大型車・車輪脱落事故防止のために

近年、深刻な事態を引き起こす可能性がある大型車の車輪の脱落事故が、年間100件以上発生しており、
タイヤ交換作業時の清掃不足、給脂の未実施、締付トルクの不足等の点検整備不良が主な原因とされています。
タイヤ脱着作業を行うときは、適切な工具・方法が大切です。
取り返しのつかない事故を起こさないように、点検・整備をしっかり行いましょう。

車輪脱落事故の
半数以上
車輪脱着作業後
1ヵ月以内に発生

車輪脱着作業から車輪脱落事故発生までの期間
(令和5年度)

「令和5年度大型車の車輪脱落事故発生状況と傾向分析について」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001765731.pdf)を加工して作成

車輪脱落事故の
半数以上
車輪脱着作業後
1ヵ月以内に発生

「令和5年度大型車の車輪脱落事故発生状況と傾向分析について」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001765731.pdf)を加工して作成

事故は冬期(11月~3月)に集中し、
冬用タイヤ交換後1ヶ月以内に
多く発生する傾向にあります。

正しい作業と点検を怠って
車輪脱落事故を起こしてしまうと・・・

国土交通省は、時速60km/hで走行中のトラックからタイヤが脱落しベビーカーを引いている男性にタイヤが衝突する想定での実験を実施。放出されたタイヤは男性人形とベビーカーに衝突し、約4m飛ばされました。
人形の身体はタイヤに沿うように折れ曲がり、頭もタイヤに打ち付けられ、頭蓋骨骨折、3ヵ所以上の肋骨骨折、脊髄損傷、大腿骨骨折の傷害を負う結果となりました。

画像の出典:YouTube国土交通省 MLIT channel(https://www.youtube.com/watch?v=Szz2ZF7Gd_4

正しいタイヤの脱着作業と
乗車前の日常点検で、
車輪脱落事故を防ぎましょう!

正しい車輪の取り扱い

ちゃんと手順通りにやってますし、
ナットもきちんと絞めているつもりなんですけど
ちゃんと手順通りにやってますし、
ナットもきちんと絞めているつもりなんですけど
ただ締めるだけでは不十分です!

①ボルト・ナットのさび落としと注油

グラフをご覧ください。ボルト・ナットの注油を行わない場合、締付けを繰り返すたびに部品の傷みが進み、締付けトルクに対して発生する軸力が低下することを示しています。締め付け回数が35回を超えるころには軸力は当初の約半分にまで低下するのです。
特に、ナットとワッシャーの隙間への注油を行わないと、締付けで合わせ面がこすれて荒れることにより、発生する軸力が低下しやすくなります。
一方、新品のうちからボルト・ナットに注油を欠かさず行うことで、締め付け回数が50回を超えても新品同様の軸力を維持することが出来ます。

ボルト・ナットの汚れを落とし、
潤滑油を塗布しましょう。
ワッシャーがスムーズに回転しない場合には、
ナットの交換が必要です。

②適正トルクでナット締め

適正なトルクレンチを使って、規定のトルクで確実に締付けましょう。
力任せにナットをオーバートルクで締付けると、最適な軸力を超える軸力が生じ、ホイールボルトが変形して元に戻らなくなるばかりか、ホイールボルトが破損する恐れがあります。既定のトルクは、運転席側のドア部に表示されています。

ホイールナットの締付けは、対角線順に、2~3回に分けて行い、最後にトルクレンチなどを使用して規定のトルクで締付けます。時計回りの締付けでは、最初に締付けをした箇所で軸力が出ず、ホイールナットに緩みが発生する可能性があります。

③50~100km 走行後の増し締め

タイヤ交換後は、50~100km走行を目安に増し締めを実施してください。
規定の締付けトルクで締付けても、走行すると初期なじみによって、軸力が低下するためです。

初期なじみをそのままにしておくと、軸力が図のように低下し続け、場合によっては、ホイールナットの「緩みの限界」を下回ることがあります。増し締めによって、これを防止することができます。

  • ハブのホイール取り付け面やホイールの合わせ面に、ゴミや泥、錆があると、初期なじみによる軸力の低下が大きく、ナットの緩み・脱落などに結びつきます。ホイール取り付け時には、必ず清掃を行なってください。特に、車体下部に吊り下げる形のスペアタイヤキャリアに搭載されていたものを取り付ける場合は注意してください。

詳しい手順は、国土交通省の動画「適切なタイヤ脱着作業手順」や、自動車メーカーの取り扱い説明書をご確認ください。

乗車前の日常点検

ドライバーの皆さんは、車輪脱落事故を防止するためにも、1日1回ナットのゆるみやタイヤの空気圧を確認する日常点検を実施してください。
特に脱落が多い左後輪は重点的に点検をしてください。

①目視での点検

画像:日本自動車工業会「車輪脱落防止のための正しい車輪の取扱いについて」より

  • ホイールボルトおよびナットがすべて付いているか点検します。
  • ディスクホイールやホイールボルトまたはナットから錆汁が出ていないか、 ホイールに亀裂や損傷がないか点検します。
  • ホイールナットからのホイールボルトの出っ張り量を点検します。出っ張り量に不揃いはないか、車輪によって出っ張り量が異なっていないか点検します。

異常がある場合は、ナットの緩みやボルトの折損につながるおそれがあります。

②点検ハンマや小型ハンマを使用しての点検

画像:日本自動車工業会「【車輪脱落防止】ホイールナットの緩み点検方法」より

ホイールナットの下側に指をそえて、点検ハンマや小型ハンマでホイールナットの上側面を叩いたときに、指に伝わる振動が他のナットと違ったり、濁った音がしないか点検します。

異常がある場合は、ナットが緩んでいたり、ボルトが折損しているおそれがあります。

③タイヤ空気圧の点検

画像:日本自動車工業会「車輪脱落防止のための正しい車輪の取扱いについて」より

タイヤ空気圧が不適切なまま走行を続けると、パンクやバーストを招きやすくなります。空気圧が低いまま走行したり、パンクしたまま走行すると、ナットが緩んで脱落したり、ボルトが折損するなど、車輪脱落事故の原因となります。

タイヤに亀裂や損傷、異常な摩耗がないこと、タイヤの溝深さが十分あることを点検するとともに、空気圧が規定の範囲内にあるかを点検します。
特に、ダブルタイヤや偏平ラジアルタイヤの場合は、空気圧が低下していても目視では分かりにくいため、エアーゲージを使用して点検してください。

2021年4月より、国土交通省はホイール・ナットの緩み防止のため、マーキングやホイールナットマーカーを活用した新たな点検の実施の方法等を導入しています。
これらの方法により、ナットの緩みの状態を目視で確認しやすくなります。

ホイール・ナットへのマーキング例

ホイール・ナットマーカー
(緩み無し)

ホイール・ナットマーカー
(緩んだ状態)

画像の出典:国土交通省「大型車の車輪脱落事故撲滅に向けて~ ホイール・ナットの緩み防止のため新たな点検の実施の方法を導入 ~」(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001397006.pdf

ホイールナットマーカーは、大型車メーカー4社のお近くの販売店でお買い求めいただけます。

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