バス大図鑑

教えて!「低床バス」のこと

大森の商店街の小さなレストラン「キッチンいすゞ」。
マスターは路線バスの運転手でしたが引退して、実家の洋食店を継ぎ、
カウンター越しに、お客さんとの会話を楽しみながら、おいしいランチを提供しています。
常連のお客さんにバスの話が大好きな親子がいて、今日もやってきたようです。

ムスコくん

今日も路線バスでやってきたよ!

お父さん

われわれ親子はバス大好きだからね!

マスター

いいですねえ~。お父さんも昔から路線バスが好きだったのですか?

お父さん

もちろんだよ

マスター

昔の路線バスと違うな、ってところ気がつきますか?

お父さん

むむ……。床が低くなってる?

ムスコくん

ええっそうなの?

お父さん

昔は乗車するときに、“よいしょ”って上がってた気がするよ

マスター

バスは“低床”に変わっているんですよ。それは……

低床バスついて

近年、町を走る「路線バス」は、基本的に「低床(ていしょう)バス」と呼ばれる床が低いタイプです。一部の例外を除いて、ほとんどはこの「低床バス」になっているので、お父さんが子どもの時よく乗っていた路線バスとは様変わりしているのです。

以前は、路線バスの多くは「ツーステップバス」でした。バスに乗り降りする時の「乗降口」が2段の階段になっていたのです。しかし、お年寄りや体の不自由な人にとって乗り降りが不便でした。また、車いすへの対応も必要とされました。2000年に「バリアフリー法」という法律が定められ、もっと乗り降りしやすいバスにするよう決められたのです。具体的にいえば、「バスの床を低くして乗り降りしやすいようにする」ということで、低床バスが導入されるきっかけになったのです。低床バスには「ワンステップバス」「ノンステップバス」の種類があります。

ワンステップバス
  • 出入り口の床面の高さが650mm以下。
  • 乗り降りする部分(乗降口)の段差を1段にしてある。
車いすの人も低床バスによってバスに乗り降りしやすくなります。
ノンステップバス
  • 出入り口の床面の高さが350mm以下。
  • 乗り降りする部分(乗降口)の段差をなくしてある。
  • 今後はノンステップバスが主流になる。

さらにノンステップバスの場合、「ニーリング」という操作によって、床の高さを300mm以下にでき、お年寄りや子ども、そして車いすの人がさらに乗り降りしやすくなります。

大型路線バスの例①

路線バスはたくさんの人を乗せて走ります。そうすると車内が混雑しますね。その原因のひとつが、優先席の下に燃料タンクが置かれていたことです。そのため優先席を進行方向に向けて横向きにせざるを得ませんでした。すると、その前に立っている人のエリアの面積がどうしても狭くなってしまい、乗客が移動しづらく、混雑をひどくしていました。また、立っている人の面積が狭いと、定員も低く抑えるしかありませんでした。そこでバスメーカーは工夫し、燃料タンクを、左前輪の上の方に移動させるという改良を行ったのです。そのおかけで、新型の路線バスでは「ノンステップエリア」と呼ぶ部分の横幅を広くとれるようになり、混雑した車内でも乗客が移動しやすくできるようになり、定員も増やせました。

前向きになり安定して座っていられるようになった優先席。

さらに、これまで優先席は進行方向に向かって横向きでしたので、お年寄りや体の不自由な人にとっては、バスの走行時、体を安定させづらいという声がありました。この燃料タンクの位置の変更により、優先席を進行方向に向けて前向きにすることができるようになり、乗客が安定して席についていられるようになったのです。

ムスコくん

低床バスにはこんなにいろいろ工夫がされているんだね!

マスター

バリアフリー法というのがひとつの大きな節目だったんですよ

お父さん

バスを作っているメーカーはみんな対応したの?

マスター

はい。日本の代表的なバスメーカーはみんな対応しました

お父さん

大変だったろうねえ……

マスター

ちなみに、バスメーカーの間では、開発面でお互いに競争しているのですが、運転手さんのことを考えようと気持ちは同じです。なのでハンドルやペダルなどの位置はほぼ共通にしています

ムスコくん

えーなんで

マスター

運転手さんがどのメーカーのバスを運転することになっても、操作するのにまごつかないようにですね

お父さん

そうかあ。運転手さんのこともよく考えられているんだ

低床バス設計

低床バスでは床を低くしたことで天井までの高さを、少し高めにとることができました。また、バス後部の座席に移るときには、段を上がらなくてはなりませんが、背の高い乗客が天井に頭をぶつけてしまうといったことがありました。そこで、新型のバスでは後方の天井の高さも、高めに設定しています。

大型路線バスの例②

新型の路線バスで、燃料タンクの位置をバスの後部から左前輪の上に移動させたことで変わったことがまだあります。以前は左前輪の上に乗客席がありましたが、この席をなくしています。これにより、バスの運転手さんの左側の視界が開けて見やすくなりました。左折するときなどに、二輪車や歩行者などを確認するのが大切なので、運転しやすくなったはずです。

新型の路線バスでは、かなり床が低くフラットな車内になっていますが、やはり後ろの方まで行こうとすると段差があります。これを後ろまですべて「フルフラット」にできないかと開発が進められています。

今後自動車は「電気自動車(EV)」が主流になっていくと思われます。バスも例外ではありません。すると、燃料タンクというものが必要なくなります。そうするとバスの構造も変わるので、さらに広く、フラットな床のバスができるかも知れません。

ムスコくん

うーん。低床バスってこんなに色んな工夫がされているんだね!

マスター

バリアフリー法によって、低床バスでは『降車スイッチ』や『握り棒』を目の不自由な方にも見やすいよう橙色にするというような工夫もされていますよ

お父さん

近ごろベビーカーを乗せている人もよくみかけるなあ

マスター

やはり、車内のフラット部分が広くなって、スペースがとれたということが大きいでしょうね

お父さん

ムスコが大きくなる頃にはどんな路線バスが走っているかなあ

マスター

きっともっと環境にやさしく、全部がフラットなバスになっていそうですね

ムスコくん

ぼくは大人になってもバス大好きなままだからね!

お父さん

うむ。いいことだ。ただし子ども料金じゃなくなっているだろうな(笑)

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