生活協同組合コープさっぽろ
非営利でも利益を生む先駆的な事業モデルを推進
生活協同組合コープさっぽろは、自前の物流ネットワークと事業の多角化により、事業領域・規模を拡大し、地域の社会インフラを担う協同組合へと成長を遂げる。
同時にQCとIEを両輪とした科学的管理法を採用し、職員の能力を高めてきた。
寡占化を推進するコープさっぽろの新たな事業モデルに注目が集まっている。
※掲載内容は2025年10月1日紙面掲載時点のものとなります。

経営再建を経て60周年地域の未来をつなぐために
北海道全域を営業エリアとする生活協同組合コープさっぽろは、1965年に設立された北海道の生活協同組合である。「北海道で生きることを誇りと喜びにする」を理念に「“安心”と“革新”」を使命に掲げて事業を展開。現在、北海道に暮らす約8割の世帯が組合に加入し、その組合員数は約200万人を超える。


主な事業は、道内に100以上を展開する店舗事業。プライベートブランドを含む良質で充実した商品を販売することで地域住民の日々の食生活を支えてきた。2つ目は「トドック」と呼ばれる宅配事業(カタログ販売)。これは、組合員の注文に応じて全道52拠点(デポ・センター)から自宅へ商品をお届けるサービスで、道内全域をカバー。また、過疎化が進む地域に向けた移動販売車「おまかせ便カケル」を運行するほか、夕食宅配サービスでは高齢者の安否確認を行うなど、安全安心な地域づくりに貢献している。3つ目は共済事業で、各種保険の販売、灯油・ガス・電気などのエネルギー事業、子育て支援など、豊かな暮らしをサポートする総合的な生活サービスを提供している。近年は、地域の行政機関と連携し、組合員向けの健康診断事業を開始するなど、単なる小売業を超えた社会インフラとしての役割も担っている。

コープさっぽろに入協後、店舗支配人、参事、水産部長、理事・商品本部長などを歴任してきた大見英明氏は、2007年に現職の理事長に就任。経営が逼迫した時期に経営再建に努め、業績をV字回復させると共にシナジーの高い事業を展開。コープさっぽろを道内屈指の小売業へ躍進させてきた。さらに大見理事長は、今年「縮充と可能性の追求」をテーマに「共助を育み協同組合型社会をオールコープで追求します」「地域存続と産業振興への貢献を高めよう」の方針を掲げ、創立60周年を関連会社を含めオールコープで取り組み、さらなる地域貢献と組合員サービスの向上をめざすと宣言。2025年をコープさっぽろの転換点と捉え、協同組合としての可能性を深化させる年として位置づけている。


- 会社名
- 生活協同組合コープさっぽろ
- 所在地
- 札幌市西区発寒11条5丁目10番1号
- 設立年月日
- 1965年(創立)
- 代表者
- 理事長 大見 英明
- 従業員数
- 15,864名(パート・アルバイト含む)
- 保有車両台数
- 約3,000台(グループ含む)
地域を支える国内屈指の物流基盤を構築・運営
北海道の多くの市町村では、人口減少と超高齢化が進行。広大な地域に住民が分散する中で地域社会を維持することが難しくなってきている。特に、高齢者を中心に食料品や日常品の買い物に不便を抱える“買い物困難者”が増加。自治体だけでは解決するのは困難と言わざるを得ない。
そこで大見理事長は、持続可能な道内小売業を見据えて独自の物流ネットワークを構築。競争優位性を確保することで、小売事業の強化、質の向上をめざしたのだと語る。
「すでに、フィンランドやスウェーデンなどの生協は、協同組合ということもあって寡占化に対する消費者の警戒感が低く、国内食品小売シェア5割を超えています。また、北海道と地理的な条件が似ている英国の大手小売企業は、自前の物流システムを運営することで収益力を拡大しました。欧州を実際に視察してきた私は、物流の潜在的な可能性を強く感じ“物流の完全自前化”を決断したのです」

2012年、コープさっぽろは、物流子会社である北海道ロジサービス株式会社(江別市)を設立。物流事業の中核を担う江別物流センターは、約20,000坪の敷地内にDC型センターをはじめ、店舗向けTC型センター、宅配専用センターなど6棟が並ぶ。また輸配送はハブ&スポーク方式を採用。道内の隅々まで商品を供給し、帰り便で各地域の加工食品や農産物などを集荷する運行体制を築き上げた。
さらに大見理事長は、市場の変化に応じて柔軟に物流体制を見直す一方で、物流設備への投資も積極的に行ってきたという。2018年には先進の高密度自動倉庫「オートストア」と台車型物流支援ロボット「キャリロ」を導入。ピッキング作業や庫内運搬作業の大幅な効率化と省人化を実現している。また昨年は、搬送用のカゴ台車に仕分け・積付けする作業を半自動化する「エルゴローディングシステム」や高速で商品の入出庫を行える「シャトルラック」、冷凍商品を入れるジェットシッパーの組み立てロボットを導入。コープさっぽろは、国内屈指の機能と作業力を有する物流センターを完成させた。近年は、他社の物流業務も積極的に受託しており、物流事業全体の事業高は年間500億円を超えている。

継続的に改善活動に取り組む組織へ進化

大見理事長主導による物流全体最適化の取り組みは、組織改革の一環として始まり、そのために職員の能力を最大限に引き出すQC(品質管理)とIE(生産工学)を両輪とした科学的管理法を推進してきた。人財育成部も設けられ、年間で職員3,000人に教育を実施しているという。QC・IE教育用のテキストや各作業の業務基準書、3,000本に及ぶ教育動画などの教材は独自に作成したとのこと。現在はAI学習にも取り組み、業務アプリ制作の研修なども行っているという。

コープさっぽろは、こうした活動により300の改善事例が生まれ、直近6年間で約4億円のコスト削減を達成。職員の能力を高めることで、継続的な改善活動が各部門に定着し、組織全体の競争力が向上したそうだ。
小売業界を先導する持続可能な成長戦略
自前の物流ネットワークを構築することで国内でも有数の協同組合へと成長を遂げたコープさつぽろ。最後に大見理事長に今後の展望についてお話を伺った。

「協同組合は、組合員様の生活ニーズにそった多様なサービスを提供していくことが求められています。そのために、北海道という限られた市場で残存者利益を上げていく、すなわち事業規模を高めることが必要だと考えています。これからもコープさっぽろは、多角的な事業展開、地域雇用の確保、物流システムの強化と人財育成に努める中で組合員様の食を支え、豊かに暮らし続けられる環境づくりに全力で取り組んでまいります」
非営利組織ながら、事業規模・領域を拡大して、その利益をしっかり組合員に還元する事業モデルを実現したコープさっぽろは、協同組合の進むべき新たな方向性を示したと言えるだろう。北海道で独自路線を追求するコープさっぽろの動向に、小売・物流業界から熱い視線が注がれている。
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