「はこぶ」の世界をささえる人々


人物紹介
- 仁平 歩さん株式会社ネクスコ・メンテナンス新潟
湯沢(ゆざわ)事業所 工務課
- 堤 俊輔さん株式会社ネクスコ・メンテナンス新潟
湯沢事業所 保全第一課
- 黒崎 光星さん株式会社ネクスコ・メンテナンス新潟
湯沢事業所 保全第二課
株式会社ネクスコ・メンテナンス新潟はどんな会社なの?
仁平さん
株式会社ネクスコ・メンテナンス新潟は、関東以北から北海道までの東日本エリアの高速道路を管轄(かんかつ)するNEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)のグループ会社の一つで、新潟県と、群馬県・富山県・長野県の一部の高速道路設備の維持や修繕(しゅうぜん)を担当しています。わたしたちが所属している湯沢事業所はそのなかでも関越自動車道の水上(みなかみ)インターチェンジ(以下、「IC」と表記)から小千谷(おぢや)IC までの区間を担当(たんとう)しています。

堤さん
担当区間には、道路トンネルとして日本で2番目に長い「関越(かんえつ)トンネル」があります。水上IC と湯沢IC の間にあって、上りも下りも全長は約11 キロメートルもあるんですよ。
皆さんは会社の中でそれぞれどんな仕事をしているの?
黒崎さん
わたしは高速道路の安全のための設備の管理を担当しています。2024年11月、関越自動車道の小出(こいで)IC が魚沼(うおぬま)IC と名前を変えたのですが、それにともなう標識看板(ひょうしきかんばん)の変更(へんこう)作業もわたしが担当しました。
名前が変わると決まってから半年以上の時間をかけて、現地(げんち)の調査(ちょうさ)をしたり作業の計画を立てたりという準備(じゅんび)を積み重ねて、スムーズに、そして安全に作業を終えることができました。ほかにも事故(じこ)や故障(こしょう)などが起きて車の外に出る人が転落したりしないように安全のためのさくを設置したり、古くなった標識を新しくしたりしています。
堤さん
わたしは事故処理(しょり)が担当です。交通事故が起きた時にいち早く現場にかけつけて、さらにほかの事故や渋滞(じゅうたい)などが起こらないようにできるだけ早く事故処理を行います。また事故によって高速道路の設備がこわれたりした場合は、その復旧(ふっきゅう)工事も担当します。現場の状況(じょうきょう)によって必要な対応(たいおう)は何かを冷静に、そしてすばやく判断(はんだん)できるように心がけています。

仁平さん
わたしはふだん、高速道路の工事に必要なお金の管理や、申請(しんせい)書類の確認などの仕事を担当しています。でも災害(さいがい)や大きな事故などが起きたときは現場の対応もするんですよ。わたしたちの会社には、緊急事態(きんきゅうじたい)が発生したときにできるだけ早く現場にかけつける緊急当番があります。ドライバーさんの安全と安心が確保(かくほ)できるように、当番の日はなおさらですが、そうでないときも何か起きたらすぐに現場に向かう、という心の準備はいつもしています。
高速道路ではどんな事故が起こるのですか?
堤さん
北陸は豪雪(ごうせつ)地帯なので、やはり冬の時期は積雪に関連した事故がふえます。高速道路は地元の方だけでなく、いろいろな地方から車が来ます。雪道を走りなれていないドライバーさんも多いですし、雪道になれる必要がありますからね。
(関連URL:「マンモシ博士の冬の高速道路ガイド」)
黒崎さん
一般道(いっぱんどう)よりもスピードが出ているので、高速道路では小さな油断(ゆだん)が大きな交通事故につながりやすいですね。だからドライバーさんに安全運転を心がけていただきたいのはもちろんですが、例えば標識を見えやすくしたり、路面を走りやすく整備したりというように、設備の面から交通安全をささえることも大切なんですよ。
仁平さん
スピードの出やすい区間では、ドライバーさんに注意喚起(かんき)をするような赤色のランプを回したり、事故を起こさせないための工夫もしています。わたしたちだけではなくいろいろな部署(ぶしょ)はもちろん、高速道路に関わるすべての会社や警察(けいさつ)などとも協力しています。

