2004年11月02日
ニュースルーム

第38回東京モーターショー プレスブリーフィング

いすゞ自動車株式会社
代表取締役社長 井田義則

本日はいすゞ自動車のプレスブリーフィングにお集まりいただきまして、ありがとうございます。
この数年を振り返りますと、私たちの業界を取り巻く環境は大変厳しいものであったと言えます。当社もこの間、大変苦しい時期を過ごしてきました。 しかし、2002 年に「新 3ヵ年計画」を策定して、財務内容の改善や企業価値の再構築を目指し、一つ一つ着実に取り組んできました。 ディーゼルエンジン開発への集中、そして商用車を専業とした体制への移行。 全社一丸となった努力により、前期決算では営業利益845 億円という過去最高益を更新するまでになりました。「新 3 ヵ年計画」は大幅に前倒しで達成する見通しです。
私は本日この東京モーターショーという舞台を借りて、皆様に改めてご報告申し上げたいと思います。―― いすゞはようやく今、グローバル競争の先頭集団に戻ってくることができました。
このことは、世界市場で再びメジャープレーヤーとして競争できる体制が整ったことを意味しています。 私は「この今」を成長に向けた大きな転換期と捉えています。 具体的な成長戦略につきましては、今月発表予定の中期経営計画で詳しくお話しさせていただきます。
この場では、まず、トップ集団に戻ってきたいすゞが、世界市場でリーディングカンパニーになるための取り組みについて、お話しさせていただきます。 そして、今回の出展テーマである「プロフェッショナルパートナー」という視点から、当社の数々の技術、サービスを紹介します。 これらを通して、いすゞの「ものづくりの基本姿勢」と、成長に向けた「チャレンジ精神」を感じ取っていただきたいと思います。

いすゞは今、最も強みとするトラック、ディーゼルエンジンの分野で、世界のリーディングカンパニーを目指しています。
今現在でも、世界 23 カ国でトラックのシェアナンバーワンを確保しています。 また、単一国ベースの中型・大型トラック生産台数の世界ランキングでも 6 年ぶりに首位※1 に返り咲きました。 ディーゼルエンジン分野で、世界各国の環境規制に対応できる製品を開発しているのは、いすゞだけです。
当社は、この分野で世界のトップを目指すために、さらなるグローバル展開、特にアジアへの展開を強化していきます。
アジアの中でも、いま最も熱い市場と言われるのがタイです。 いすゞはタイにおいて、商用車のシェアで 21 年間連続ナンバーワン、ピックアップトラックのシェアでは 8年間連続でナンバーワン※2 という地位を維持してきました。 さらに一層のビジネス強化のため、タイ主要 5 社の連結子会社化を進めてきましたが、この秋までにはすべて完了いたしました。 このように、これからのアジア展開では資本面でもマジョリティになり、リスクも取りながら、より大きな実りを得るために積極的に投資していく方針です。
また、中国も今後の市場拡大に不可欠な地域です。 当社は、他の自動車メーカーに先駆け 1985 年に現地で合弁会社を設立しました。 以来生産拠点の拡充を図り累計生産台数は 45 万台に達するなど、中国の小型・中型トラック市場を牽引してきました。 今後は大型車を含めたフルライン製造への拡大を目指していきます。
今回のモーターショーでは、世界に先駆けタイでモデルチェンジした「D-MAX」と、ピックアップトラック用の新しいディーゼルエンジンを披露します。 アジアを皮切りにグローバルに拡販を目指す世界戦略車として、飛躍するいすゞを感じ取っていただければと思います。
世界最大の自動車メーカーであるゼネラルモーターズとのパートナーシップも今後の成長の原動力になると確信しています。 GM はいすゞのシェアホルダーであるとともに、売上の約 2 割を担う最大のカスタマーでもあります。 いすゞが GM のディーゼルエンジンの開発分野で主要な一翼を担い、生産でもいすゞ・GMの合弁会社 2 社の生産累計は 150万基を優に超えています。 北米市場での連携も重要です。 これまで商用車のディストリビューションを共同で行ってきました。 今後は開発分野でもより深い連携を目指していきます。 詳細は中期経営計画でご説明したいと思います。
これらの取り組みによって、いすゞはディーゼルとトラックの専業メーカーとしてナンバーワンへと大きく飛躍していきたいと考えています。

