阪急バス株式会社

満を持して実現、心強い国産の“安心と信頼”
〜関西都市圏の大型路線EVバス運行〜

  • #エルガEV

大阪府、京都府、兵庫県の2府1県を中心に路線バスを展開する阪急バス。「ひととまちに優しい阪急バス」を掲げ、「地域の足」として広範なバスネットワークを築いています。同社では2025年の「大阪・関西万博」を機にいすゞ自動車の大型路線EVバス「エルガEV」を導入。早くから海外製EVバスを運行してきたものの、“安心と信頼”を担保する国産EVバスの登場を待ち望んでいたそうです。
導入の背景や効果について、取締役社長 三田和司さん、営業企画部 車両課長 兼 新モビリティ推進部 課長 瀧川文章さんに話を伺いました。
※掲載内容は2025年12月の取材に基づきます。

満を持して導入した国産EVバス、安心感と信頼性は必須の要素

――エルガEV導入のきっかけを教えてください。

三田さん 当社では以前から環境面の取り組みを重ねてきました。ドライバーの走り方を工夫するエコドライブを継続し、無駄な加減速を抑えてCO2排出を減らすことを意識しています。
またハイブリッドバスの導入に加え、使用済みの廃食油を再利用したバイオディーゼル燃料100%のバスも走らせてきました。

こうした積み重ねのうえで、現在は阪急阪神ホールディングスグループとして、2030年に2013年比でCO2排出量を46%削減する目標を掲げています。

阪急バス 取締役社長 三田和司さん

グループ内のCO2排出の大きな要因は自動車事業で、中でもバスの比率が高い。
そこで削減策として2021年からEVバスの試験導入に踏み切りました。EVバスは走行時にCO2を排出しないので、環境負荷低減の効果は大きい。そうした点からもEVバスを重要な選択肢と位置づけており、今後も環境施策の柱の1つとして、積極的に導入を進めていきたいと考えています。

現在導入しているEVバスは18両で、そのうち2両が今回いすゞから購入した車両です。それ以外は、日本メーカーが当時まだ対応していなかったため、海外製EVバスを導入しています。

瀧川さん 当初から国産EVバスには期待していましたが、海外製が先行して日本において販売を開始しました。ただ、やはり国産EVバスは以前から待ち望んでいた存在で、今回ようやく形になりました。

阪急バスに導入されているエルガEV
――導入にあたっての課題・懸念事項についてお話しください。

瀧川さん 海外製車両についても、当時はカタログ値をもとに「これくらい走れるだろう」という想定で導入しました。実際に使ってみると、十分に満足できるレベルではなかったという印象があります。

そうした経験を踏まえてエルガEV導入を検討しましたが、こちらも国産としては初めてのため、実績がない点は気になりました。
カタログ値はありますが、実運用でどうなのか、既存のEV車両の実績と比べてどうなのかという部分については不安がなかったわけではありません。

阪急バス 営業企画部 車両課長 兼 新モビリティ推進部 課長 瀧川文章さん
――エルガEVを選んだ決め手を教えてください。

三田さん 資産として長く使う車両であること、そしていすゞとこれまで築いてきた関係性を考えると、アフターフォロー体制も含めて安心できると確信していました。
何よりディーゼル車の時代からトラブル対応や日常のサポートを含めて丁寧に対応いただいた実績があります。
国産である点も大きく、一定の性能水準を満たすことに加えて、安心感と信頼性は必須の要素と判断して決定に至りました。

瀧川さん 最も大事なのは安全ですし、路線バスは定時・定路線で走る公共交通ですから、車両の信頼性は欠かせません。
理想は「まず壊れないこと」。その意味でも、品質の高さや、何かあったときのサポート体制の安心感は不可欠です。

ディーゼル車については他メーカーも含めてすべて国産車を導入してきましたが、その中で培われてきたいすゞのアフターサービスの充実は満足しています。
EVバスにおいてもその点は同じで、最終的には国産ならではの信頼性が判断の大きな軸になったと思います。

乗客もドライバーも満足、静粛性・快適性、パワフルな登坂性能が魅力

――導入から現在までの運用状況を教えてください。

三田さん 通常運行に先駆け、まずはJRゆめ咲線の桜島駅から大阪・関西万博会場のシャトルバスで運行を開始しました。導入してみて感じたのは、加速性能が非常に良く、制動力も高いという点です。
万が一を想定していすゞが手厚い異常時対応体制を構築してくださったこともあり、終始安心して運行に臨むことができ、運行中のトラブルは一度もありませんでした。

瀧川さん 万博終了後は、路線バス2路線での運行を開始しました。EV車両を配置している茨木営業所周辺を中心に、比較的走行距離が短い路線で運用しています。
万博での運行実績データを踏まえ、運行条件のハードルが高すぎない路線から使い始めてデータや運行の感触を確認している段階です。

