2023年2月7日 2023年2月8日
対象者の国籍/人数/性別 インドネシア/3名/男性 中国/4名/女性 インドネシア/3名/男性
タイ/1名/男性
第三者機関からの主なコメント(抜粋)
  • 指導者や先輩が良く配慮できており、信頼関係ができている。
  • 40分の自転車通勤は一般的に見てかなり長いため、事故防止のためにも対応を期待。
  • 会社と組合のコミュニケーションも良く、会社側も良くフォローできている。
  • 寮の部屋割りは、複数の選択肢を用意するなど配慮を期待。
  • 指導者をはじめ、小まめに対応することで安心して働ける環境ができている。
  • 社宅の一部に鍵付きの金庫がないケースがあり、改善対応を期待。

負の影響の防止・軽減

人権を尊重するための教育・啓発
従業員向け

企業活動における人権の尊重についての理解を深め、重要性を認識してもらうことを目的として、人権方針策定時、入社時研修時に従業員に対し「ビジネスと人権」をテーマとした人権教育を実施しています。また、国内外のグループ企業に向けては、グループサステナビリティ連絡会にて人権に関する情報共有を行うとともに、人権担当者向けに定期的に人権教育を実施しています。

お取引先様向け

いすゞでは、サプライチェーン全体で人権を尊重した事業活動を推進するため、お取引先様向けの人権セミナーを2021年度より毎年開催しています。2022年度は、いすゞの人権の取り組みをご紹介するとともに、経済人コー円卓会議日本委員会より人権デュー・ディリジェンスの実態についてご講演いただきました。

いすゞサプライヤーサステナビリティガイドライン

いすゞでは、これまで「サプライヤーCSRガイドライン」に基づき、お取引先様と一体となった社会的に責任のある調達活動を行ってきましたが、サステナビリティの潮流やステークホルダーの皆様の期待の変化を踏まえ、2022年12月に「いすゞサプライヤーサステナビリティガイドライン」(以下、本ガイドライン)に改定しました。
今回の改訂では、同年2月策定のいすゞグループ人権方針に基づく記載とするなど、いすゞのサプライチェーン全体で環境や人権などサステナビリティに関する価値観を共有するため内容の充実を図り、本ガイドラインをお取引先様の取り組みの推進に活用いただくとともに、お取引先様のみならずお取引先様のサプライチェーンに対しても周知・実態把握に努めていただくよう依頼しています。
お取引先様にはこのいすゞの考えに同意し、いすゞに供給する全ての製品・サービスに関して本ガイドラインの要請に準ずることの確認として、同意書への署名をお願いしています。2023年5月現在、年間購買金額の約80%を占めるお取引先様から署名をいただいています。

労働問題への取り組み
児童労働の防止

いすゞでは児童の採用を規則で禁止しており、2022年度について18歳未満の方の採用実績はありません。

強制労働の防止

いすゞが直接雇用する従業員は、就業規則ならびに会社が従業員の過半数で組織する労働組合の同意を得て特に定めたことのほかは就業について強制されまた規制されることはありません。また、その国籍信条または社会的身分を理由として、就業規則に定める労働条件について差別的取扱いをうけることはありません。

生活賃金の支援

いすゞでは、過半数労働組合であるいすゞ自動車労働組合と年齢別企業内最低賃金協定を結び、働く従業員の生活水準のセーフティネットを設けており、毎年の労使交渉の中でその水準について協議し、必要に応じて改定を行っています。また、休職時の賞与などにも一定の基準を設け、生活の安定に資する取り組みを行っています。

なお、本協定はいすゞ自動車労働組合が上部団体である全国いすゞ自動車関連労働組合連合会へ報告することで、グループ全体の最低賃金の引き上げの働きかけが行われています。

労働問題へのリスク評価

労働問題、差別、ハラスメント、メンタルヘルス、価値観の相違に起因するマネジメント不全などの項目においてリスク特定を行い、四半期ごとに発生の有無、対策評価を実施し、リスク予防と顕在時の影響最小化に努めています。
特に、文化・言語が異なる環境で勤務する海外技能実習生については、これまでのいすゞの取り組みが認められ、2022年4月に「優良な実習実施者」の認定を受けました。引き続き、強制労働につながる人権リスクを排除するとともに、さらなる働きやすい職場環境整備や監理団体と連携したサポート体制の構築・維持に向けまい進していきます。
なお、2022年度はいすゞの事業活動に影響を与えるような労働法に関連する違反は確認されていません。

いすゞモーターズサウスアフリカにおけるブラック・エコノミック・エンパワーメント政策の取り組み

いすゞグループは現地での雇用を基本としており、事業展開する国、地域での現地採用を積極的に行っています。
南アフリカおよび周辺国向けに商用車、バス、LCVの生産・販売を行っているいすゞモーターズサウスアフリカ(以下、IMSAf)では、地域の雇用促進のみならず、南アフリカ独自のブラック・エコノミック・エンパワーメント政策(Broad-Based Black Economic Empowerment:以下、B-BBEE)に賛同し積極的に取り組んでいます。
IMSAfの管理職の内39%がHDSAでそのうち、2022年は9%が昇格。また新たにHDSAの方を16%採用しました。
また、IMSAfは3年連続でB-BBEEスコアカードのレベル1を獲得し、商用車メーカーで唯一レベル1を達成しているだけでなく、過去最高得点を達成しました。

