トラック大図鑑

教えて!「運行情報システム」のこと

ここは、神奈川県湘南台の喫茶店「いすゞCafe」。しぶいマスターが一人で切り盛りしている。
若いころはトラックドライバーとして活躍したらしく、
店にはそのころの写真や思い出の品が飾られている。
今日も地元の若いカップルが、おいしい珈琲に惹かれてやってきたようで・・・。

きょうこ

マスター、こんにちは!あたしはモカください

あきら

ぼくはコロンビア。(携帯電話が鳴る)あ、兄貴だ。もしもーし。うん、わかった。後でね

マスター

今は携帯電話があるから便利だね

きょうこ

どこでも連絡がつくからね

マスター

実は、携帯電話を持っているトラックが走ってるって知ってる?

あきら

え、運転手さんが持ってるってこと?

マスター

そうじゃなくて、トラック自身が携帯電話を持っているんだ

あきら

トラックって、いつの間にか自分で電話までかけるようになったの?

マスター

ははは。そうと言えばそうかも知れないね。いま、『運行情報システム』といって、携帯電話通信を利用してトラックを「見守る」サービスが注目されているんだ。まだ、全部のトラックに普及しているわけではないけど、とてもおもしろいから、今日はその話をしようか!

きょうこ
あきら

おもしろそう!

運行情報システムついて

トラックにとって大きなテーマは「安全に走ること」、「燃費が良く、環境に優しく走ること」、そして「荷物を約束した時間に、良い状態のまま届けること」です。
安全に走ることについては、スピードを出しすぎたりしないよう、ドライバー自身の注意がとても大事ですね。
燃費良く走ることについては、トラック自体でもいろんな工夫がされていますが、運転のしかたによっても、燃費が大幅に違ってきます。急発進や急加速、急ブレーキなどをひんぱんに行ったり、速度にむらのある運転を行うと、燃費が悪く、つまり燃料の減りが早くなります。それに何より危険ですよね。安定した運転によって無駄が減り、燃料が効率よく使えるため、排出ガスも減り環境に優しくなります。

ところが、トラックがいったん会社を出てしまえば、どんな運転のしかたをしているのかはドライバーにしかわかりません。
運送会社などのトラックを使用している会社は、これまでは法令で義務づけられている「運行管理者」という人が、決められた安全な速度で走っていたか、きちんと休憩をとっていたかなどをチェックするため「タコグラフ」という記録システムを使ってトラックが帰ってきてから確認していました。しかしトラックが走っている時に「今、どんな運転をしているのか」ということを知ることはできなかったのです。

そこでいま注目されているのが、リアルタイムで車両の運行状況を細かく知ることが出来る、高度な『運行情報システム』です。
これは、トラック一台ごとに携帯電話を積んで、その運行状況をリアルタイムで運送会社に送信するシステムです。
どれぐらいのスピードで走っているか、急加速や急発進などアクセルの踏み方はどうか、また、高速道路では適切なギアで安定した速度で走っているか、どのぐらいアイドリングをしているかなどを自動的に記録します。
また、あまりに急なブレーキなどは、「ひょっとして事故かも?」ということで運行管理者にメールなどで伝えるという仕組みもあります。
ドライバーが「安全」で「燃費の良い」走り方をしているかどうか、見守ってくれているようなシステムが運行情報システムなのです。

あきら

トラックの運行情報システムってそんなにすごいんだ!

マスター

うーん。すごい時代になってきたと思うね

あきら

でもマスター、走っている間に、会社にその運転状況が伝わるのは分かったけれど、運転手さん自体には見えないよね?

マスター

いや、音声で知らせてくれる機能があるんだよ。また、何時にどこに着かなくちゃ行けない、という運行計画というのがあるんだけど、決めた計画との時間差を表示してくれる仕組みもある

あきら

ああ!じゃ予定通りかどうか確認できるし、運転のしかたについても音声でアドバイスしてくれるってことだね!本当に見守ってくれているんだ

マスター

見守ってくれるということで言えば、故障したときにボタン一つで近くのトラック販売店に故障場所や故障内容を連絡してくれる機能もあって、いざというときもドライバーはあせらなくてすむしね。
また、何時にどこに着いて、次にどこに行ってというトラックが1回仕事をして帰ってくるまでが自動的に記録される仕組みもあって、ドライバーにとっては、帰ってからその日の報告書をまとめたりする負担も減るんだよ。ぼくが現役の時はたいへんでさ・・・

きょうこ

それじゃ運転手さんもラクになるのね

安全省エネ運転支援

会社に戻れば、自分がどれだけ安全、省エネな運転をしてきたかどうか、即座にレポートとして目で確認することが出来ます。運行管理者やドライバーはそれを見て、より良い運転に改善していくことになります。ドライバーの報告書作成の負担を減らし、運行管理者の負担も出来るだけ軽くして、しかも管理がしやすくなるわけですね。
省エネを意識した運転は、トラックを使用する会社にとっては、燃費を良くして運送費用を下げていきたいということはもちろん、いま大きな問題になっている地球環境の問題にも貢献します。より燃料の消費を減らす、環境にやさしい運転も強く求められているのです。また丁寧な運転はトラックにも負担を掛けないので、トラックを長持ちさせることにもなります。

荷物の安全な輸送、時間通りの到着など、トラックを使う会社に向けての要望はきびしくなるばかりです。しかも、安全に、燃費良く走ることを考えなくてはなりません。そのための、ドライバーの運転のしかたを目に見えるようにして、データとして分析できるように考えられたのが、この高度『運行情報システム』なのです。
まさに、ドライバーを見守り、安全で省エネな運転を支援する仕組みといえるでしょう。

ところで、このシステムでは乗っている時だけでなく、乗っていないときもトラックを見守ることができます。それは「盗難」の問題です。万一車両が盗難にあったとき、すぐに運行管理者にメールなどで連絡し、その位置を追跡して確認することが可能です。これは、各トラックに携帯電話が載っていることで可能になるのですね。

マスター

まだこの運行情報システムは、すべてのトラックについている訳じゃないけど、今後広がっていくと思うよ

あきら

そうすると、全国で走っているトラックが、みんな見守られていることになるわけだねー。すごいなー

きょうこ

いいなあ。あたしも見守られたいなあ

マスター

ははは。ちゃんとあきらくんが見守っているじゃない

あきら

ははは。あ、また電話だ。今度はお母さんだ。もしもーし。もうすぐ帰りまーす

マスター

あきらくんはちゃんと家族に見守られているようだね

こうして湘南台の喫茶店『いすゞCafe』では、マスターとカップルのよもやま話はつきることがないようである。

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