EV4種類(BEV・HEV・PHEV・FCV)の違い|商用トラックにおけるEVの選び方
昨今、カーボンニュートラル(※)を目指す取り組みが世界中で進められています。
日本も例外ではなく、環境省や経済産業省などは「商用車の電動化」をひとつのテーマに掲げ、商用車等の電動化促進事業を開始しました。大規模な導入補助などを行い、新車販売の小型商用車については2030年までに「20~30%をEV化」、2040年までには「EV車・脱炭素燃料車100%」を目指す方針が示されています。
しかし、EV(Electric Vehicle)の導入に興味があっても、「BEVやFCVなどの違いがわからない」「自社の配送にはどのトラックがいいのか」と迷う場面も多いのではないでしょうか。そのような方に向けて、本記事ではEVの代表的な種類やそれぞれのメリット、選び方の基準をまとめました。配送計画や運行ルートに合った1台を選ぶために、ぜひ参考にしてください。
- ※温室効果ガスの排出量と吸収・削減量を差し引いて、全体としてゼロにすること。

EVの定義
EVとは、電気の力を利用してモーターで走行する自動車の総称です。燃料を燃やしてエンジンを動かすガソリン/ディーゼル車に対し、EVは電力でモーターを回すため、走行時のCO2や排気ガスの排出を抑えられます。
EVは一般的に100%電気で走る車両を指すことが多いですが、自動車業界や行政の定義においては、電気を使って走る車両全般を指すケースがあり、総称として「xEV(エックスイーブイ)」という言葉もよく用いられています。
EVの4つの種類と違いは?

EVにはいくつか種類があり、動力源や仕組みによって主に「BEV」「HEV」「PHEV」「FCV」の4つに分けられます。違いはさまざまですが、まずは動力源・燃料の供給方法で整理すると分かりやすくなります。
ここでは、それぞれの仕組みやメリットを順番に見ていきましょう。
BEV:バッテリー式電気自動車
BEV(Battery Electric Vehicle)は、バッテリーの電気だけでモーターを動かして走る車両です。エンジンが搭載されていないため、走行中にCO2や排気ガスを排出しません。
BEVは環境性能が高いことに加え、「駆動音が小さい」「振動が少ない」「発進時の加速が滑らか」などもメリットです。特に市街地配送のように停止と発進を繰り返す業務では、ドライバーのストレス軽減につながります。
金銭面では、ガソリン/ディーゼル車の燃料代に比べてBEVの電気代は安価になるケースが多く、エンジンオイル交換が不要なため運用費を抑えられるでしょう。
さらに、BEV導入時に国や自治体の補助金を活用することで初期費用も低減できます。運用費も含めた「総保有コスト(TCO)」で考えると、ガソリン/ディーゼル車よりもトータル費用を抑えられる可能性があります。
一方で、BEVの運用では「充電インフラ」と「一充電あたりの走行距離」の確認が欠かせません。日々の走行距離をあらかじめ把握したうえで、営業後に十分な充電時間を確保できる運用計画を立てることが重要です。
HEV:ハイブリッド自動車
HEV(Hybrid Electric Vehicle)は、エンジンとモーターを組み合わせて走る車両です。走行状況に応じて、エンジンとモーターを自動で使い分ける仕組みになっています。外部から充電する必要がなく、従来のガソリン/ディーゼル車に比較的近い感覚で扱える点が特徴です。
HEVにも種類があり、大別すると「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に分けられます。ストロングハイブリッドは、条件次第ではモーターだけでも走行できる方式です。一方で、マイルドハイブリッドはモーターがエンジンを補助し、燃費向上を支える仕組みになっています。
HEVは、外部の充電設備を必要としません。走行中やブレーキをかけた際に充電されるため、燃料の補給だけで走行できます。走行中のCO2排出量をゼロにすることはできませんが、現在のインフラでも比較的導入しやすい車両です。
PHEV:プラグインハイブリッド自動車
PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)は、HEVの仕組みに外部充電機能を加えた車両です。エンジンとモーターの両方が搭載されており、コンセントや充電スタンドからバッテリーに直接充電できます。
日常の近距離ではBEVのように電気だけで走行し、長距離移動では燃料も併用するなどの使い方ができます。そのため、「普段は街乗りで、たまに遠出をする」といったニーズに応えやすい点が特徴です。
一方で、国内の商用トラックやバスのPHEVは車種が少なく、普及には至っていないのが現状です。
FCV:燃料電池自動車
FCV(Fuel Cell Electric Vehicle)は水素を燃料にして発電し、その電気でモーターを動かす車両です。車体には、水素と酸素の化学反応によって電気を作る燃料電池が搭載されています。
FCVは走行中にCO2を排出せず、代わりに化学反応の過程で発生した水のみを生成・排出します。環境性能が高いことに加え、エンジンがないため駆動音が小さいこともメリットです。
また、外部からの充電よりも補給時間を短縮しやすいことから、中長距離や稼動時間の長い用途で強みを発揮しやすいEVでしょう。
商用トラックにおけるEVの選び方

脱炭素に向けて商用トラックをEV化する場合は、BEVまたはFCVが主な選択肢になります。実際に導入車両を選ぶ際は、「自社の運行ルートにどちらが合うか」を検討することが重要です。
ここからは、運行ルートに応じたEVトラックの選び方を紹介します。
近距離配送にはBEV

