河嶋運送株式会社
ラストワンマイルの集配送を担う独自の輸送ネットワークを展開
京都北部地域を中心に建設関連の輸送業務や付帯作業、一般貨物の貸切輸送、小口貨物の幹線輸送及び集配業務、倉庫業などを展開する河嶋運送株式会社。独自の輸送ネットワークを展開することで、ラストワンマイルの集配送体制を構築。地域の物流を支える輸送企業として、地方活性化の大きな推進力となっている。
※掲載内容は2024年10月1日紙面掲載時点のものとなります

京都北部を中心に事業を展開する老舗の輸送企業

京都府の北西部に位置する宮津市は、日本三景の一つ「天橋立」(特別名勝)で知られる風光明媚な海岸沿いの街である。河嶋運送株式会社は、この地で創業から100年近く事業を営んできた老舗の輸送企業だ。
戦時中の大同合併を経て、同社が河嶋運送(株)として独立したのは1957年のこと。車両4台からのスタートだったという。当時は公共事業が盛んで、周辺地域の高速道路や空港、発電所の建設現場へ建設資材や建設機械を運んだそうだ。高度経済成長を背景に売上を伸ばし、やがて数十台ものダンプ車を保有する地域でも有数の輸送企業へと成長を遂げた。また、1982年には付帯サービスとして提供していた土木作業(建設部門)を独立させ、河嶋建設(株)を設立する。しかし同社は、建設関連事業に特化したわけではなかった。1962年から新たな営業所を開設し、一般貨物の貸切輸送や小口貨物の積み合わせ輸送及び集配業務も手がけるようになる。事業分野を拡大する方向へ経営の舵を切ったのだ。この経営判断が、その後の同社の発展に大きく寄与することになる。



- 会社名
- 河嶋運送株式会社
- 所在地
- 京都府宮津市字須津1608
- 設立年月日
- 1927年4月(創業)
- 代表者
- 代表取締役社長 安田 敏英
- 従業員数
- 92名
- 保有車両台数
- 86台
「この先、地域の公共事業が完了すれば、建設事業の輸送需要は先細りとなる。このことに気づかれていた先代社長は、早くから商流関連事業(貸切・小口貨物業務等)に対応できる体制づくりを進めました。さらに、1989年には福知山営業所に一時保管倉庫を開設し、保管業務も開始。その結果、売上比率は徐々に逆転し、近年は、商流関連事業が売上の約7割を占めています。現在当社は、事業拠点5カ所(本社含む)に加え、関連グループ企業3社体制で事業に邁進しております」
と語られた安田敏英氏は、同社で建設事務、営業、流通部門の所長を経て、2017年に社長に就任されたそうだ。先代社長の経営方針を引き継ぐ中で、経営環境の変化に応じた事業を推進。安全への取り組み、コンプライアンス重視、働き方改革などの課題に取り組まれている。豊かな自然と伝統文化を育んできた地域で活動する企業として、すでにGマークに加え、グリーン経営も取得済み。これからも、歴史ある会社を発展させられるように、顧客の多様なニーズに総合力で対応すると同時に、質の高いサービスを提供し続けることで顧客の信頼に応えていきたいという。



ラストワンマイルの集配送体制を構築
同社の建設関連事業は、現在も事業の柱であることに変わりはない。長年にわたり積み重ねてきた豊富な経験とスキルを活かし、様々な建設工事に関わる輸送・土木作業業務を請け負っている。また1990年からは産業廃棄物の収集運搬業務も行っているほか、グループ会社において建材資材の販売や建設機械などのレンタル事業も展開しているという。保有車両は、ダンプ車をはじめ、重量物を運搬するセミトレラーやクレーン付き平ボディ、バラセメントを運ぶバルク車など、豊富な車種を取り揃えている。

主要事業の商流関連事業においては、地元企業の製品輸送や京都北部地域における小口貨物の輸送、集配送サービスを提供している。安田社長は、京都府北部地域に独自の輸送ネットワークを展開することで、業務の効率化を図ってきたと話す。

「そもそも京都北部地域の人口は減少し続けており、流通する貨物量も限られています。しかも、貨物は手荷役となるので、引き受けたがる同業者も少ないというのが実情です。つまり、ここ一帯はなかなか採算が取れない地域なんです。そこで当社は、京都北部地域の小口貨物を集約できる拠点(宮津市・舞鶴市・福知山市・京都市)を開設。さらに、貨物の一時保管も対応できる倉庫を福知山営業所に確保しました。2015年に新たな営業倉庫も開設しています」
同社は、京都北部地域におけるラストワンマイルの集配送体制を構築することで、地域の物流を支えている。
採用ミスマッチを防ぎ従業員の定着率を向上
そうなると課題になるのが人手である。しかし同社では「2024年問題」の規制が適用される前からドライバーも倉庫作業員も確保できているという。常務取締役を務める河嶋賢嗣氏に同社の採用方法についてお話しを伺った。

河嶋 賢嗣 氏
「当社の採用活動における問題は、採用しても、すぐに辞められてしまうこと。そこで、当社は採用における“ミスマッチ”を防止するため、面接内容を見直しました。具体的には、応募者に業務内容、勤務条件、給与体系、福利厚生、職場の雰囲気に至るまで、詳細を説明します。加えて、必ず実際に職場を見学してもらいながら質疑に応じています。入社されてから、こんなはずじゃなかった、という認識のズレを極力排除するためです。この面接のプロセスを取り入れてからは、確実に定着率が向上しましたね。また当社は、一人でも多くの従業員に長く務めていただけるように、年齢や職歴、ライフスタイルの変化に応じて職務(ドライバー・庫内作業員・事務職等)を選べるようにしています。さらに2016年より、60歳定年制を65歳に引き上げました。また当社は、深夜運行はあっても毎日帰宅できるようにシフトを組んでおり、その点も多くのドライバーに選ばれている理由だと思います」
その上で同社は、従業員のモチベーションを高めることを目的に、無事故報奨や安全表彰、免許・資格取得支援、永年勤続表彰などを実施。またコロナ禍の際は、全従業員にコロナ手当て(生活支援金)を支給したそうだ。また、従業員が楽しみにしていたレクリエーションを中止した代わりに、家族宛に感謝の手紙を添えて牛肉を配布したとのこと。同社は、今後も福利厚生の充実化を図り、従業員の待遇改善に努めていきたいという。
従業員の安全教育に努め安全意識の高い組織をつくる
「車両はシンプルで良い」というのが同社のモットー。ただし安全を重要な柱と位置づけ、グループの整備会社で整備は抜かりなく実施。いすゞ自動車近畿のアフターサービスも活用するなど、車両整備には万全を期しているという。直近では、車両故障や事故を防止するため各営業所で日常点検の講習会を開催したそうだ。安全運行が基本であり、社会的責務だと安田社長は語る。




安田 敏英 氏
「安全規定を遵守し、無益な事故を起こさせないように、様々な安全教育の機会を設けています。ドライバーを増やしていくことは難しいですが、一人ひとりのレベルを高めながら、安全意識の高い組織をつくっていきたいと思います」
また創業100周年は通過点に過ぎないとも話された安田社長。京都北部地域で歴史を刻んできた企業として、地域の重要なインフラである物流を継続して守っていくことが自社の使命だと考えている。過疎化や高齢化が進む地域において、同社のような輸送企業が果たす役割は重要だ。地域で収益を上げ、それをまた地域に還元することで、地方活性化の大きな推進力となっている。

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