独自の物流体制によって製造小売業を支える

1969年に設立された中部興産株式会社は、創業時から受け継がれた「人々の暮らしに豊かさをもたらしたい」というスローガンに基づき、中部エリアを中心にスーパーマーケット(321店舗)やドラッグストア(515店舗)、ホームセンター(168店舗)などを展開するバローグループ(連結子会社55社)の物流子会社である。取扱商品は、食品や医薬品をはじめ、生活雑貨、家具、レジャー用品、建築資材など多岐にわたる。
2012~2013年には、独自の総合物流センター構想のもと、食品工場を併設した可児ドライセンター及びチルドセンター(岐阜県可児市)を開設。製造・物流・販売までを一貫して担う“製造小売業”を構築することで、物流品質の向上と物流業務の効率化を実現。現在中部エリアに点在する同社の物流拠点は25カ所。様々な食品を取り扱う同社は、物流の全行程において徹底したコールドチェーン体制が確立している。また、庫内のレイアウトや物流システム、什器、設備の設計・開発にも細部にまでこだわり、サプライチェーン全体の物流システムを独自に構築。近年は、先進のAIやロボティクス革新による物流技術も積極的に導入するなど、より付加価値の高い物流サービスを提供し続けている。



同社の物流体制の構築やシステム開発に長く携わってきたという代表取締役社長の小池孝幸氏。昨年6月からはグループを束ねる株式会社バローホールディングスの取締役社長も兼任しており、製造小売業のさらなる発展に向けて事業を推進中である。小池社長は、バローグループの特徴について次のように語られた。
「バローグループは、商品を仕入れて店舗で販売するだけではなく、グループで一部の商品を製造すると共に、物流業務を手がけているところが最大の特徴です。当社は、グループ1,350カ所以上の店舗を物流事業で24時間365日支えています」

- 会社名
- 中部興産株式会社
- 所在地
- 岐阜県可児市大森字奥洞989-1
- 設立年月日
- 1969年
- 代表者
- 代表取締役社長 小池 孝幸
- 従業員数
- 1,283名
- 保有車両台数
- 76台

自社の強みを活かして「2024年問題」に対応
コールドチェーンシステムを確立した高度な物流施設やシステムづくり、多種多様な商品を製造から販売までコントロールできる物流体制、さらに様々な物流機能を最適なかたちに組み合わせられるところが同社の強みである。原材料費の高騰などにより物流コストが上昇する中、これらの強みが追い風になる、と話されたのは執行役員の坂本部長である。

坂本 健太郎 氏
「運送のみ、保管のみといった部分最適では、できることが限られていますが、当社には多様な物流の仕組みや技術があり、状況に応じた物流サービスを提供することができます。例えば、業務を調整してリードタイムを短縮することで、納品時間を変更することが可能です。つまりルールが変更できるといこと。そういう意味で当社の物流体制は視野が広いと言えるでしょう」
荷主・物流事業者・運送事業者それぞれに関わる「2024年問題」については、2年前から対策を検討してきたという同社。小売が動かないと改革はできないと考え、需要予測や受発注情報の活用、在庫コントロールによる在庫削減など、様々な角度から業務の効率化に取り組んできたという。

同社初「エルフEV」を導入
同社にエルフEV(小型電気トラック)が導入されたのは今年7月のこと。バローグループは中長期経営方針において「サステナビリティ・ビジョン2030」を定めており、持続可能な社会の実現に向け、事業活動を通じて地域社会へ貢献することをめざしている。今回は、その一環としてエルフEVを導入することになったそうだ。導入式に出席された小池社長にお話しを伺うことができた。

「本当はもっと早く導入したかったのですが、いすゞさんの市場での検証をしっかり実施してからという言葉を信じて待ち続けました。当面は、学校給食専用に使用する予定です。実際に運行させながら最適な利用方法を見極め、効果的に増車していきたいと考えています」



また物流部の長瀬次長は、エルフEVの運行状況について、次のようにお話しされた。

「現在学校は夏休みなので、土日を除く5日間、総菜を運ぶ地場配送で使用しています。運行距離は1日130キロほど。乗務している女性ドライバーからは、とても静かで運転もしやすい、と報告を受けています。今後は環境への取り組みの一つとして、社外にも積極的にアピールしていきたいと考えています」
グループの成長を支える物流体制を進化させる
2029年度までには営業収益1兆円超を達成したいという小池社長。最後に今後の展望についてお話しを伺った。
「グループの連携を密にしていく中で主要事業の競争力を高め、関西エリアへの新規出店や地域一番店への挑戦を進めてまいります。そのためには、グループの成長を支える物流体制をさらに進化させていかなくてはなりません。物流はサービス業であり、行きつくところ“人”が一番の経営資源です。人材をしっかり育成し、日々の改善を実行できる現場力を高めてまいります」
物流を重要な経営資源として活用し、製造小売業としてグループを成長させてきた小池社長。今後も自身の知見と培ってきた経験を活かし、その経営手腕を遺憾なく発揮していくことだろう。バローグループは、製造小売業の新たなステージに降り立とうとしている。
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