1日あたりの走行距離が100km以内の近距離配送で、かつ小型車を検討している場合は、基本的にBEVが向いています。特に、走行距離を予測しやすい街中の集配や店舗配送、物流拠点から最終の届け先まで荷物を届けるラストワンマイル配送などは、BEVの強みを活かしやすいでしょう。
トラックの近距離配送では、発進と停止の繰り返しが多いです。その際、従来のディーゼル車では燃費が悪化しやすい傾向にありますが、BEVはモーターで滑らかに発進でき、さらに回生ブレーキも活用できます。回生ブレーキは、減速時のエネルギーを電気として回収する仕組みのため、信号や停車が多い街中でも、エネルギー効率を維持することが可能です。
また、駆動音が静かで振動も少ないBEVは、住宅地や早朝配送に向いていることに加え、ドライバーの負担を抑えやすい特徴があります。環境性能だけでなく、現場の働きやすさにもつながる点は大きなメリットでしょう。
導入時のポイントは、「夜間充電を主軸にできるか」という点です。近距離配送は、決まったエリアを回り、夕方には営業所に戻るルート配送が多く見られます。営業終了後に充電し、翌朝に十分なバッテリー残量で出発できると、配送途中での充電作業を必要としないため、BEVトラックを運用しやすくなります。
いすゞでは2023年に量産小型BEVトラック「ELF EV」を発売しました。狭い道や混雑した街中でもスムーズに走れる扱いやすさに加え、静かで滑らかな走りがドライバーの負担を軽減します。大手コンビニの店舗配送などでも導入されており、営業所での充電を活かした計画的なルート運行に貢献しています。
中長距離輸送にはFCV

1日あたり400~600km程度の中長距離輸送を行う場合は、FCVが主な候補になります。なかでも都市間を結ぶ幹線輸送やバスの運行など、大型車で大量の物資や人を運ぶシーンでは、FCVの強みを活かしやすいでしょう。
FCVで使用する水素はエネルギー密度が高いため、BEVの充電時間と比較すると補給時間を短縮しやすい特徴があります。
さらにFCVの性能を最大限に引き出すためには、水素インフラを含めた運行計画の設計がポイントとなります。自社の走行エリアや運行ルートに合わせて補給拠点を確保・活用することで、より安定的かつ効率的な運用が可能になります。
こうした中長距離輸送の脱炭素化に向けて、いすゞが進めている商用FCV開発の具体例を2つご紹介します。
- ①トヨタ自動車株式会社と次世代FC路線バス「ERGA FCV」を共同開発
2024年度に販売したBEVフルフラット路線バス「ERGA EV」のプラットフォームをベースに、トヨタ製のFCシステムを組み合わせる取り組みを進めています。 - ②トヨタ自動車株式会社と国内初となる量産FC(次世代燃料電池)小型トラックの生産に向けた共同開発
小型トラックであっても、長時間使用・長距離走行を伴うユースケースが存在します。そのようなケースに該当する、冷蔵・冷凍機能のある車両で配送を行うなど、高稼動な使用条件を想定している企業さまに向けて、2027年度の生産開始を目指しています。
自社に最適なEVの導入
これまで説明してきた通り、EVには「BEV・HEV・PHEV・FCV」の4種類があり、商用トラックではBEVまたはFCVが主な選択肢になります。
EV選びで重要なポイントは、実際の運行ルートや積載量、走行時間、拠点設備、将来の環境目標などを踏まえて、総合的に最適な1台を選ぶことです。
この考え方は、いすゞが重視する「マルチパスウェイ」にも通じます。マルチパスウェイとは、ひとつの技術だけに絞るのではなく、用途や地域、エネルギー事情に応じて、複数の選択肢を組み合わせる考え方です。すべてを一気にEV化するのではなく、近距離配送にはBEV、中長距離輸送にはFCV、既存インフラとの相性次第ではさらに別の選択肢を検討することが、現実的な脱炭素化につながるでしょう。
しかし、マルチパスウェイの考え方を理解しても、これまでディーゼルトラックを中心に運用してきた企業では「現場でスムーズに乗りこなせるだろうか」と不安に思われる場合も多いでしょう。そうした不安を解消するためにも、まずは導入候補となる運行ルートを選定し、運行シミュレーションや試乗、実証導入などから検討する方法がおすすめです。
前述のいすゞのBEVトラック「ELF EV」は、EV化に向けた最初の一歩として導入しやすいモデルです。小型ディーゼルトラック「ELF」の使い勝手を踏襲した小型EVトラックであり、近距離配送やルート配送などに適しています。複数のバッテリー容量から選べるため、走行距離に合わせて過不足の少ない仕様を検討できます。
さらに、いすゞはEVトラック導入に伴う課題を解決するために、トータルソリューションプログラム「EVision」を提供しています。導入前に現在の運行ルートを分析する「運行シミュレーション」のご利用に加え、最適な充電器の選定・設置施工、補助金申請までをワンストップでサポートいたします。
自社の配送ルートに最適なEVの種類や、具体的な導入ステップについて知りたい方は、まずはお気軽にご相談ください。




