久留米運送株式会社
EVトラック導入課題は伴走型の支援で払拭 大手運送業の導入事例
- #エルフEV
福岡県久留米市に本社を構える久留米運送。企業間輸送を主体とし、九州一円をはじめ、関東、中部、関西に拠点を置き、全国に広がる運輸ネットワークを形成しています。
同社では2030年までに自社車両の1割をEV化する目標を立て、いすゞ自動車とタッグを組みながらカーボンニュートラル達成に向けて邁進しています。導入検討からアフターサービスに至るまでのリアルな事情について、久留米運送、いすゞ自動車の関係者に話を伺いました。
※掲載内容は2025年6月時点の情報です。

脱炭素はもちろん、ドライバーのウェルビーイングにも効果あり
小川さん おっしゃる通りです。当社代表取締役の二又(茂明氏)はかねてよりカーボンニュートラル達成に意欲的で、当初は「自分たちでEVトラックを作ってみてはどうか」と話していたほどです。
さすがにそれは無理ですから、いすゞ自動車に協力を仰ぐことにしました。

小川さん 現時点で4台です。
久留米支店で導入した1台はモニター車としてさまざまなデータをいすゞ自動車と共有しています。福岡支店、北九州支店、みらい九州支店にそれぞれ1台ずつになります。
ドライバーからは非常に評判が良いです。
ディーゼルトラックは振動が多く身体的にもストレスがかかりますが、静粛性が売りのEVトラックではそのストレスがありません。
アクセルを踏めばスムーズに発進するし、離せばスーッと止まります。
「1日の業務を通じて運転中の疲労が軽減された」といった感想も多く、ドライバーのウェルビーイングの面でも非常に効果があります。

井原さん 実際に運転するドライバーとして最初に感じたのは静かさ。騒音や振動がないことに感動しました。
荷物の荷崩れも起きにくいので、その点もメリットです。
エルフEVに乗って1年半が経ちましたが、今ではディーゼルトラックよりも乗りやすいですね。
走行距離は1日平均40キロ、エアコンなどを利用しても帰社したときにバッテリー※は60%ほど残っているので業務に差し支えはありません。
※バッテリー5パック搭載、容量110kWh

鴨川さん 現在は配達・集荷業務で活用しています。
配送地区は近隣の福岡市博多区の東比恵・東光エリアで、福岡県庁などがある中心部の1つ。SDGsの発信も兼ねているので、たくさんの人の目につきやすい博多駅周辺を戦略的に走らせています。
お客様からも「久留米運送のEVトラックを見たよ、何台導入しているの?」と言われることが増えました。
井原さん 確かにEVトラックはまだ台数が少ないため、お客様からも珍しがられます。
小川さん EVであることが目立つように車両デザインをとことん考えました。緑を基調色にすることで、カーボンニュートラルに注力する姿勢をアピールできていると思います。当社ではトラックを“走る広告宣伝車”と捉えていますから、今後も発信に力を入れていくつもりです。

トータルソリューションプログラム「EVision」による伴走型の安心サポート
川原 EVはこれまでになかった商材を販売するビジネスです。だからこそ車両単体ではなく、周辺環境も含めた緻密な提案が求められます。
そこでいすゞではトータルソリューションプログラムの「EVision(イービジョン)」を用意し、お客様が安心できる伴走型のサポート体制を確立しています。
今回もEVisionを通じて、久留米運送様の使用状況に沿ったEVトラックの運用シミュレーションをご提案しました。

加えて運用上の困りごとがあれば専用のアシストセンターで迅速に対応できますし、仮に運用中に故障があっても追加費用の負担なしで初回最長10年間対応するフルメンテナンスリースをご提供しています。
また、リースアップ後はバッテリーの状態を診断し、再リースプランも提案しています。
これらアフターサービスに至るまでの内容をご説明したうえで、導入時の判断材料としていただきました。

鴨川さん そこまでリスクを引き受けてくれることで導入時の懸念が払拭されました。

小川さん 走行距離やサポート体制などを総合的に判断してメリットが大きかった。ディーゼル時代から付き合いが長いですし、お互いに信頼・協力関係が築かれていることも決め手になりました。
夫馬さん そうですね。私は車輌管理を担当していますが、EVはまったく新しい車なので当方にもノウハウがなく、まるでエンジン車がコンピュータに変わったような感覚です。
外観は一緒ですが中身はまったく違うため、私の知識では到底追いつけませんし、現場も戸惑っていました。
ところがいすゞ自動車の場合は「こちらも勉強させてほしい」というスタンスで考えてくれました。その安心感は大きかったです。
今のところ、目立った故障は一度もありません。ほかのケースでのノウハウも共有しながら迅速に対応してくれるのでとても助かっています。

