関西電力株式会社 美浜発電所

従業員送迎用バスでゼロカーボン推進への姿勢をPR
地域と共生する発電所のEV活用

  • #エルガEV

関西電力株式会社美浜発電所は、グループで掲げる「ゼロカーボンビジョン2050」の取り組みの一環として、従業員送迎用バスに「エルガEV」を導入しました。ひと目でEVだとわかるオリジナルラッピングの車両は、脱炭素化を推進する同社の姿勢を社会へアピールする上で、大きなPR効果を発揮しています。本記事では、車両管理を担う同発電所総務課総務係の川渕蓮さんと、実際に運転を担当する株式会社かんでんエルオートシステムの森北宏和さんに、導入背景や運用状況についてお話を伺いました。
※掲載内容は2026年3月の取材に基づきます。

グループが掲げる「ゼロカーボン」実現の第一歩に

――エルガEV導入の背景を教えてください。

川渕さん 関西電力グループでは、発電事業をはじめとした事業活動に伴うCO2排出を2050年までに全体としてゼロとする「ゼロカーボンビジョン2050」を掲げています。ビジョンのなかで、エネルギー利用者サイドにおけるeモビリティの推進が示されており、今回、そうした方針に基づいて従業員送迎用バスとしてEV車両を導入することになった、というのが背景です。

また、美浜発電所が位置する福井県美浜町では、エネルギーへの取り組みを通したまちづくりのあり方・指針を定めた「美浜町エネルギービジョン」を策定しており、その取り組みの一環としてEVの普及活動も行なっています。美浜町から当社に対して、ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニーとしての先進的なアプローチに期待が寄せられていたことも、きっかけの一つとなっています。

関西電力美浜発電所 総務課総務係 川渕蓮さん

日中のこまめな充電で満充電を維持

――現在の運用状況を教えてください。

川渕さん 美浜発電所〜美浜駅間を走る従業員送迎用バスとして運用しています。2025年9月末に納車され、データ収集やドライバーの習熟を図る目的で設けた1カ月程度の試運転期間を経たのち、10月頃から実運行を開始しています。

他のバスの運行状況との兼ね合いもありますが、11時、12時半、15時の3運行をベースに、夕方の定時便などを組み合わせたダイヤを組んでいます。駅まで往復約30kmで、1日あたりの走行距離は合間に充電をはさみながら平均150〜200km。他車両の車検時やメンテナンス時など、稼動が多いときはトータルで最大300kmほど走ることもあります。

送迎バスは駅までの直行便ではなく、運行ルート上の各バス停に停車して従業員を乗せていく乗合スタイルです。敦賀駅と美浜駅の2方面にバスを出していますが、エルガEVは座席数が最大23席のため、比較的乗車人数の少ないルートにて運行しています。

美浜駅で従業員を乗せるエルガEV

美浜発電所では、日中の運行の合間に、約2時間ずつ合計4時間程度の充電時間を確保しています。連続稼動は最大2往復までとし、バッテリー残量が50〜60%になったらこまめに充電するようにしているため、2時間ほどの充電時間でも100%近くまで回復します。エアコンの利用状況によってもバッテリーの消費量に変動があるなど、ダイヤ管理の難しさはありますが、バッテリー残量の不安なく運行できることを優先し、体制を整えています。

美浜発電所構内の車庫に設置された急速充電器は、塩害対策のため建屋で囲われている
――導入にあたり、課題や懸念事項などはありましたか。

川渕さん 回生ブレーキのかかり具合といった運転時の操作性や、バッテリーを屋根に積んでいることによる重心の高さ、車高の低さなどに不安がありました。発電所は海沿いの立地のため風が強く、地域柄、冬場は積雪や路面凍結が多くなります。重心が高いせいで横風に流されないか、車高が低いことで雪が引っかからないか。そういった課題感は、導入前から認識していました。

なんといっても初めてのEVバス導入なので、いろいろと心配になってしまうのはごく自然なことだと思います。ですが、適切な対策によって不安は解消されるのではないでしょうか。実際に、当発電所でも、季節や天候の状況に応じて柔軟な運用管理を行うことで、安定した運行を維持できています。

冬場は路面凍結の危険性もあり。横風にも負けずに走行するエルガEV

国内メーカーならではの盤石なアフターフォローが決め手

――エルガEV採用の決め手を教えてください。

川渕さん 初めてのEVバス導入にあたり、先ほど申し上げた不安を解消する意味でも、今後のメンテナンスやアフターフォローにおける円滑なやり取りが可能かどうかという点を最も重視しました。海外メーカーはどうしても、情報共有におけるタイムラグなどの不安があるため、迅速な対応が期待できる国産車に絞って検討したのです。

その点、いすゞさんは昔からお付き合いがあるので、コミュニケーションも取りやすく、導入後も安心して運用できると考えたことが最大の決め手です。

納車直前にエルガEVの初期不良が判明した際も、即座に改善した上で納車していただきました。こうした早急な対応を目の当たりにし、いすゞさんを選んで本当に良かったと改めて実感しています。

