伊藤忠メタルズ株式会社 × 岸和田製鋼株式会社・株式会社岸鋼物流

次代を見据えて強固なパートナーシップを構築

“メタルの総合商社”伊藤忠メタルズ株式会社。鉄スクラップを原材料として鉄鋼製品を製造する岸和田製鋼株式会社。そして、その製品の物流を担う株式会社岸鋼物流。
重要なビジネスパートナーである3社は、共に業務の効率化に取り組む中で「2024年問題」に対応。さらに、電気炉が注目される鉄鋼業界の発展にも寄与する。
※掲載内容は2023年12月1日取材時点のものとなります

鉄スクラップを安定供給する“メタルの総合商社”

1956年に設立された岸和田製鋼株式会社は、建築資材の異形棒鋼「KISI-CON」や半製品の普通鋼ビレットを製造する電気炉メーカー。建築物の解体スクラップなどの鉄スクラップを原料に、月産約6万トンの製鋼・圧延一貫生産体制を構築している特定荷主であり、鉄筋の生産量においては、業界トップクラスを誇っている。また、環境対応型高効率アーク炉「ECOARC(エコアーク)」を世界で初めて導入。高品質な製品を安定的に市場に供給している。

半製品の普通鋼ビレット
建築資材の異形棒鋼「KISI-CON」
会社概要
代表取締役社長
鞠子 重孝 氏
会社名
岸和田製鋼株式会社
所在地
大阪府岸和田市臨海町20番地
設立年月日
1956年12月
代表者
代表取締役社長 鞠子 重孝
従業員数
250名
製品倉庫(岸鋼物流)

岸和田製鋼グループの物流全般(保管・入出庫・生産計画等)を担うのは株式会社岸鋼物流である。前号(vol.257)では、製品・半製品の輸配送業務を委託する運送会社と連携して「2024年問題」を解決してきた取り組みについて紹介した。そこで今回は、物流の川上にあたる「調達物流(原材料の仕入れ)」の動向や展望、荷主視点の「2024年問題」などについてお話しを伺った。

会社概要
取締役
菅 宏樹 氏
会社名
株式会社岸鋼物流
所在地
大阪府岸和田市臨海町20番地の39
設立年月日
2021年10月26日
代表者
代表取締役社長 鞠子 重孝
従業員数
44名
原材料の鉄スクラップは、建設廃材などがリサイクルされている。

岸和田製鋼に鉄スクラップを供給する伊藤忠メタルズ株式会社は、伊藤忠商事グループの中核事業会社として、国内外で非鉄金属製品や原料を販売すると共に、鉄スクラップなどのリサイクル事業を展開。さらに、顧客の多様なニーズに合わせたマーケティングの提案、サプライチェーンマネジメントをはじめとするロジスティクス機能の提供、非鉄・金属及びその周辺マテリアルの新規商品の開発を手がける“メタルの総合商社”として、川上から川下まで多彩な商品・ネットワークで国内外を結び、総合的なソリューションを提供している。今回、岸和田製鋼の鞠子社長や岸鋼物流の菅取締役と30年来のお付き合いだという伊藤忠メタルズの執行役員 金属原料事業部長(兼)大阪支社長を務める秦康司氏にお越しいただき、岸和田製鋼との取引状況についてお話しを伺った。

「岸和田製鋼様へ納めている原材料は、主に建物などを解体した市中老廃スクラップと呼ばれるもので、回収後、鉄鋼原料として使いやすい形状に加工(圧縮・切断・粉砕等)してから納入しています。当社は、全国100社以上のスクラップヤードディラー(金属リサイクル処理会社)様と取引関係にあり、岸和田製鋼様へは、リードタイムやコストに配慮して、主に関西地域から仕入れて納入しています」

会社概要
執行役員
金属原料事業部長(兼)大阪支社長
秦 康司 氏
会社名
伊藤忠メタルズ株式会社
所在地
東京都港区北青山2丁目5番1号 伊藤忠ビル
設立年月日
1967年9月
代表者
代表取締役社長 中谷 次克
従業員数
233名
伊藤忠メタルズ本社(東京都・伊藤忠ビル内)

重要なビジネスパートナーとして

現在、国内で余剰となった鉄スクラップは、鉄鋼需要のあるアジア市場などへ輸出されているという。しかし、鉄スクラップは生産品ではないため、市況の影響を受けやすく、計画的に確保することは難しい。秦執行役員に、あらためて鉄スクラップの供給体制についてお尋ねした。

「見た目ではわかりづらいですが、鉄スクラップには種類や特性があり、またお客様によってニーズも異なります。したがって当社では、お客様やお取引先様と信頼関係を築き、つねに正確な情報(備蓄量、納期、品質等)を収集。需給のバランスを把握することで、鉄スクラップの安定供給につなげています。当社では、お客様の期待に応えると共に価値を提供し続けることで信頼を獲得。このことが継続的なビジネスにつながると考えています」

