緑茶飲料市場を開拓した国内のトップメーカー



1966年に設立された株式会社伊藤園は、家の外でも急須でいれたお茶を楽しむという新たなスタイルを創造した茶業界のパイオニアである。1966年にどこでも気軽にお茶を購入できるよう、お茶の葉を小分けにして梱包するパック茶を発売したことを皮切りに、1980年には、世界初の無糖茶飲料として「缶入りウーロン茶」を発売。また1984年には、お茶の変色や香りの変質を防止する「T-N(ティー・ナチュラル)ブロー技術」を開発し、世界初の「缶入り煎茶」(1989年に「お~いお茶」へ名称変更)を世に送り出した。1990年には、お茶飲料のペットボトル化(世界初)に成功。1996年には、微細なオリや沈殿物だけを除去する「ナチュラル・クリア製法」の特許を取得した。当初、無糖茶飲料は販売に苦戦したものの、同社の地道なマーケティング戦略により次第に売上は増大。現在、同社を代表する緑茶飲料ブランド「お~いお茶」は、2022年8月に累計販売数量400億本を突破し、緑茶飲料市場において年間シェアNo.1を獲得し続けている。
また同社では、リーフ製品及び茶系飲料に加え、ノンカフェイン飲料の「健康ミネラルむぎ茶」や「TULLY'S COFFEE」ブランドで知られるコーヒー飲料、「1日分の野菜」などの野菜飲料、炭酸飲料、果実飲料、ミネラルウォーターなどの製品開発、販売も手がけている。

そんな同社グループには、創業以来掲げてきた経営理念があるそうだ。「お客様第一主義」である。事業活動を通じて、お客様に健康で豊かな生活を提案すると共に、安心してご利用いただける製品、サービスを提供し続けてきた。同社は、事業に関わるすべての人々をお客様と位置づけ、それぞれの意見や要望に真摯に向き合い、つねにお客様の視点で事業活動を行っている。
- 会社名
- 株式会社伊藤園
- 所在地
- 東京都渋谷区本町3-47-10
- 設立年月日
- 1966年8月22日
- 代表者
- 代表取締役社長 執行役員 本庄 大介
- 従業員数
- 5,205名単独
- 保有車両台数
- 3,350台
つねにおいしさを求めて独自の開発、生産体制を構築
茶系飲料を中心に飲料製品を提供する同社だが、製品企画、開発は自社で行うものの、製造自体はグループ外の製造工場へ委託する「ファブレス方式」を採用しているという。広報部副部長の古川正昭氏に茶系飲料の生産体制についてお尋ねした。

「当社は、国内荒茶生産量の約4分の1を取り扱っています。お茶の味や香り、品質の決め手となる原料茶葉の仕上げ加工『火入れ工程』については、自社工場(静岡県、兵庫県)で行っており、荒茶は委託している飲料製造工場に出荷。製造工場は全国に50工場以上あります。当社は、ドリンクメーカーとしては後発だったので、すでに技術と設備を持つパッカーさんに製造を委託しています。現在、生産と物流は全国5ブロックに分けており、柔軟かつ迅速に製品を安定供給しています。そうすることで、事業のコアとなる製品開発に経営資源を集中することができます」
同社は独自の開発、生産体制を築き上げる中で、つねに原料の茶葉から製造に至るまで品質にこだわった製法を追求。なお製品の品質を維持するため、マーケティング本部は、日々全国の製造工場から製品を取り寄せて、規定の基準を満たしているか厳密にチェックしているそうだ。
地域密着型営業の「ルートセールス」が強み
同社の特徴として挙げられる点がもう一つある。それは地域密着型の「ルートセールス」である。各営業支店の営業担当者が担当エリアのお客様(一般小売店・自動販売機設置施設等)を訪問して製品を納品。また新製品の商談をはじめ、製品の陳列やキャンペーンなどの提案、新規顧客開拓まで行うという。お客様との信頼関係を構築するための営業スタイルであり、同社の経営理念である「お客様第一主義」が根づいていると言えるだろう。

「社員自らがお客様を直接フォローする営業スタイルを実践しているので、市場の多様なニーズをダイレクトに汲み取ることができます。これは当社の強みとも言えますね。地域密着型の営業は、業績を左右する重要な業務と位置づけており、多くの社員が営業職を担当しています」
と説明されたのは総務部長の栄永浩士氏。ちなみに同社では、職種に関わらず全社員が新製品や販売促進などの提案ができる「Voice制度」が設けられているとのこと。社員の自発的な気づきを大切にしている。
「エルフEVボトルカー」を都内営業支店に導入
無糖飲料の需要が拡大する中で業績を伸ばしてきた同社は、さらなる競争力強化と持続的な成長に向けて、サステナビリティ経営を推進。7つのマテリアリティのうち環境への取り組みの一つとして「全車両中の電動車導入比率を2030年度までに50%とする」と中長期環境目標に掲げ、2023年10月より業界初となる「エルフEVボトルカー(茶殻配合軽量パネル搭載型)」を導入した。「エルフEVボトルカー」は、CO2排出量の多い都市環境の改善に貢献できる東京地区の営業支店(12支店)に計2 7台が配置されている(2024年3月現在)。総務部車輌課長の栗原政伸氏に「エルフEV」を選ばれた理由を伺うことができた。

「以前からボトルカーとしてエルフを導入していますが、都市で活動しやすい2トン車がラインナップされていることが決め手となりました。もちろん、航続距離も問題なく、現在は1日または2日に1回の普通充電で大丈夫です。実際に乗務している営業社員からは、従来のディーゼル車とほぼ変わらない操作性、すぐれた走行性能、充実した安全性能が好評です」

1運行(都内)約30km/充電は1日または2日に1回
スライドドアなどに茶殻配合軽量パネルを採用



また「エルフEVボトルカー」には、ボディの軽量化を図るため「茶殻配合軽量パネル」が採用されており、電費向上を実現している。併せて、荷室内に空容器の収納スペースを確保。屋根昇降及び高所作業をなくすことで、社員の業務負荷を軽減する仕様となっている。

健康価値を創造する世界のティーカンパニー
最後に同社の今後の展望について古川副部長にお話しを伺った。
「当社は『健康創造企業』をミッションとして掲げており、今後も事業活動を通して『心身の健康』『社会の健康』『地球環境の健康』の価値を創造し、お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会を実現してまいります。また緑茶は健康的な飲料として世界的に注目されていますので、当社は長期ビジョンである「世界のティーカンパニー」をめざす中で、新たな茶市場を切り拓き、多くのお客様に愛飲されている『お~いお茶』のグローバルブランド化を進めていきたいと考えています」

すでに「お~いお茶」ブランドは海外の40の国と地域で展開。今後は米国、アジアに続いて、欧州においても販路を拡大していくという。日本の伝統飲料である緑茶のおいしさや健康性といった価値が世界中に広がるのも、そう遠くはない未来なのかもしれない。

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