トラック大図鑑
教えて!「ミラー」のこと

ここは、神奈川県湘南台の喫茶店「いすゞCafe」。しぶいマスターが一人で切り盛りしている。
若いころはトラックドライバーとして活躍したらしく、
店にはそのころの写真や思い出の品が飾られている。
今日も地元の若いカップルが、おいしい珈琲に惹かれてやってきたようで・・・。

マスター、あたしはモカ!

ぼくはキリマン!

なんだか二人して楽しそうだね

この頃マスターのおかげで、トラックの面白さがわかってきたねって話してたの

それはうれしいなあ(ニコニコ)

マスターは最高の話し相手だって

うれしいね。ケーキ食べる?(ニコニコ)

逆にね。トラックでも普通の自動車でも、あんまり変らないものってなんだろうって話してたんだよね

ふんふん(ニコニコ)

まあ、それはミラーじゃないかなって

これってさすがに同じようなものよね

うーん(汗)

あれっ?マスター悩んでるみたい

いやあ、トラックのミラーって、これはこれで奥が深いんだよね

ええ、だってミラーじゃん。鏡でしょ?

トラックってね。まず普通の乗用車と一番違うところは『働くための車』ってことを思い出して欲しいんだよね。また同時に『安全が最優先』ということもはずせない


だよね

そうすると、自然とミラーの役目もわかってくるはずなんだ。たとえば、トラックのミラーは左右同じものじゃないって知ってる?

え、左右同じじゃないの

左右対称じゃないんだよ


へえー
トラックのミラーについて

右側のミラーは、運転席右側の窓を通して確認しますが、左側のミラーについては、フロントガラスの、ワイパーで拭き取れる範囲を通してよく見えるように、取り付け位置が工夫されています。
ですから左右対称にはなっていないのです。(下図参照)
また、雨の日の視界を確保するために、ミラー専用のワイパーやヒーターがオプションで選べる車もあります。
視界の確保というところでは、ほかにもずいぶんと工夫がされています。
たとえば、トラックは夜間に走ることが多いので、普通の乗用車より明るく映るミラーを採用しており、3割ぐらい明るくなっています。 トラックのミラーと比べてみると、乗用車のミラーはちょっと曇った感じがして、トラックのミラーが格段に明るいというのがわかるはずです。

また、できるだけ視界を広く取ることができるようにトラックのミラー面は「曲面(凸球面)」になっています。ところが、そうすることにより映る物が多少小さくなるのでどの程度の凸「曲率」にするか、開発者は非常に気を使い、試作や確認を重ねているんです。
この写真では、左側のミラーが左の窓から見えていますが、運転席から見ると、フロントガラスを通して見えるようになっています。

なるほど。ミラーだって奥深いものだったんだねー

あたしたちもまだまだね

まあまあ、そんなことないよ。ふつう気がつかないところだからね。あと、トラックのミラーには『アンダーミラー』っていうものがあるんだよ

『アンダーミラー』って?

トラックはどうしても足元が見えにくくなるから、前方の足元を確認するためのミラーがあるんだ。そのおかげで、発進時に、車の直前にいる人(子供)や物への衝突防止に役立っているし、駐車するときに前の車にギリギリまで詰められるんだよ


ギリギリってどれぐらい?

やろうと思えば、5センチ以下まで詰められるかな

それはすごい!

あきらでも大丈夫だよ。とはいっても別にギリギリに停めることを競っているわけじゃないんだね。トラックは倉庫に入ったり、狭い作業場に停めたり、『はたらく』ところで使われるものだから、どうしてもギリギリに停めなくちゃいけないことがあるからなんだ
ミラーに求められること
『はたらく』ところで使われるトラックなので、配送センターなどでよく見られる光景があります。
それは、ドライバーがトラックを停めて降りるとき、「よいしょ」と、『ミラーステー』と呼ばれるミラーのついたアームをたたむシーンです。仕事の邪魔にならないように習慣的に停めたらすぐたたんでいるのでしょうね。
これらを最大限に考えたトラックのミラーは、奥深い技術のかたまりと言えるのです。

なるほどねえ

ミラーは各国の法規によっていろいろ形が変ったりするんだよ

へえー楽しそう。車が右側通行の国は左右違ってくるのよね

それよりトラックのミラーってそんな明るいのにもびっくりだねー

あたしもお化粧直しに使いたいな

いやあ、あんまり明るすぎるのも、どうかなあ(笑)・・・

ん?どういう意味?

まあまあ二人とも、今日は特別にケーキをごちそうするからさ。仲良くしてよ


いただきまーす!うん!おいしい

なーんか、いつもサービスさせられてる気がするなあ
こうして湘南台の喫茶店『いすゞCafe』では、マスターとカップルの話はつきることがないようである。