  1. Historically Disadvantaged South Africansの略:アパルトヘイト時代に黒人、カラード、女性など不当な差別を受け、歴史的に不利な立場に置かれてきた南アフリカ人

取り組みの実効性の評価

セルフアセスメントシートによる調査

2021年度より、お取引先様およびグループ企業の人権への取り組み状況など、サステナビリティに関する取り組み状況を確認するため、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン発行の「CSR調達セルフアセスメント質問票」へのご回答をお願いしています。2022年度は年間購買金額の約90%にあたるお取引先様からご回答をいただきました。また、国内外65の連結子会社に依頼し、全社(100%)よりご回答いただきました。
2023年度からは、「いすゞサプライヤーサステナビリティガイドライン」の内容に沿った新自己評価調査票を用いて調査し、リスクが明らかになった場合は、お取引先様へのヒアリングや実地調査を通じて、改善に向けた取り組みを実施する予定です。

救済・苦情処理メカニズム

従業員相談窓口の設置

いすゞは、差別やハラスメント、接待・贈答やインサイダー取引などの包括的な腐敗行為をはじめとするコンプライアンスに関する社内通報・相談の窓口として、3つの相談窓口(職場窓口(担当:所属長)、部門内窓口(担当:部門責任者)、全社窓口(担当:法務部コンプライアンス推進グループ))を設置しています。これらの窓口では、公平かつ中立的な立場で情報を受け付けるとともに、明確に法令違反や社内規程に反する事案だけでなく、疑わしいと思われる内容の相談、社内規程や業務に関係する法令に関する問い合わせ先としての機能を果たしています。
また、外部の弁護士事務所に目安箱(社外相談窓口)も設置しています。
社内・社外の各相談窓口では、相談・問い合わせをメール・FAX・電話・手紙にて受け付けており、公益通報者保護法にのっとり、受け付けた情報提供者の個人名やその内容などは秘匿情報として扱い、社内において不利益な取り扱いを受けることがないよう、保護されています。
これらの相談窓口の周知のため、各相談窓口や目安箱の連絡先を記載した「コンプライアンス・ガイドブック」と「コンプライアンス・カード」を全従業員に配布しています。また、いすゞ品質・コンプライアンス推進会議やポスターなどにより、窓口連絡先の定期的な周知活動を行っています。各窓口で受け付けた通報・相談事項は、法務部コンプライアンス推進グループを事務局として、事実確認・改善に取り組んでいます。
2022年度に社外相談窓口で通報・相談を受け付けたものは46件(いすゞに関するもの9件、グループ企業に関するもの37件)でした。社内・社外相談窓口で受け付けたものについては、適切に対応し、重大なコンプライアンス違反がないことを確認しています。
なお、コンプライアンスへの取り組み状況、相談件数、重大な違反事案などについては取締役会に報告しています。

お取引先様相談窓口の設置

お取引先様に対する中立的な相談窓口として、「お取引先様相談窓口」を法務部コンプライアンス推進グループ内に設け、コンプライアンスに関するお取引先様からの相談を受け付けています。

JP-MIRAI 相談・救済窓口事業への参画

外国人労働者の救済メカニズムの構築として、2022年10月 責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(以下、JP-MIRAI) の相談・救済窓口事業に参画しました。JP-MIRAIは、SDGs の目標年限である 2030 年に向けて、外国人労働者の責任ある安定的な受け入れを行うとともに、労働・生活環境を改善することで、豊かで持続的な社会づくりに貢献し、「世界の労働者から信頼され選ばれる日本」となることを目指すプラットフォームです。本事業では、JP-MIRAIポータルサイトの活用により、外国人労働者の皆様に必要な情報の発信や、匿名かつ多言語対応可能な社外相談窓口での相談対応、参加企業へのフィードバックなどが行われており、現在、いすゞおよびグループ会社2社の外国人労働者を対象として参加しています。また、本事業への参画を通じ、JP-MIRAI事務局や参加企業との意見交換を行っていきます。

ステークホルダーとの対話

いすゞでは、さまざまなステークホルダーに対して自らの考えを発信するとともに、ステークホルダーの声に積極的に耳を傾けることが重要であると考えています。企業が事業を行う上では、人権の尊重が重要であると認識しており、人権に関する外部専門家の協力を得ながら、ステークホルダーとの対話を継続的に実施し、人権課題への取り組みを進めていきます。

ステークホルダー・エンゲージメントプログラムへの参加

いすゞは、事業活動による人権への負の影響について、ステークホルダーの視点から理解することが重要であると考え、経済人コー円卓会議日本委員会が主催するステークホルダー・エンゲージメントプログラムへ、2023年度より参加しています。参加企業、学識有識者、NGO/NPO等が、幅広い人権問題をテーマに対話を行うこの場を通じて、ライツ・ホルダーの視点を理解し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」で求められている人権デュー・ディリジェンスの実施に必要となる知識を得ています。