トラック大図鑑
教えて!「CNG」のこと

ここは、神奈川県湘南台の喫茶店「いすゞCafe」。しぶいマスターが一人で切り盛りしている。
若いころはトラックドライバーとして活躍したらしく、
店にはそのころの写真や思い出の品が飾られている。
今日も地元の若いカップルが、おいしい珈琲に惹かれてやってきたようで・・・。

マスター、アイスコーヒー!

ぼくもアイスコーヒー。マスター、今日、『CNG』というステッカーをつけたトラックを見かけたんだよ

ほお、CNGね・・・

あれって何のことなのかな?

うん。そんなに珍しいことじゃないんだけどね。CNGとは燃料のことなんだ

燃料?

ひと言で言えば、都市ガスで走るトラックさ!

都市ガスって、ぼくんちで使っているあの都市ガス?

そうだよ。だんだん普及が進んでいるんだ。燃料を充てんできる施設も増えているしね

知らなかったなあ

ちょうどいい機会だから説明してあげよう。実はね・・・
都市ガスで走るトラック

まず、燃料としてのガスの話を少し学習しましょう!トラックには軽油などの燃料が使われることが多かったのですが、近ごろ注目されているのが『CNG』という燃料です。
ではCNGとは何でしょうか?Compressed Natural Gas(圧縮天然ガス)です。圧縮天然ガスの成分は、いわゆる「都市ガス」、家庭用のガス燃料と同じものです。
それでは「天然ガス」とは何でしょうか?天然ガスとは、自然な状態で地下に存在する可燃性ガスの一種です。このうち、LPG(液化石油ガス)と言われるものは、石油の仲間に近いもので、一般にはプロパンガスとして知られています。CNG(圧縮天然ガス)は、LPGよりももっと軽いメタンガスを主成分としたものです。
それでは、どうして天然ガス(メタンガス含む)がトラックの燃料として注目されてきたのでしょうか?
ひとつは「資源が豊富なこと」。天然ガスは、現状採掘されているガス田だけでも、50年以上採掘可能だと言われており、石油などよりも資源量が豊富なのです。
もうひとつは「環境にやさしいこと」。天然ガスは石油や石油ガスに比べ炭素含有量が少ないのが特徴です。燃やしても地球温暖化の原因になる二酸化炭素の排出量が少なく、環境にやさしい燃料だと言われています。
そしてもうひとつは「世界中のさまざまな国で産出すること」。たとえば石油の産出地域はかなり中東などに偏っています。政治的な問題や紛争などがおきると、石油の入手が不安定になることが多く、わが国のエネルギー政策に悪い影響を与えてしまいます。実際に、「オイルショック」といって、日本に必要な石油が入らなくなるんじゃないか、という事態に陥って、大変な騒ぎになったことがありますね。
それに比べて天然ガスは世界中のいろんな所から産出しますし、日本でも、千葉県などで事業化されています。また、東シナ海の深海底のメタンハイドレートからの天然ガス抽出が事業化できれば、日本のエネルギー何十年分もの資源が日本の領海内だけでも存在するとされています。つまり、天然ガスの供給と価格は石油に比べ安定していて、天然ガスをエネルギーに使うことは、エネルギー政策の面からも有効だと言われているのです。
実はすでにCNGの利用普及が進んでいる国も多く、世界では、すでに1.100万台以上の自動車がCNGで走っているのです。わが国でも約3万8千台のCNG車が走っている、実現可能な代替エネルギー車だと言えます。また、燃料を充てんするステーションも約340カ所と増えてきています。
あきらくんは、わが国で増えつつある『CNG』車のうち、どれかのトラックを見かけたんでしょうね。



知らなかった!CNGっていろんな可能性を秘めたエネルギーなんだね!

そうなんだよ。あきらくんの家にきている都市ガスとほとんど同じものでトラックが走っているって不思議でしょ?

とくに知らなかったのは、『環境にやさしい』ってことね

うん、メタンガスは燃やしても地球温暖化の原因になる二酸化炭素の排出量が少なくて、ディーゼルエンジンに匹敵するぐらい環境に負荷をかけない性能をもっているんだ。世界のどの国の排ガス基準も、余裕でクリアできると言われている

実力派なんだ

さらに、CNGの燃料タンクや燃料システムについては、二重三重の安全装置がつけられているんだ。

じゃあ安心して使えるね
環境にやさしいCNG

現在、「環境対策」は世界共通の大きな問題といえます。大気汚染に関して、世界のどの国も大変厳しい態度で臨むようになってきており、厳しい排気ガスの排出についての決まりを定めています。しかし、CNG車のエンジンは、世界のどの国の排ガス基準もクリアできる排ガス性能ポテンシャルを持っています。
そんなCNG車の使い勝手についてはどうなのでしょうか?CNGエンジンは、その特性を従来のエンジンに限りなく近づけるよう工夫され、従来の車と変わらぬ使い勝手でドライバーに運転してもらえるよう開発がされています。ですからエンジンの耐久性もディーゼルエンジンのそれと遜色がないのです。燃料コストは、ディーゼル車とほぼ同等のようですから、コストパフォーマンスにすぐれた燃料といえるかも知れません。
そんな優れたエネルギーのCNGですが、現状では1回の充てんでディーゼル車の約半分の走行距離であり、その充てんするステーション自体も、全国に広がりつつありますがまだまだ大都市中心に存在しています。つまり、CNGは遠距離輸送より、インフラの整った都市やその近郊での近距離輸送に適しているものと思われます。環境負荷が小さく、埋蔵量が多い上、いろんな所で採掘できる天然ガスを使ったCNGはもっとこれから注目を浴びるエネルギーと思われます。

うーん。CNGって利用価値が高そうだね!

近距離輸送に向いているってのもわかったわ

とくにね、匂いがほとんどないから、食品の輸送なんかにはいいんだよね

クリーンだから、住宅地を走るのにいいかもね

今日はトラックの話だけじゃなくて、ガスの勉強にもなったなあ

ここにくるとコーヒー代だけでいろんな勉強になって得だわね。ふふふ

うーん。だからうちの店儲からないのかなあ
こうして湘南台の喫茶店『いすゞCafe』では、マスターとカップルのよもやま話はつきることがないようである。