いすゞへの信頼を語る川渕さん

段差のないフルフラット構造で乗り降りも清掃もスムーズ

――従業員の皆さんからの反応はありましたか。

川渕さん 「エンジン音がなく、静かで乗り心地がいい」という声がある一方で、「静かすぎて、走行音や外部の音が逆に目立って聞こえる」といった率直な感想も寄せられています。ただ、私が把握している限りでは、好評の声のほうが多いように思います。

特に評判が良いのは、車内最前部から最後部座席まで段差のないフルフラットフロアです。発電所の周辺地域は海が近く天候が急変しやすいため、雨や雪の日には急いで乗車される方も少なくありません。しかし、エルガEVは入口の階段や車内の段差がないため、つまずくリスクが低く、安全面でとても安心感があります。従来のバスでは乗降口の階段で渋滞が発生しがちですが、エルガEVなら奥まで流れるようにスムーズに移動できることも魅力です。

乗客の乗り降りのストレスが大幅に軽減されただけでなく、乗車にかかる時間も短縮されており、フルフラットの恩恵を大いに受けていますね。

フルフラットで乗降時の混雑も緩和
――ドライバーの皆さんは、実際に運転されてみていかがでしょうか。

森北さん 私が実際に運転してみて一番驚いたのは、加速のスムーズさです。ディーゼル車のような重さがなく、アクセルワークがものすごく滑らかでストレスがないので、まるで乗用車を運転しているような気持ちになります。

従業員送迎用バスのドライバーを務めるかんでんエルオートシステム 森北宏和さん

懸念していた重心の高さについては、やはり屋根にバッテリーを積んでいる分、海岸沿いのカーブが多い道などでは外に流される感覚があります。ただ、運転回数を重ねたことで、順応できてきたのではないかと思っています。担当ドライバーも全員、運転にはすっかり慣れたと言っていますね。

エンジン音や排気音がなく非常に静かなので、個人的にはとても快適な運転環境だと感じています。また、フルフラットで乗降口が広いことは、乗車する従業員にとっての利便性はもちろん、私たちドライバーにとっても、モップ掛けなどの日常的な車内清掃が格段にしやすいというメリットがありました。

清掃もしやすいフルフラットのフロア

オリジナルのフルラッピングでEV導入をアピール

――エルガEV導入によって得られた効果を教えてください。

川渕さん スムーズな走行性やフルフラット構造などによる乗客の安全性強化およびドライバーの負担軽減といった、実運行におけるメリットももちろん大きいのですが、最も効果を実感しているのは、企業イメージの大幅な向上です。

昨今、社会全体でカーボンニュートラルの実現を推進していますが、一企業の取り組みは外から見えづらく、プレスリリースなどで発信しても「実際には何をやっているのか」が、なかなか伝わらない部分があります。しかし、走行中にCO2を排出しないEVバスを導入し街中を走らせることで、当社がゼロカーボンに向けて具体的に動いているということが視覚的に明確になり、理解を得られやすくなったのです。

今回、EVだと一目でわかってもらえるように、当社オリジナルのフルラッピングを施しました。その甲斐もあり、周囲からの評判はとても良く、「ゼロカーボンに向けてがんばっている会社だ」という印象を持っていただけていると感じます。

バスの背面には、美浜発電所と美浜原子力PRセンター、そして両施設を結ぶ連絡橋の丹生大橋が描かれている

また、冒頭に申し上げた美浜町のゼロカーボン施策にも貢献しており、自治体からの高い評価を受けています。企業と地域が密接に関わりながら脱炭素化を促進する、良いモデルケースになったのではないでしょうか。

EV拡大によるゼロカーボンビジョン達成を目指して

――今後、EV導入拡大に向けて、要望する支援や制度があれば教えてください。

川渕さん 充電設備の設置費用が課題です。当発電所では特注の変圧器や埋設配管などの工事が必要だったため、高額な設備投資が必要であり、特有事情がある事業者への支援の拡充があれば、より導入しやすくなるはずです。

EV拡大への課題について意見を交わす川渕さんと森北さん
――いすゞ自動車に期待することはなんでしょうか。

川渕さん 当発電所の従業員送迎用バスでは、安全性と快適性の観点から、基本的にバス内での立席を推奨していません。そのため、現在のエルガEVの座席数には少し物足りなさを感じています。

エルガEVは、高い静粛性やフルフラット構造といった機能面で非常に魅力的であるとともに、当社のブランディング戦略にも大きく貢献してくれています。だからこそ、ぜひ、座席数を増やした大型バスの展開を期待しています。航続距離もさらに改善されれば言うことなしですね。

今回のエルガEV導入は、関西電力グループのゼロカーボン推進への姿勢を示す絶好の機会となりました。美浜発電所はグループのなかでも歴史ある施設ですが、だからこそ率先して新しいことにチャレンジし、ゼロカーボンビジョン達成に向けた動きを牽引していく使命があると考えています。

まずは当発電所でEVバスの運用データやノウハウをしっかりと蓄積し、将来的には他拠点へのEVバス展開も視野に入れながら、脱炭素社会の実現に向けた取り組みをより一層加速させていきたいです。

穏やかな丹生湾に臨む美浜発電所
関西電力株式会社 美浜発電所
所在地
福井県三方郡美浜町丹生66号川坂山5番地3
設立
1970年11月
事業内容
電気事業 等
URL
https://www.kepco.co.jp/