雪の高速道路を安全に走行するために、タイヤチェーンがきちんと装着(そうちゃく)されているかを確認しています。
事故や災害の対応はどんなところが大変ですか?
仁平さん
冬の事故や大雪などの災害時の対応で大変なのは、なんといっても寒さです。夜中に緊急対応などで現場に行くと、本当にこごえるほど寒いんです。高速道路の上は、風をさえぎるものも、あたたかい場所もないですからね。2022年2月に、トラックが中央分離帯(ちゅうおうぶんりたい)にぶつかる事故があったのですが、その時は夜中の1時ごろに出動して、仕事を終えたのは朝の10時ごろでした。ふぶきだったので冷えましたね。
堤さん
深夜に出動して、お昼ごろまで長時間現場対応が続いたりすることもありますからね。でも事故が起きたらできるだけ早く復旧(ふっきゅう)させないと、二次災害といって、事故や渋滞で止まっている車に後続車がぶつかってしまうなど別の事故が起きてしまうこともあるんです。
黒崎さん
わたしたちだけでも年間100件(けん)くらいの交通事故を担当します。命を落としたり怪我をしたりするような大きな事故が起きないように願っています。

高速道路の状況を24時間モニタリングしています。事故が起きたときも、現場の状況が映像(えいぞう)で送られてきます。
高速道路の積雪対策はどのようなことをするのですか?
堤さん
このあたりだと年間4メートルくらいの積雪があります。気温が下がってくると、路面が凍結(とうけつ)しないように塩をまく作業もおこないます。雪がふりはじめたらこまめに作業をしないとどんどん積もってしまうので、冬の時期はいそがしいですね。

事故や故障など緊急(きんきゅう)のときに使用する非常電話も、雪にうもれてしまわないようにこまめに除雪をしています。
仁平さん
高速道路は11月くらいからいつでも塩をまいたり、除雪(じょせつ)ができるよう準備をしています。そういった人員のわりふりなども、協力会社と協力して行なっています。

真ん中の車がロータリ除雪車。赤い大きな回転式の装置が雪のかたまりをくだいて集めます。いざというときにすぐに出動できるように、しっかりとメンテナンスをして待機中。
黒崎さん
雪で路肩(ろかた)や車道がうもれてしまったときや吹雪などで視界(しかい)が悪いときの事故防止のためにスノーポールを設置したりといった対応も行いますね。トラックや凍結防止剤散布(さんぷ)作業車、積もってしまった雪を路肩に寄せるための除雪車、路肩の雪を外に出すための大きなロータリ除雪車やダンプカーなど、たくさんの車をつかいます。

仕事をしていてやりがいを感じるのはどんなときですか?
黒崎さん
高速道路を走っていて、自分が担当した新しい標識を見かけたり、きれいになった路面を走ったりするとやっぱりうれしいですね。自分が関わった仕事を見ると、なんだかほこらしい気持ちになります。

仁平さん
自然災害や事故が起きた時に、いち早く道路を通れるようにできたときはうれしいですね。高速道路が通れないということは、物流が止まってしまうということ。物資(ぶっし)がとどかないとこまる人がたくさんいるので、通行止めが解除(かいじょ)できたときは「役に立てたなぁ」ってうれしくなります。積もる前から雪の対策(たいさく)を行うのも物流を止めないため。皆さんがコンビニやスーパーで買い物ができるのは、高速道路をつかってたくさんのトラックがものを運んでいるからなんですよ。
堤さん
事故でも災害でも、いつもとはちがう状況に対応しなければならないというのがわたしたちの仕事です。現場に行ってみたら想像(そうぞう)もしていなかった状況になっていた、なんていうこともあります。だからこそ本当に大変なことが多いのですが、その分、無事に終わったあとは達成感があるし、やりがいを感じます。
どうして今の仕事を選んだの?

黒崎さん
高校で土木技術(ぎじゅつ)を勉強していたので、その知識(ちしき)を活かしたいと思って入社しました。高速道路に関われるって、他の会社ではなかなかできない経験(けいけん)なので面白いですね。
仁平さん
交通事故や災害に対応したり復旧作業に関わったりという仕事をしたいとずっと思っていました。父がそのような仕事をしていて尊敬(そんけい)していたし、子どものころに、長岡市周辺で最高震度(しんど)7を記録した中越(ちゅうえつ)地震を経験しているのも関係していると思います。父や周りの大人たちが復旧作業に関わるすがたを見ていたので。
堤さん
わたしは大学では経営(けいえい)の勉強をしていたのですが、就職(しゅうしょく)したら社会や人々のくらしをささえる仕事をしてみたいと思っていました。就職活動の最初にこの会社を見つけて、すぐにここで働きたいと思いました。大学は首都圏(しゅとけん)だったのですが、地元の新潟で働きたいと思っていたので、ビビビッときた感じですね(笑