バス大図鑑

教えて!「観光バス」のこと

大森の商店街の小さなレストラン「キッチンいすゞ」。
マスターは路線バスの運転手でしたが引退して、実家の洋食店を継ぎ、
カウンター越しに、お客さんとの会話を楽しみながら、おいしいランチを提供しています。
常連のお客さんにバスの話が大好きな親子がいて、今日もやってきたようです。

お父さん

マスター、この頃商店街には外国からのお客さん多いねえ!

マスター

いろんな国のお客様が増えてありがたいですねえ

ムスコくん

大きな観光バスを何台も見かけたよ

お父さん

お前はバスばっかり気になるんだな

マスター

ムスコくんがバス好きでうれしいですねえ

ムスコくん

それでマスター。観光バスって、町を走っている路線バスと何が違うの?

マスター

ちょっと違うんだよ。実はムスコくんが知らない秘密があるんだよ

お父さん
ムスコくん

なになに?

マスター

実は……

観光バス路線バス 違うの?

まずは観光バスの種類を紹介しましょう。

1一般車 一般的な観光バスです。

大型一般車
旅客数41~53名
中型一般車
旅客数27~40名
小型一般車
旅客数22~29名

2ハイデッカー 高い車高で眺めを楽しめます。

ダブルデッカー
旅客数49~72名 2階建バス。乗客はすばらしい眺望を楽しめ、余裕の客席数を確保できる。
スーパーハイデッカー
旅客数45~55名 中2階バス。乗客は高い視点からの眺望と開放的な景観を楽しめる。
大型ハイデッカー
旅客数45~51名 大型一般車より高い車高でデラックスな客席。フロアが高く床下に大きな荷物室を設けることができる。
中型ハイデッカー
旅客数27~35名 一般車より高い車高でデラックスな客席。
小型ハイデッカー
旅客数25~28名 一般車より高い車高でデラックスな客席。

参考 公益社団法人 日本バス協会より

スーパーハイデッカー

「観光バス」と「路線バス」。一番の違いは何でしょうか?まず、バスに乗るお客さんの目的が違いますね。町を走る路線バスは、主に生活や仕事で、用事があり移動したい時に使うもの。とくに近ごろはすべての人が乗り降りしやすいように、客席の「床を低くしたタイプ」が主流です。しかし観光バスは、日常を離れ、旅行を楽しみたい時に乗るものですね。なので、「きれいな景色を見たい」というお客さんの要望を満たさなくてはいけません。そのため、観光バスの床は、路線バスに比べて「床を高くしたタイプ」が多くなっています。このタイプのバスには、ハイデッカー、スーパーハイデッカー、ダブルデッカーという種類があります。

観光バスのお客様の目的は「旅行」です。キャリーバッグやスーツケースなど大きな荷物を持っていますので、それをしまっておけるスペースが必要になります。バスの座席においては邪魔ですからね。そこで、床を高くしたバスの下部には、「大型の荷物室(トランクルーム)」があります。そこにしまっておくのですが、ちょっと秘密があって、ここに運転手さんの「仮眠スペース」を設けていることがあります。観光バスは、長時間・長距離を走ることが多いです。そうした場合運転手さんが交代で運転することも必要になりますね。交代した運転手さんの仮眠スペースが床下トランクルームの中に設置されているのです。

観光バスの床下にある運転手さんの仮眠室

観光バスと路線バスの大きな違い、もうひとつは乗っている時間と距離です。路線バスの乗客はひんぱんに乗り降りしますよね? ところが、観光バスの乗客は長い時間乗っているだけでなく、目的地に着いたら、現地で観光したり食事したりしてまたバスに戻って来ます。ですので、とくに暑い時期は、走っているときも停まっているときも、エアコンをかけておく必要があります。そのため、バスを走らせるためのエンジンとは別に「エアコン用のエンジン」を備えている観光バスもあるのですよ。

長時間・長距離乗っている乗客のためにもうひとつ。後部に「トイレ」を備えている観光バスもあります。近年、広々としたデラックスなトイレが登場しています。観光バスのトイレだということを忘れてしまいそうなものもあり、長時間・長距離の移動でも安心ですね。

ひとつ雑学を。以前は観光バスに「補助席」というものがついていました。これは日本独特のもので海外の観光バスには見られないものでした。しかし、法規により全席シートベルト着用が必須となってからは、だんだん採用する観光バスが減ってきたようです。

特別化粧室仕様の後部トイレ
お父さん

何と床下に運転手さんの仮眠室があるとは!

マスター

謎の部屋があるわけですな(笑)

ムスコくん

うわーお父さん!すぐに観光バスに乗りたいよー

マスター

ははは。さらにまだ観光バスと路線バスの違いがあるんだよ。それは座席シート。長時間・長距離乗っているお客さんがくつろげるように……

ムスコくん

そうか!デラックスなシートなんだね

マスター

うん。路線バスとはだいぶ違うね。

お父さん

うーん。そうすると当然お値段も変わるんだろうねえ

マスター

車種などによっていろいろあるのでいちがいにはいえませんが、2.5倍ぐらいのお値段になることもあるそうです

ムスコくん

乗りたい乗りたいー

マスター

ははは。ところで、先ほども仮眠スペースのことに触れましたが、観光バスはお客さんだけでなく、運転手さんのこともいろいろ考えられているのですよ

観光バスココすごい

路線バスと違い、長時間・長距離走行することが多い観光バスでは、運転手さんが安全に運転できるようないろんな工夫がされています。今、バスにはコンピューターが搭載されています。つまり、「頭脳」が載っていると思ってください。

衝突被害軽減ブレーキシステム

観光バスにレーダーとカメラを搭載して、その組み合わせにより、前方の車や歩行者を検知します。そうしたら「バスの頭脳部分」がすばやく状況を分析し、危険だと思ったら、この「衝突被害軽減ブレーキシステム」を作動させて、衝突の被害を軽くさせるようにします。万一の時のため、このシステムを導入する観光バスが増えています。

車間制御クルーズ(オートクルーズ)

これは前に走る車との距離をレーダーで計り、安全な距離を自動的に保ってくれる仕組みです。観光バスは高速道路を走ることが多いのですが、運転手さんは、安全な車間距離を保つために、高速走行のあいだはずっと注意していなくてはなりません。そこで、「車間制御クルーズ」を搭載して、少しでも運転手さんの負担を減らし、安全な運行を可能にしようとするものなのです。

ドライバーカメラの例。
モニターカメラでドライバーの運転状態を確認します。
ドライバーモニター

運転手さんの状態をカメラで見守る仕組みがあります。これも、長時間・長距離を走る観光バスへの導入が進んでいます。これは、運転手さんの顔の向きやまぶたの位置などを検知して、「ひょっとして居眠りしたくなったんじゃないか?」という時に警告してくれる仕組みです。さらに、バスがふらついていないか、車線を越えていないかなども検出して、警告を発してくれる仕組みなどがあります。

ムスコくん

うーん。運転手さんのために観光バスにはいろんな工夫がされているんだね!

マスター

もちろんすべての観光バスにこれらの仕組みが搭載されているわけではないですが、こうした装置が活用されれば少しでも、事故を減らしたり、万一の時も被害を軽くしたりできるのではないでしょうかねえ

ムスコくん

お父さんもよくお酒を飲んでふらついて帰ってくるからこういうの必要でしょ

お父さん

うむ。あと会社で居眠りをしてしまうからな……。こらっ

マスター

ははは。とにかく、今の観光バスは大きく進化しているのですよ

トラック大図鑑の感想や、知りたい部品のリクエストを募集しています。