もちろん、経営理念に「鉄スクラップの可能性を追求する」と掲げる岸和田製鋼も、伊藤忠メタルズを重要なビジネスパートナーとして位置づけている。

「鉄スクラップは当社の生命線であり、伊藤忠メタルズ様からは、鉄スクラップのほか、生産過程で欠かせない副資材も供給していただいています。当社の要望もよく理解していただいており、伊藤忠メタルズ様とは一心同体の間柄と考えています」と語られた鞠子社長。また岸鋼物流の菅取締役は、物流業務の一環として、今後は調達業務も積極的にサポートしていきたいと話された。

「2024年問題」対策のキーワードは物流の効率化

ドライバーの時間外労働960時間の上限規制の発動まで残り半年を切った。当然のことだが、これは荷主企業の協力なくして解決することはできない。前号でも紹介したが、岸和田製鋼では「2024年問題」が注目される以前から、物流業務の効率化を図ることで運行時間の短縮を実現。鞠子社長は、時代の変化や顧客の要望に応えるため、積極的に組織改革や設備投資を行ってきたという。

製鋼工場(岸和田製鋼)

「輸送部門は、事業の合理化を目的にアウトソーシング化。2022年には物流部門も完全分社化しました。専門性や人材力の強化、設備投資によって、物流業務の効率化を図るためです。具体的には、圧延工場から倉庫へ製品を搬入する自動搬送システムを導入することで横持ち輸送を撤廃。さらに、各倉庫にリフティングマグネットクレーン(10トン吊り)を配置し、庫内の作業効率を高めました」

また、物流現場を取り仕切る菅取締役は、物流子会社としての取り組みについて次のように説明された。

「倉庫間もコンベアで製品を搬送できるので、フレキシブルに保管場所や庫内のレイアウトを変更しています。また特注の「SWAP車両」(トレーラ)を運送会社とタイアップして導入(現在16台が稼動中)。前日に製品を積み置きしておくことで、荷待ち、積み込み時間を短縮しました。さらに、数年前から独自に開発した輸配送・保管システム『どこでも配送』や『どこでも倉庫』を活用して、輸送状況等在庫情報を一元管理。迅速で的確な配車を実現しています。同時に協力運送会社との関係強化にも取り組んでおり、定期的に安全会議を実施。現在は、2024年4月に始まる労働時間の上限規制に向けて運行体制の見直し、運賃の改定なども進めています」

製品倉庫/リフティングマグネットクレーン(岸鋼物流)

一方、秦執行役員は、商社の強みを活かして「2024年問題」に対応したいという。

「これを機に物流業界も働き方改革が進み、物流コストの上昇やリードタイムの延長が予測されるため、当社では、鉄スクラップのストックヤードの確保に加え、ロジスティクス機能の強化に取り組んでいます。鉄スクラップは、迅速な入荷を求められるケースが多いので、お客様と密にコミュニケーションをとりながら最適化をめざしていきたいと思います。商社の強みを活かして、物流の効率化に貢献できるように努めてまいります」

鉄鋼業界の発展に寄与

大阪市の人工島「夢洲」では、2025年4月に「大阪・関西万博」が開催され、2030年にはカジノやホテル、国際会議場などを併設した一大エンターテインメント施設が開業する予定である。さらに周辺地域には、宿泊施設の建設やアクセス手段の整備も進む見込みで、鞠子社長は鉄鋼需要の拡大に期待しているという。

「一時的に注文や出荷が集中しても生産及び入出荷できるように、しっかり準備を進めてまいります。また当社は、これからも即断かつ柔軟な応対力で職務を全うし、環境負荷の少ない高品質な製品づくりに邁進していく所存です」

また秦執行役員は、この先の見通しについて次のように語られた。

「万博では“ 持続可能な未来の構築”がテーマに掲げられていますが、当社も資源である鉄スクラップを市場に流通させることで、持続可能なものづくりを支えてまいりました。今後も商社系鉄スクラップリサイクル業の特徴を活かして、お客様の多様な鉄鋼製品づくりに貢献していきたいと考えています」

近年“脱炭素”に向けた取り組みの一環として、高炉に比べてCO2排出量を抑えられる電気炉が注目されている。それに伴い原料となる鉄スクラップの需要も高まることが予想される。こうした背景もあり、伊藤忠メタルズと岸和田製鋼グループの協力関係は、鉄鋼業界の発展にも大いに寄与するものと期待されている。

※掲載内容は2023年12月1日取材時点のものとなります

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