株式会社岸鋼物流

協力運送会社と共に「2024問題」対策も万全

大阪府岸和田市の臨海部、大阪鉄工金属団地に拠点を構える株式会社岸鋼物流は、岸和田製鋼株式会社の物流子会社として、グループ企業の物流業務を担ってきた。
また、早くから協力運送会社と信頼関係を構築し「2024年問題」へも積極的に対応。
これからも物流企業としての専門性を活かしながら、グループの事業活動を支えていく。
※掲載内容は2023年10月1日取材時点のものとなります

チャレンジし続ける岸和田製鋼グループ

大阪府の泉南地域(南部)に位置する岸和田市は、勇壮な「だんじり祭」で知られ、今も城下町の面影を残す歴史・文化が共存する街。一方、臨海部の埋立地には、大阪鉄工金属団地(約10万坪)が建設され、敷地には40社以上の金属、機械関連の企業が集結。同市を工業都市へと発展させてきた。

その工業団地の一区画に岸和田製鋼株式会社がある。1956年に設立された同社は、鉄筋コンクリート用棒鋼などを中心に製造する電気炉メーカーであり、最新鋭の設備と職人技を融合させた製鋼・圧延一貫生産体制(月産約6万トン)を構築。半世紀以上にわたり高品質な製品を社会に提供し続けてきた。主な製品は、鉄筋コンクリートの芯材として利用される異形棒鋼「KISI-CON(ブランド名)」や鉄鋼半製品の「普通鋼ビレット」(海外輸出)。ことに異形棒鋼においては、関西ナンバーワンの生産量を誇るという。また同社は、鉄筋を補強・固定する「せん断補強筋」や「機械式定着板」などを製造、販売する株式会社岸鋼加工や、ボルト、ナット、小ねじ、スプリングワッシャなどを設計・開発、製造する岸和田ステンレス株式会社など、優れた加工技術も有する鋼材加工メーカーを傘下に収めている。

そして、この岸和田製鋼グループ全社が製造する製品の物流業務を一手に引き受けているのが、物流子会社の株式会社岸鋼物流だ。同社は、棒鋼の生産・在庫・納期の管理から製品の入出庫保管業務、国内・海外輸送の手配に至るまでトータルに物流業務を担っている。これにグループの不動産管理、庶務などを行う株式会社岸鋼興産を加えた5社によって、岸和田製鋼グループは形成されている。

同じ敷地内(大阪府岸和田市)にある岸和田製鋼本社(写真左)と岸鋼物流本社(写真上)
物流倉庫(岸鋼物流)
製鋼工場(岸和田製鋼)

グループを牽引してきたのは、代表取締役社長を務める鞠子重孝氏である。1997年に社長に就任した鞠子氏は、手始めに工場の設備投資に着手したという。今後の国内建設需要の低迷や、国内外で同業による競争が激化することを見越してのことだ。付加価値の高い製品づくりをめざすことが急務と考えた鞠子社長は、2001年に鋼材を高効率で再生させる電気炉「ECOARC」を世界で初めて導入する。高品質で安定した製品供給を実現した新型の電気炉は、CO2排出量の低減にも貢献するという。さらに直近では、鉄筋加工事業を成長戦略の柱と位置づけ、新工場の「ちきり工場」を竣工。既存の加工事業に加え、地上の建築物を支えたり、軟弱な地盤の強度を高めたりする杭として地中に埋める鉄筋かごの製造を国内電炉メーカーで初めてスタートさせた。今後は、定着板や機械式継手の製造・販売、異形棒鋼の精密切断加工など、より付加価値の高い新事業への展開も加速させる方針である。

会社概要
代表取締役社長 鞠子 重孝 氏
会社名
株式会社岸鋼物流
所在地
大阪府岸和田市臨海町20番地の39
設立年月日
2021年10月26日
代表者
代表取締役社長 鞠子 重孝
従業員数
44名

まさに中興の祖として、技術の研鑽、新製品の開発、高品質な製品づくりに邁進してきた鞠子社長。今までチャレンジの連続だったと話す。

「リスクが伴っても、チャレンジすることを止めてはいけません。仮に誰かが失敗したとしても、咎めることはありません。失敗には学びがありますからね。むしろ失敗を恐れて、何もしない、考えないことの方が恐ろしい。企業は成長の歩みを止めてはいけないのです」

高度な受注・在庫管理体制

鋼材に特化した物流企業として、法令を遵守し、環境負荷にも配慮しつつ、グループ企業の製品を安全かつ確実に運んできた岸鋼物流。「必要なものを」「必要なときに」「必要なだけ」のジャストインタイムのデリバリー体制を構築すべく、専門的に物流管理の企画・設計・運営を行う3PL企業をめざしているという。自社倉庫は、A~F棟及び日建倉庫の7棟(17,000㎡)を保有しており、隣接する圧延工場から直送された製品をリフティングマグネットクレーン(10トン吊り)で各倉庫に規格や大きさ(径・長さ)ごとに分類して収納。A~F棟の天井には、錆の原因となる結露を防止する大型シーリングファン(16基)を設置し、外観品質の維持管理に努めているそうだ。車両は1日に約60~70台が入庫して、近畿2府4県を中心に全国各地に製品を届けている。

