トラック大図鑑

教えて!「タイヤ」のこと

ここは、神奈川県湘南台の喫茶店「いすゞCafe」。しぶいマスターが一人で切り盛りしている。
若いころはトラックドライバーとして活躍したらしく、
店にはそのころの写真や思い出の品が飾られている。
今日も地元の若いカップルが、おいしい珈琲に惹かれてやってきたようで・・・。

きょうこ

マスター、カフェラテとトースト

あきら

ぼくも。少し腹ごしらえしたら、高速にのって山までドライブに行くんだよ

マスター

それはいいね。ロングドライブならタイヤの空気圧ちゃんとチェックした?

あきら

もちろん。出かける前にチェックしてるよ

きょうこ

ガソリン入れるときにチェックしてるんだ。いつも

あきら

変な傷がないか、溝が減ってないかとかね

マスター

二人は他のことは大ざっぱでも、タイヤについてはちゃんと考えているんだね

あきら

なんたって、地面に直接あたってるところでしょ?トラブルがあったら大変だもん。一番気をつかっているところだよ

マスター

そうだね

あきら

大きいトラックなんて、タイヤに関してはさらに気をつかっているんじゃないの?

マスター

まったくその通りだよ。今日はトラックのタイヤの話をしようか?

きょうこ

タイヤって、ゴムに空気が入っているんでしょ

マスター

ん、そんな風に思われているかも知れないね。その辺から話そうか。タイヤは単純なようでいて、知られざることがけっこうあると思うんだ・・・

トラック
タイヤついて

タイヤというと、自転車のタイヤのようにゴムの輪の中にチューブがあって、その中に空気が入っているというイメージではないでしょうか? しかし、現在、自動車に使われているタイヤのほとんどは、「チューブレスタイヤ」と呼ばれる種類のもので、チューブなどは無く、スチールなどの補強材で強度や剛性を高めたゴムの輪の中に空気をたくさん入れてホイールと合体させています。

さらに、ゴムの強度を高めるために、カーボン、つまり鉛筆の芯と同じようなものを補強剤として加えています。本来ゴムの色は輪ゴムのような「あめ色」に近いものですが、黒いカーボンを加えるのでタイヤは黒い色になるのですね。
大型トラックのタイヤでは、タイヤとホイールで一本約100kgのものもあり、直径も約1mあります。乗用車と比べると桁違いに大きいものです。
トラックのタイヤは、乗用車のタイヤの約10倍もの重さを支えなくてはいけません。だからトラックのタイヤには高い強度が求められるのですね。

タイヤ内部の空気がタイヤをホイールに押しつけ、ぴったりとくっつけています。そのためタイヤとホイールの間から空気が漏れない仕組みになっています。

空気をたくさん入れる、と話しましたが、その大きさだけでなく、乗用車のタイヤと段違いなのは「空気圧」の高さです。乗用車ですと、普通200kPa(2kgf/cm2程度に設定しますが、トラックでは900kPa(9kgf/cm2)もの空気圧に設定します。一本のタイヤに、200リットル入りのドラム缶約8個分の空気が入っていることになります。ものすごい量ですね。
トラックのタイヤの空気圧を高くするのは、トラックという「大きく重い」車体を支えて走らなくてはいけないからです。また、この空気圧でタイヤをホイールに強力に押しつけることにより、空気のもれを防ぐシール構造がとられています。
適正な空気圧から下がった状態で運転し続けると、燃費が悪化し、最悪の場合にはタイヤがバースト(破裂)したり、ホイールからタイヤがはずれたりする危険性があります。

昼夜問わず働いているトラック。一年で10万キロも走るトラックも珍しくなく、当然タイヤはすり減っていきます。ただしトラックのタイヤは乗用車に比べて安くはないので、新品に交換する費用を抑えるためにタイヤの溝がすり減ってきたら、表面のゴムだけを取り替えてまた再利用できるタイヤもあります。

  • kPaはキロパスカルと読みます。タイヤの空気圧は kgf/cm2 という単位が使われてきましたが、現在はSI(国際単位系)で圧力を表わすkPa(キロパスカル)という単位が使われるようになりました。
あきら

それで空気圧ちゃんとチェックするのか・・・

空気圧チェックは空気圧ラベルを確認して行います。
また、空気圧ラベルは、車型によって付いている場所が異なります。
きょうこ

あきらくん、知らずにそうしてたの?やだー

マスター

いやいや。習慣としてやっていたのはいいことだよ。でもどうして空気が抜けるかわかる?

あきら

それはほら、さっき説明してくれたタイヤとホイールのすき間からもれるんでしょ

マスター

ちゃんといっぱいに空気が入っていれば、すき間からもれることはないんだよ。けど、空気の分子のレベルでは、一見すると空気が通り抜けられないようなゴムの中を通って少しずつ外へ漏れ出してしまうんだ

きょうこ

へー

マスター

だから、放っておくと空気圧はかならず下がっていくものなんだ。常にチェックしないとダメなんだよ。あきらくんは偉いね

あきら

ほかにもトラックならでは気を使っていることなんてあるの?

マスター

大きくは4つかな

トラックならでは
気を使っていること

それでは、トラックならでは気を使って開発されているところをご紹介しますね。

  1. 1燃費をよくすること
  2. 2高い耐久信頼性にすること
  3. 3乗り心地と安定性を両立させること
  4. 4寿命をのばすこと

1燃費をよくすること

トラックは長い距離を高速で走るものです。高速で走るときは、タイヤの転がるときの抵抗が燃費に大きく影響します。
一ヶ月に数千リットルの燃料を使っているトラックもあり、「転がり抵抗」がわずかに変わるだけでも、燃料費に大きな影響があります。またCO2の排出もできるだけ削減するという意味からも、できるだけ燃費が良くなるようなタイヤを開発することに気が使われているのです。

2高い耐久信頼性にすること

乗用車に比べて約10倍もの重さを支えて走らなくてはならないトラックのタイヤ。
万が一故障したりすると、配送中の荷物が時間どおりに届かなかったり、場合によっては交通渋滞を引き起こす原因になったり、たいへんな影響が起きてしまいます。そこで、種々の試験を十分に行い、耐久信頼性を確認することに気が使われています。

3乗り心地と安定性を両立させること

トラックは長時間長距離を走るものです。乗り心地がよく、安定性にすぐれていないとドライバーは疲れてしまい、安全運転にも影響してしまいます。できるだけ乗り心地と安定性にすぐれたタイヤを開発するよう気が使われています。

4寿命をのばすこと

先ほども述べたようにタイヤ自体は高価です。すぐ摩耗してしまっては、交換などの手間や費用が大変です。なるべく寿命をのばすような開発を心がけているのです。

マスター

燃料代もばかにならないし、大事なことなんだよね

あきら

毎月何千リットルもなんてたいへんだ

マスター

そういう燃費やCO2の問題にタイヤも深く関わっているんだね

きょうこ

あきらくん、そろそろ行かなくちゃ。先に車行くわね

マスター

あきらくんの車は燃費良さそうだね

あきら

燃費はいいんだけど、ドライブ中にいろいろお菓子とか飲み物とか買わされるんで、きょうこちゃんとのドライブは燃費以外にいろいろかかって・・・

きょうこ

何やってるの?男同士でヒソヒソと。早く行こうよ

マスター

おっとっと、ごちそうさま。気をつけて行ってらっしゃい

こうして湘南台の喫茶店『いすゞCafe』では、マスターとカップルのよもやま話はつきることがないようである。

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