濃飛倉庫運輸株式会社

“人”重視の経営で次世代のレガシーを紡ぐ

大正時代に創業した濃飛倉庫運輸株式会社は、保管、輸送を補完する独自の物流ネットワークに加え、陸・海・空の総合一貫輸送体制を構築してきた。また“人”の力を信じて人材育成に注力。提案力を強化する中でオーダーメイドの物流サービスを提供。創業110年を通過点と位置づけ持続的成長をめざしている。
※掲載内容は2024年12月1日紙面掲載時点のものとなります

環境経営の一環として「エルフEV」を初導入

グリーン経営認証

国際物流企業として知られる濃飛倉庫運輸株式会社は、早くからモーダルシフトに対応すると共に、各支店で「グリーン経営」の認証を取得するなど、持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組んできた。今年1月30日にはBEV小型トラック「エルフEV」(最大積載量3トン)2台を導入。本誌の取材で同社を訪問したこの日、いすゞ自動車中部の伊藤督久執行役員より、同社の代表取締役社長尾関圭司氏へ「エルフEV」のジャンボキーが手渡された。尾関社長は、導入目的について次のように説明された。

「車両の排出ガス低減への取り組みとして初めてBEV車を導入しました。現場で実用性を検証し、今後どのように活用できるか見極めたいと考えています。現在は、岐阜市内の集配送車両として1日100キロ以内を目処に稼動中。衣料品や介護用品、機械部品などを運んでいます」

今年1月30日にエルフEVを2台導入。本誌取材日に、あらためて、いすゞ自動車中部の伊藤督久執行役員(左)より代表取締役社長尾関圭司氏(右)へジャンボキーが手渡されました。

また管財部長参事の森与四男氏によれば、現場の評価もすこぶる良いという。

管財部長 参事 森 与四男 氏
管財部長 参事
森 与四男 氏

「担当ドライバーからは、パワーがあり、積載時でもしっかり走行できる。アイドリング時の振動がなく、静粛性にも優れているので乗り心地も良いと聞いています」

会社概要
本社オフィス:濃飛ビル(岐阜市)
本社オフィス:濃飛ビル(岐阜市)
会社名
濃飛倉庫運輸株式会社
所在地
岐阜市橋本町2-20
設立年月日
1916年8月28日
代表者
代表取締役社長 尾関 圭司
従業員数
1,230名
保有車両台数
509台

陸・海・空の一貫輸送体制を展開する総合物流企業へ

そんな同社の創業は大正時代まで遡る。当初、銀行の担保物件を預かる倉庫会社として設立されるも、戦後、保税倉庫の許可を取得すると共に地元の運送会社を買収。1949年に現社名の濃飛倉庫運輸に改称する。その後、特積み免許を持つ運送会社を統合する中で、中部地域を中心に関東、関西をつなぐ独自の輸送ネットワークを構築。保管と輸送を相互に補完する事業体制を確立した。そして、納期やコストなどに応じて最適な輸送手段(トラック輸送、鉄道輸送、航空便、海上輸送)を組み合わせることができる「陸・海・空の総合一貫輸送」の仕組みを築き上げていく。

大きな転機となったのは1966年に名古屋港の港湾運送事業免許を取得できたことだという。港湾地区に保税倉庫を保有し、輸出入の通関業務にも従事している。そして1989年からは、海外に生産拠点を構える顧客の物流ニーズに応えて海外へ進出。現在は中国、ベトナム、カンボジアに現地法人を設立し、倉庫の運営も手がけている。

現在、同社は衣料品、食品、家電、医薬品、雑貨など多岐にわたる貨物を取り扱っており、国内(中部・関西・関東)に73拠点、海外に9拠点を設け、多数の物流センターを運営。高度化、多様化する顧客の物流ニーズにワンストップで対応している。

定評ある提案力でサプライチェーンの最適化を実現

同社の強みは、全国を網羅する物流ネットワークや生産性を高める自社開発した基幹システムに加え、これまでに培ってきた経験とノウハウ、知識を駆使して顧客の物流業務全体を包括的に受託できるところだ。同社の提案力には定評があり、コスト削減、リードタイム短縮、システム構築、倉庫業務運営などの提案を通じて、サプライチェーンの最適化を支援している。

具体的には、在庫削減、リードタイム短縮を実現するクロスドッキング方式の輸配送や共同物流をはじめ、鉄道輸送を利用したモーダルシフトへの転換、複数の工場で生産された商品を集荷し、コンテナに混載して海上輸送するバイヤーズ・コンソリデーションなど、顧客の多様化する物流ニーズに応え続けている。

新たなレガシーを紡ぐ“人”重視の経営を実践

尾関社長は11代目に就任されてから、今期で9年目を迎えたそうだ。陣頭指揮を取る尾関社長に、同社の経営方針についてお尋ねすることができた。

社是

「当社の諸先輩は、社是・方針にある『保管運輸の綜合経営』を実践する中で、今日の事業体制を築き上げてきました。このレガシーをさらに発展させ、後進に引き継ぐことが私の使命。社長就任後は、一部の組織体制を見直して人事機能を強化。競争力の源泉、事業の強固な推進力となる人材の採用と教育に注力しています。物流業界は今後ますますAIの活用やIT化が進展し、さらにシステム化、自動化が進むことでしょう。だからこそ、お客様目線による“人”の力が求められると思います。当社は、お客様との対話から生まれるオーダーメイドの物流サービスを提供していく方針です」

「命を守る」委員会を設置し、事故防止活動を推進

2025年度スローガン

安全への取り組みとしては、社長を委員長とする労働安全衛生委員会(「命を守る」委員会)を設置し、精力的に事故防止活動を行っている。毎年度スローガンを掲げ、年2回、全社的に事故防止の強化月間を設けて無事故に努めている。ユニークな活動としては、国内78カ所の事業所を対象に3本の”たすき”でつないで事故防止と社員の安全意識の向上を図る「NOHHI無事故たすきリレー」を実施している。また、各ドライバーや庫内作業員が「安全宣言」を掲げ、事務所内などに掲出。自らの宣言を失念させないことで、安全意識を高めている。車両事故が発生した際は、安全管理室がドライブレコーダーを用いて状況を詳しく検証。「命を守る」委員会で議題として取り上げて対策を講じるなど対応も迅速である。

全ドライバーは、年度ごとに「安全宣言」を社内と運転席の見える位置に掲出。ドライバーの安全意識を高めることで事故削減を実現。

創業110周年を通過点に持続可能な成長へ

代表取締役社長 尾関 圭司 氏
代表取締役社長
尾関 圭司 氏

最後に今後の展望と事業計画について尾関社長にお話を伺った。

「当社は、2026年に迎える創業110周年を通過点と位置づけ、企業の永続的発展を見据えた事業運営を構想しています。直近の目標として売上高300億円を達成することを見据えると共に、利益率の向上も重要課題として取り組んでいます。そして得られた資金を海外事業への投資に充て、グローバル市場での事業拡大を通じて企業としての持続的成長をめざしてまいります。国内においては、岐阜地区に新たな物流施設の建設を検討しており、地域活性化にもつなげていきたい。また将来的には、当社で働く従業員の糧につながるような新たな事業を考えており、人材重視の経営姿勢のもと持続可能な事業モデルの構築を推進していく所存です」

総合物流企業として確かな歴史を刻んできた同社。これを礎に物流業界の変化に柔軟に対応しつつ、企業価値の向上と社会貢献を両立させる同社の挑戦は、持続可能な次世代を見据えて着実に進展している。

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