株式会社中山運輸

物流の新たなステージはDXと人材戦略で切り拓く

北九州エリアに独自の物流ネットワークを有する株式会社中山運輸は、2023年12月、創業60周年を迎えた。多様な顧客ニーズに応えて、付加価値の高い物流サービスを提供できるところが同社の強みである。
近年は次代を見据えてDXを推進すると共に、独自の人材戦略によって、若い人材を確保。総合物流企業として、さらなる成長をめざしている。
※掲載内容は2023年12月1日取材時点のものとなります

総合物流企業へ躍進 60年間の信頼と実績

2023年12月、創業60周年を迎えたという株式会社中山運輸。創業当初は、手積み手下ろしで建設資材などを運んでいたそうだ。転機は間もなく訪れる。近隣に整備された東部工業団地に、様々な企業が誘致される中で、同社は梱包資材や空缶、製紙、飲料などの輸送業務を受注。また、これを機に自社倉庫(一時保管・荷捌き用)の運営も開始する。その後も建設用薬品や半導体などの輸送も手がるなど、同社は順調に事業を拡大していった。

1990年代に突入すると、さらに同社にビジネスチャンスが到来する。工業団地に自動車部品の工場が進出したのだ。先代社長の中山光吉氏の指揮のもと積極的に売り込みをかけたことも功を奏し、自動車部品の保管、輸送業務を獲得することができたという。後に、この仕事は、同社が総合物流企業へと躍進する大きな礎となる。現社長の中山博樹氏は、当時を振り返りながら次のように語られた。

「自動車部品・ユニット(構成部品)、関連資材の輸送を契機に車両を増車。100台ほどだった車両は一気に200台を超えました。その後、保管業務や流通加工(ピッキングやアッセンブリ等)といった付加価値の高い物流サービスも提供。専用の物流センターを稼働させました。これを足がかりに倉庫事業を拡大し、北九州エリアに独自の物流ネットワークを構築。倉庫だけで7拠点を運営しており、保有スペースは約65,880m2に及びます。売上高は、自動車関連が約60%(グループで約50%)を占めていますが、創業時からのお客様とも途切れることなくお取引を続けています」

こうして県内でも有数の総合物流企業へと成長を遂げた同社。その他の事業としては自動車整備事業(民間車検場、整備、自動車販売等)や燃料販売事業(GS)を運営。さらにグループ会社として運送会社(ダンプ、コンテナ等)をはじめ、建設会社(造成工事等)、航空会社(医療搬送、遊覧等)、飲食店(創作料理)などを展開している。

会社概要
代表取締役 中山 博樹 氏
会社名
株式会社中山運輸
所在地
佐賀県三養基郡上峰町大字坊所2383
設立年月日
1966年9月(創業1963年12月)
代表者
代表取締役社長 中山 博樹
従業員数
430名
保有車両台数
230台
中山運輸の従業員の皆様(本社営業所:佐賀県三養基郡みやき町)
中山運輸の事業体制

付加価値の高い物流サービスを提案

同社の強みは、北九州から全国各地まで運行できる輸送力はもとより、付加価値の高い物流サービスにある。長年にわたり集荷から保管、流通加工、配送までフレキシブルに対応できる設備を整備し、人材を育成し、ノウハウを培ってきた。特に主要事業の自動車部品輸送においては、保管のみならずアッセンブリ代行サービスを提供している。流通プロセスは、自動車部品向けの資材を集荷・保管して必要に応じて部品メーカー(佐賀)に供給。各種部品を集荷して、自社倉庫でユニット(構成部品)に組み立てる。検品後、ユニットを自動車メーカーの工場(大分、愛知、静岡)などへ納品するという流れだ。担当する作業員数は総勢150名。同社の迅速、丁寧、確実なアッセンブリ代行サービスは顧客からも高く評価されており、現在は複数の自動車部品(エアバッグ、コンソールボックス等)を取り扱っているそうだ。また中山社長は、一連の物流サービスを提供するようになってから運賃形態も変更したという。

「そもそもアッセンブリ代行サービスは、複数の部品を、その都度運ぶよりも、当社で組み立てて運んだ方が効率的で、コストダウンにつながる、と提案したことから始まりました。また同時に自動車の生産は波があり、少量ロットの発注も少なくないため、運賃も車建てから個建てに変更。両社にとってメリットを生む仕組みが、安定した質の高い物流サービスの提供につながると考えています」

