トラック大図鑑
教えて!「イモビライザー」のこと

ここは、神奈川県湘南台の喫茶店「いすゞCafe」。しぶいマスターが一人で切り盛りしている。
若いころはトラックドライバーとして活躍したらしく、
店にはそのころの写真や思い出の品が飾られている。
今日も地元の若いカップルが、おいしい珈琲に惹かれてやってきたようで・・・。

マスター、ブレンドちょうだい

あたしも

了解。すぐいれるよ。・・・なにか疲れてない?あきらくん

うん。仲良しの友だちの車が誰かにいたずらされちゃったんだ

そうなの!それは気の毒だね

すごいがっかりしちゃってるのよ。大事にしていた車なのにね

ぼくらも防犯対策は考えなくちゃだめだね

防犯対策といっても、どうすればいいのかしら

うん。今日は車のための防犯対策システムの話をしようか
トラックの防犯対策

トラックも自家用車もキーを回してエンジンをかけます。いままでは、複製されたキーなどを差し込めばエンジンがかかってしまう、つまり盗まれたりする危険があったのですね。そこで、こうしたことを防止するために「イモビライザー」というシステムが導入され始めています。これは「個別のIDコードをもったICチップを内蔵したキー」と「それを読み取り、正しいキーかどうか判断する車を動かすためのコンピュータ」によるシステムです。キーのICチップに埋め込まれたIDコードを、車に搭載したコンピュータが読み取って間違いないと判断した場合はじめてエンジンがかかるのです。つまり、キーを複製して同じ形の鍵をつくったとしても、中に入っているICチップは複製できないので、コンピュータが認識せずエンジンはかからないのです。
また、このキーには電池は必要ありません。車両からの電波を受けて、わずかな電力を創り出して車のコンピュータと通信してくれるのです。ですから半永久的に使用できます。いま、電車の改札口で「ピッ」とタッチして乗車するICカードが普及していますが、その仕組みをイメージしてください。


キーと車のコンピュータが通信しあっているのね!すごい

電波で通信しているんだけれど、さらにその通信情報には暗号技術が使われていて、電波をつかまえてIDコードを盗み出したりすることはできなくなっているんだね

エンジンがかからないなら盗まれないよね

そうだね。そんなすぐれた防犯の機能を持ったイモビライザーは、自家用車からトラックまで広く導入がすすみはじめているんだよ

言われてみれば、そういう防犯システムも売られているという話を聞いたことがあるなあ

市販のイモビライザーも確かにあるんだけどね。イモビライザーが自動車の開発段階で同時につくられていることに大きな意味があるんだ。それはね・・・
車の開発とともに
イモビライザーをつくる理由
マスターが言うように、自動車の開発とともにイモビライザーをつくり上げていくことに大きな意味があるのです。
ひとつは、より強力な防犯システムをつくるためです。自動車のエンジンをコントロールするコンピュータ自体が開発される段階で、イモビライザーも同時に開発されれば、より解除されにくいシステムができるのです。もうひとつは、自動車の使われ方とドライバーのことを考えた防犯システムでなければいけないということです。イモビライザーを導入するときに大事なことは、ドライバーがいつもと同じ感触で使えるようにすることです。とくに「はたらく車」であるトラックは、エンジンをかける回数が多く、そのたびに違和感があるとドライバーが不都合を感じます。イモビライザーを導入しても、スムーズに、いつもと変わらない感触でエンジンがかかるよう何万回も始動のテストが重ねられています。

キーの形も、ICチップを入れることにより形が変わったら、ドライバーにとって違和感があるかも知れません。なので、普通のキーと変わりないデザインに収まるよう工夫されているのです。
トラックは最新の防犯技術を活かすとともに、ドライバーに安定的に使ってもらえるよう日夜進化しています。中にはイモビライザーが標準装備されたトラックも出てきています。

トラックの防犯システムって工夫されているんだね!

電波を読み取り、コンピュータが承認してからエンジンをかける・・・なんていったら大変そうだけど一瞬にして行われるんだね

それが違和感なく、ごく普通に行われるというのがすごいわ

そうだね。実際はすごい手順を踏んでいるんだけど、いままでと変わらない操作感がもとめられるわけだ

ところでマスター。今日のブレンドの味ちょっといつもと違わない?

えっ・・・。わかっちゃった?いつもと豆を変えて、入れる手順も変えたんだよ。ふたりにはごまかせないなあ

なんか味に微妙な違いがあったからね

イモビライザーみたいにスムーズにやってくれなくっちゃ

とほほ
こうして湘南台の喫茶店『いすゞCafe』では、マスターとカップルのよもやま話はつきることがないようである。