続いて、今回モーターショーで出展している製品・技術を紹介しながら、いすゞのものづくりの姿勢について、お話ししたいと思います。
今回東京モーターショーでご紹介する出展品は、いすゞが開発してきた製品・技術群のほんの一部です。 テーマは「プロフェッショナルパートナー」としました。 ハードの面でもソフトの面でも、ものづくりの原点である利用者の立場に立った開発とサービスを行っている点をご理解いただきたいと考えています。
当社が得意とするディーゼルエンジンは、燃焼効率の高さから経済性と環境性能の両面において優れており、世界的にも注目されています。 ヨーロッパでは、乗用車の 4 割以上がディーゼルエンジン車となっています。 いすゞでは、燃費性能をより高めていくために、小型化、軽量化を図りながら高出力なエンジンを開発することに全力を傾けてきました。 ディーゼルエンジンの開発スタッフ数は世界トップクラスです。 国ごとに異なる環境規制に対応したエンジンを日米欧の世界 3 極で開発しているのはいすゞだけです。ユーロ 4 への対応では、他社に先駆けて 1.7 リッターエンジンを量産し、市場投入しました。
環境技術に関しては、新長期環境規制に対応したエンジンを参考出品しています。 当社がディーゼルエンジンの核としている「I-CAS」技術をベースに開発したものです。 環境対策は長期的な視野が必要です。 そのためにも、当社では後処理技術による問題解決だけでなく、エンジン本体の環境性能を高めていく努力を続けています。 真に実用的な環境対応技術を開発していくことが重要であると考えているのです。
低公害車両では、CNG-MPI、DME、ハイブリッドのそれぞれに対応した「エルフ」を参考出品します。 代替燃料への対応は、どれもスタンダードになる可能性があります。今回のモーターショーでは、いすゞがすでにあらゆる代替燃料に対応できる体制を整えていることを十分にご理解いただけると思います。
続いて、今年の東京モーターショーのテーマでもある「福祉車両」です。 今回は下半身に障害を持つドライバーのために提案するバリアフリーのトラックを参考出品しました。 これは「スムーサーG」といういすゞ独自のトランスミッションを装備し、クラッチ操作を完全に自動化しています。 助手席側には乗り降りの楽な電動リフトシステムが装備されています。
このほか、超低 PM 排出ディーゼル車として 3 つ星、4 つ星を獲得している車両。 経済性、安全性を高める独自のトランスミッション「スムーサーシリーズ」など、実用性に徹底的にこだわった製品・技術にぜひご注目ください。

将来の商用車業界を考えた場合、私はハードを作り、売るだけの時代はすでに終わったと考えています。 24 時間 365 日稼動しているお客様に最大限に応えていくためには、よりよい車両の提供はもちろん、その後のサポートが重要です。 安全を確保する、そして物流を止めない ―― これが商用車メーカーであるいすゞの使命であると考えています。
いすゞがプロフェッショナルパートナーとして進めているソフト面での取り組みから、今回は代表例を 3 つご紹介します。
1 つは、1995 年から実施しているセーフティ/エコノミードライブセミナーです。 これは、運送会社の経営者や運行管理者向けに、安全で省燃費な運転方法について講習を行っています。 地道な活動ではありますが、プロフェッショナルパートナーの原点です。すでに国内では延べ 4,500 社に対して講習を行ってきました。 当社ではこれを商用車メーカーの責務と考え、国内だけでなく世界へ広げていきたいと考えています。
2 つ目は、商用車用テレマティクス「みまもりくんオンラインサービス」です。 ドライバーごとに、燃費向上の具体策やコスト管理などをリアルタイムに提供するもので、広く普及していく可能性を秘めています。 今年 2 月から大型トラック向けに開始し、すでに約 350 台のトラックに採用されています。 今後は中型・小型車へも拡大していく予定です。
3 つ目は、24 時間体制で出張修理に対応する「オハヤクサービス」です。 これは全国250 箇所にあるいすゞの販売会社やサービス工場と連携することで実現しました。 全国どこでトラブルが発生しても、ご連絡をいただければ、近くの販社や工場から迅速にサポートを行います。
これらのサービスを含め、ソフトビジネスの拡充を図ることで、商用車メーカーとしての使命を果たし、他社にはない新たな企業価値の構築を目指していきます。

最後になりますが、いすゞが国内はもとより、世界のリーディングカンパニー、ナンバーワンを目指していくためには、私は「変わらないいすゞ」と「変わるいすゞ」の双方が必要だと確信しています。
「変わらないいすゞ」とは、私たちが大切に守りつづけたクルマづくり、ものづくりの姿勢です。 安全への取り組みはもとより、世界に誇るディーゼルエンジンや実用性に優れた技術は、選択眼の厳しい日本という市場に育てられたものです。 その国内向けビジネスは成長の基盤として、変わらず力を入れていきます。
そして、「変わるいすゞ」は、プロフェッショナルパートナーとして、ハードだけでなくソフトも含めてお客様を徹底的にサポートしていくことです。 そしてグローバルメジャープレーヤーとして、世界市場に果敢にチャレンジしていくことを意味しています。
私たちいすゞは今、グローバル競争の先頭集団に名実ともに戻ってまいりました。 私たちは、新しい技術とサービスでお客様のさらなる信頼にお応えしていくためにも、ものづくりの原点を堅持していく所存です。 「『運ぶ』を支え、環境と未来をひらく」というわれわれのコーポレートステートメントは、その決意を表したものです。 私たちいすゞのさらなる発展と飛躍はその実現にかかっています。
これからのいすゞにぜひご期待ください。

以上

  1. ※12003 年(暦年)の各国・メーカー別トラック生産台数を集計(単一国での生産ベース)。
    中型車以上(車両総重量 6.1 トン以上)のトラック生産台数を各国自工会資料をもとに集計
  2. ※2タイ工業連盟(The Federatin of Thai Industries)自動車部会調べ
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