大阪市は大阪府と共同して万博開催を契機とした公共バスのゼロエミッション化に集中的に取り組んでいる
――導入後に感じたメリットを教えてください。

瀧川さん 営業所周辺は駅から郊外の団地や住宅地へ向かう路線が多く、坂道が目立ちます。そうした環境でもエルガEVは登坂性能に優れているため、現在はあえて坂の多い路線に割り当てています。
本当に登坂路での力強さは印象的で、いすゞの車両ならではの特長が際立っていると感じました。かつて馬力のあるいすゞのディーゼル車を使っていた頃を思い出すような感覚で、坂道でもしっかりとした走りを見せてくれています。

――これまでの評価についてはいかがでしょうか。

瀧川さん 評価が高いのは、静粛性と快適性です。振動が少なく、変速ショックもないのでとても乗り心地が良い。これはお客様だけでなく、ドライバーからも同じような声が上がっています。
加えて、いすゞの車両は車内がフルフラットフロアでノンステップ仕様になっており、使い勝手や快適性の面で好評です。

総合的に見て、乗る側にとっても、運転する側にとっても評価の高い車両だと感じています。

登坂性能に優れるエルガEV

またモーター駆動ということもあり、発進時のトルクが強く、加速性能が高い点が特長です。その点も運転する側からはかなり好評で、運転のしやすさという点でもプラスになっています。

現在、いすゞのEVバス2両は日々ローテーションで運用しており、毎日違うドライバーが運転しています。それでも、EVバスを運転するドライバーから「違和感がある」という声はほとんどありません。
運転席のレイアウトやパネル、スイッチ類の配置がディーゼル車とほぼ同じで、普段の感覚のまま運転できるようになっている点は大きいと思います。
いすゞのコンセプト通り、EVでありながら現場に自然に溶け込む設計になっていて、そのおかげでスムーズに運用できています。

ものづくりにこだわったエルガEVが安全を運ぶ

――いすゞのサポート体制はいかがですか。

瀧川さん ディーゼル車とは違うEVならではの特性については、きちんと理解しておく必要があります。そこで、本社の教習担当者や営業所の責任者、指導運転士に対して、いすゞからEVの特性や注意点について指導いただき、その内容を現場の一般ドライバーに展開しました。
段階的に教育を進めることで、現場への浸透もスムーズに進んだと感じています。

整備はグループ会社の阪急阪神エムテックに委託していますが、いすゞから委託先の工場責任者や担当者に対して教えていただきました。
EVバスは内燃機関がない分、整備に関してはこれまでと大きな違いがあり、加えて、高電圧を扱うことになります。
ここは一歩間違えると大きな事故につながる恐れもあるため、整備や取り扱いに関しては重点的に注意点を共有しています。

三田さん 一方で走行距離あたりの電力消費については、CO2削減の観点だけでなく、エネルギーを効率的に使う意味でも改善の余地があります。ここがもう一段良くなれば、運用面でも非常にありがたいというのが正直な感想です。先日お話を伺った際には、ソフトウェア面も含めた改善を検討されているとのことでした。
そうした取り組みが進むことで、今後の性能向上や運用面での改善につながると期待していますし、アフターフォローの観点でも心強いです。

今後は現場の声にも耳を傾けていただきながら、お互いに改善を重ねていくことで、より完成度の高いEVバスになるのではないかと期待しています。

茨木営業所に設置されている急速充電器
――今後、EVバスのさらなる導入計画はありますか。

三田さん 今後の導入については、バスそのものの性能を見極めながら判断していきます。CO2排出削減やSDGsといった環境に配慮した取り組みとして見た場合、現時点ではEVバスが最も確実性の高い選択肢だと考えています。そうした理由からEVバスの導入は継続して進めていくことになりますが、経済合理性も踏まえながら、今後の普及を考えていく必要があると思っています。

――最後に、エルガEVの強みを改めて教えていただけますか。

三田さん 実は先日、ジェイ・バス宇都宮工場を見学させていただきました。実際の製造現場を見ることで、車両づくりの考え方や体制をより深く理解したいとの思いがあったからです。

ジェイ・バス宇都宮工場のエルガEV製造ライン

見学してみて、国産メーカーのものづくりの水準が高いことを実感しました。要所要所で熟練の技術が求められる工程があり、その“手づくり”が品質につながっているのは事実。
私は阪急電鉄に長く勤務しましたが、鉄道も路線バスも人の命を預かる乗り物ですから、確かな安全性は絶対に譲れない。そう考えると、信頼性の面で海外製車両が簡単に追いつけるものではないと感じました。

長年の関係性の中で培われた対応力や柔軟性こそが、国産EVバスの強みなのではないでしょうか。

EVバスは確実に車両性能が向上し、加速性能が良くなるだけでなく、ブレーキ時に発電する回生機能によって1kWh当たりの走行距離も伸びていくはずです。そうなれば環境負荷の低減だけでなく、エネルギー使用量そのものも抑えられます。

いすゞ自動車には、これまで培ってこられた車両技術を活かしながら、事業者が求める安全性を確保しつつ、環境にも優しいバスを製造していただけることを強く希望します。
これからも、ぜひ一緒に取り組んでいきたいと思います。

阪急バス株式会社
所在地
大阪府豊中市岡上の町1丁目1番16号
設立
1927年7月24日
事業内容
自動車運送事業 ほか
従業員数
1,764名
URL
https://www.hankyubus.co.jp/