物流業務は、生産計画・指示や在庫管理、営業(CS訪問)などを行う受渡課、入出庫作業や製品の品質管理、現物棚卸・報告などを行う作業課、受注確認や車両手配・運送指示、輸出業務などを行う業務課の3部署で分担しているという。注目すべきは、棒鋼の生産スケジュールを毎月立案し、工場へ製造指示を出す役割を担っていることだ。極めて精度の高い受注・在庫管理を行っていることが伺える。

協力運送会社とWin-Win

ところで同社は車両を保有していない。車両は、協力運送会社約30社(海上輸送会社を含む)に依頼しているそうだ。協力会社には、業務内容を網羅した輸送マニュアル(毎年改訂)を配布すると共に、年2回「安全会議」を開催し、安全意識の高揚、事故事例の共有化などによって事故防止に努めてきた。また、Gマークの取得を奨励しており、現在は全社が取得済みだという。岸鋼物流の菅取締役は、協力運送会社との信頼関係構築について次のように語られた。

取締役 菅 宏樹 氏

「従業員には、協力運送会社は顧客と思って対応するように指導しています。安全会議では、しっかり意見交換を行って、Win-Winの関係を築き上げてきました。また、独自に開発した輸配送・保管システム『どこでも配車』と『どこでも倉庫』により、在庫を正確に一元管理し、迅速で的確な配車(倉庫内での車両管理)を実現しています」

対して北斗運輸株式会社の川井田社長は、倉庫作業員の迅速で確実な仕事ぶりに感謝しているという。

「ドライバーに負担がかからないように、いつもバランス良く迅速に積み付けしてくれます。もちろん、対応も非常に丁寧です。また待機時間の短縮など、ドライバーの労働時間の短縮に向けた取り組みについても協力的にご相談いただいています」

すでに「2024年問題」をクリア

待機時間の対策としては「SWAP車両」を効果的に活用しているという。「SWAP車両」とは、同社が協力運送会社とタイアップして導入している荷台で、トレーラの切り離しが可能なセミトレーラ輸送のメリットを活かした運行体制を構築している。具体的には運行の前日までに「SWAP車両」に積み込みを完了させておくことで、1運行につき約1.5時間、ドライバーの拘束時間(荷待ち・積み込み時間)を削減することができる。すでに協力運送会社では16台の「SWAP車両」が稼動しているそうだ。有限会社さくら物流の田中社長に「SWAP車両」の導入効果についてお話しを伺った。

「当社は『SWAP車両』を導入することで、ドライバーの労働時間を大幅に短縮。また、待ち時間が削減できた分、他の仕事に車両を回せるので収益が向上しました。その利益はドライバーの待遇改善に役立てています」

また、すでに7台「SWAP台車」を導入しているという有限会社北星運輸の安田取締役にも、お話しを伺うことができた。

「最大のメリットはドライバーの拘束時間が大幅に削減できたこと。『2024年問題』もクリアすることができました。また『SWAP車両』は、岸鋼物流様から購入費用の融資が受けられるので、資金繰りで苦労することもありませんでした」

鋼材の輸配送業務を担う協力運送会社の皆様
(写真左から)
北斗運輸(株) 代表取締役 川井田 洋市 氏
(有)北星運輸 取締役 安田 寛 氏
(有)さくら物流 代表取締役 田中 忍 氏
(写真右)
(株)岸鋼物流 取締役 菅 宏樹氏

さらなる飛躍をめざして

「2024年問題」の課題となっていた長距離輸送では、中継拠点(外部倉庫)を設けると共に、「SWAP台車」を活用。さらに、内航のRORO船を活用するモーダルシフト化によって、車両の滞留時間を確実に短縮してきたという同社。つねに先を見据えて事業活動を進めてきた鞠子社長に、中長期的な目標についてお話しを伺った。

「人口減少により、この先は、ますます建設需要が縮小する見通しです。同時に人手不足も深刻化するでしょう。つまり、これからは手作業の配筋作業を省力化しつつ、品質・精度の安定した施工が求められることになります。当社は、鉄筋加工に注力する中で、製品のユニット化を進め、製品の差別化を図っていきたいと考えています。もちろん、これらの製品を効率的に運ぶことも視野に入れていかなくてはなりません。自社で開発した管理システムの技術革新に加え、次の世代を担う人材の確保、育成に取り組んでまいります」

すでに、自社の課題を明らかにし、進むべき方向性を確信した鞠子社長は、これからも即断かつ柔軟な応対力で“鉄”の潜在能力をさらに引き出し、岸和田製鋼グループを飛躍させていくことだろう。

取材にご協力いただいた(株)岸鋼物流の社員の皆様

業務部 受渡課 課長
柳田 翔平 氏
業務部 作業課 課長
中岡 克弘 氏
業務部 作業課 副長
石田 恭嗣 氏
業務部 業務課 課長
田中 健策 氏

※掲載内容は2023年10月1日取材時点のものとなります

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