自動車部品の集配・輸配送(アッセンブリ含む)体制 佐賀県を中心に北九州エリアに独自の物流ネットワークを構築。集荷した資材は部品メーカーに供給。完部品を集荷し、自社倉庫でユニット(構成部品)に組み立てて、主に北九州エリアの自動車メーカーの工場へ納品。(一部は近畿・中部・東海)
ギガトラクタ(4×2)
本社営業倉庫

DXで「2024年問題」に対応

同社は、ビジネス環境の変化に対応するため、数年前から取り組んできたことがあるという。それが社内の生産性向上を目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進だ。デジタル技術を導入し、事務処理の効率化や業務の改善、組織の活性化を図ってきたという。例えばデジタコの運行データは、すべてクラウド上で一元管理。燃費、走行距離、車両の修繕費、従業員の勤怠、労働時間などのデータを数値化して分析。「2024年問題」対策にも役立てているという。

専務取締役 中山 秀之 氏

「数値化することで問題点を明確にし、運行の効率化を推進。自社の取り組みだけでは改善できない場合は、お客様に具体的な待ち時間や納品回数を提示するなど、労働時間の短縮にご協力いただいています。数値化して根拠を示すと、お客様の理解も得やすくなるというメリットがあります。実際に運行体制(出荷・納品時間、納品回数の変更等)やリードタイムの延長などにご理解をいただいており『2024年問題』の解決に向け、荷主様と共に取り組んでおります」

と語られたのは、専務取締役の中山秀之氏である。最近は、事故データも数値化して、事故や違反の発生状況や傾向を分析するなど、ドライバーの安全運転指導にも効果を上げているという。ちなみに同社では“Bad News Fast”(良いニュースよりも、悪いニュースをいち早く報告)が社内ルールとして定着している。故障や事故などの情報は、数十分以内にメールで全社員に共有化されるという。リスクを伴う情報伝達が遅れると、物事をより深刻化させる可能性が高まり、判断を誤る、あるいは決断が遅れるからだという。

運行管理データを省燃費運転や事故防止などに活用。
ドライバーと情報を共有化。
各種資格・免許を支援
(大型/フォークリフト/運行管理/衛生管理等)
航空事業のノウハウを活かしたドローン
物流を検討中

次代を担う若い人材を増員

現在、同社はDXの推進と並んで、若い人材の雇用と人材育成にも注力しているという。中山専務は、この先も事業活動を続けていくためには人材の若返りが必要であり、付加価値の高い物流サービスを提供していくには、次世代を担う人材育成が欠かせないと話す。

「現在は、主に学卒者や高校新卒者を対象に人材を確保しています。採用業務に精通した専任者を雇用し、雇用・勤務条件を見直すと共に、募集情報の発信方法や見せ方なども刷新したほか、企業イメージを訴求した動画も制作して当社のWebサイトやYouTubeで公開しました。人材育成では、各種資格・免許取得支援制度(費用100%会社負担)を導入。また、応募者の約7割が業界未経験者ということもあり、教育・研修制度を充実させ、入社後の不安を解消できるようにしており、今後は女性も積極的に雇用していきたいと考えています」

さらなる発展をめざして新規事業にも挑戦

多様な顧客ニーズに応えることで、総合物流企業として確かな事業基盤を築き上げてきた同社。中長期を見据えたDX化の推進、人材戦略など、これからも、さらなる成長が期待される。

専務取締役 中山 秀之 氏

「これからは、売上高も重要ですが自社原価を把握して利益を上げられる事業でなければ、過渡期にある働き方改革を進めていくことができませんからね。一方で、新たな物流の仕組みづくりや新規事業への挑戦も欠かせません。すでに、長距離輸送における『中継輸送』(広島で単車の相互乗り継ぎ)は、提携する協力会社と2015年より実施しております。 さらに、航空事業のノウハウを活かしたドローン物流への参入や、車両の運転業務、倉庫作業の自動化など、これからも自ら限界をつくらず、あらゆる可能性に挑戦していきたいと考えています」

と中山社長、最後に創業60周年を記念して、新しいカラーリングの車両を導入したと話された。純正ホワイトを基調に洗練されたカラーリングを採用したギガは、これからも顧客の信頼に応え、そして人々の生活と経済を支えるため、今日も大地を力強く走り続けている。

2023年12月に創業60周年迎え、車両の新しいカラーリングを発表

※掲載内容は2023年12月1日取材時点のものとなります

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