小川さん 他社と比較してもアフターサービスは抜群です。
現場からも「故障やトラブルがあったときにアフターサービスがしっかりしていることを優先してほしい」とのリクエストがありました。なぜならEVトラックはディーゼルトラックと構造が異なるからです。
いすゞ自動車はコネクテッドサービスでいち早く故障を見える化しているので、先回りして事務所に連絡が来る場合さえあります。
万が一故障してもすぐに修理できる体制がある安心感は何物にも代えがたいですね。
夫馬さん 一方でドライバーには、細かいことでも違和感があったらすぐに報告するように徹底しています。「ディーゼルの感覚で判断しないでほしい」と。
ただしディーゼルを含めてきめ細やかなアフターサービスが整っているのがいすゞ自動車の特徴だと思います。
川原 ありがとうございます。販売会社のいすゞ自動車九州がコネクテッドサービスの「PREISM(プレイズム)」を通じて常に車両の状態を監視していますので、予防整備の観点から、不具合が見つかればすぐにご連絡するフローになっています。
もし故障の予兆を検知しましたら、故障する前に修理することでお客様の稼働停止を最小限に抑えます。
EV普及には、荷主も含めて物流に対する新しい価値を見出すことが大切
小川さん 何とも言えませんが、電気料金が高騰しているので補助がもらえます。補助を考慮すれば電気代のほうが安くなります。「EVisionレビュー」でグラフ化した数値を見ると、台数が増えれば増えるほど効果があるのではないかと期待できます。
光増 お客様には運送を第一に考えてもらいたい。それをEVisionのソリューションによって裏方として支えるのがいすゞ自動車九州の役目です。
我々は販売会社なので単独では難しいことも多いのですが、いすゞ自動車と連携して最良の方法を考えながら進めていくようにしています。

小川さん 2025年には6台を予定しています。
次は千葉県の拠点にも導入する見込みです。
本当は関東、関西地区の拠点にも導入したいのですが、その地区では主にトラックターミナル(自動車ターミナル法に基づく、荷物の受取り渡しや配送を行う施設)を利用しているため充電設備が不足しています。充電設備の確保についてはトラックターミナルやいすゞ自動車と協力しながら展開していかねばなりません。

川原 小川様が指摘されるように、今後はテナント入居や駐車場を借りている場合の対応を考えていく必要があります。
お客様の充電不安解消のために、全国に拡大している公共充電設備の活用を推進しています。現状で800カ所ほどEVトラックが使用できる公共充電スポットがありますが、トラックの充電に活用させてほしいとのお願いをいすゞ自動車から積極的に働きかけているところです。
よりEVトラックが使いやすい環境を整備するために、その点もしっかりとサポートしていきます。
ちなみに、EVトラックで使用できる公共充電スポットについては、いすゞのWebサイトでマップを公開しています。
小川さん カーボンニュートラルへの効果もさることながら、先に触れたようにドライバーのウェルビーイングの観点からもEVトラックは時代のニーズに即しています。
ですから、荷主様も含めて物流に対する新しい価値を見出すことが大切ではないでしょうか。
例えばEV導入による運送コスト上乗せなどのインセンティブがあれば、普及が加速するかもしれません。
いずれにしろ、運送事業者の努力だけでは難しい。
補助金の拡充や充電インフラの整備も含め、ステークホルダーが一丸となって変革を進めることが重要です。
光増 トラックは販売して終了ではなく、納車はむしろスタート地点。
毎日のようにタフに走行して仕事をするのが目的のため、故障はつきものです。
稼働を止めないためにも事前に故障を把握したり、いかに早く故障を直したりすることが鍵を握ります。
いすゞ自動車九州の各施設にはすべて充電設備を設置済みで、修理しながら充電できる利点があります。
今後も久留米運送様と一緒にEV化を推進していきたいです。
川原 我々も、これまで以上にお客様と向き合っていくことが大事になってくると考えています。事実、久留米運送様と二人三脚で進める中で気づいたことがたくさんあります。
また、EVがきっかけになって新規のお客様からお声がけいただくことも増えてきました。これからも学びを全社で共有して、チーム全体で取り組んでいきます。

- 所在地
- 福岡県久留米市東櫛原町353番地
- 設立
- 昭和26年7月13日(大正13年創業)
- 事業内容
- 貨物自動車運送事業(特積み・一般)
貨物利用運送事業(鉄道・航空・内航)
倉庫業 産業廃棄物収集運搬業
保険代理業(損害保険・生命保険)
- 従業員数
- 2,581名




