十勝地域トップクラスの輸送力で経営基盤を強化
北海道の中央南部に連なる日高山脈を背に、十勝平野の中央部に位置する芽室町。人口は約18,000人。町の基幹産業は、肥沃な大地と国内有数の晴天率の高さ、寒暖差のある気候条件を活かした大規模な畑作農業である。小麦やてん菜(砂糖大根)、馬鈴薯、豆類、スイートコーンなどの畑作が盛んで、道内有数の生産地として知られている。また芽室町には、農産資源を活用した食料品製造業も多く進出。さらに、十勝地方の中心都市である帯広と隣接していることから、物流拠点として立地の良さも兼ね備えた町である。
株式会社共和貨物自動車の創業は、1961年12月のこと。十勝地域東部の浦幌町で有限会社厚内小型を発足したところから始まる。その後、現社長の白間憲二氏が入社。1968年に現在の共和貨物自動車と商号を変更した。白間社長は、当時のことを振り返りながら、次のように語られた。
「会社を設立したのは父と母です。ところが、早くに父が亡くなったため、兄(白間信一氏)が会社を引き継ぎました。当時、私は、自動車短大を卒業して、札幌で整備士として働いていましたが、母から家業を手伝うように請われ、20代半ばに帰郷。以来、兄と共同で事業に携わってきました。その後、経営資源を集中するため鮮魚店は廃業。しばらくは、木材チップの輸送のほか、大手運送会社や倉庫会社の運送業務に従事しました。地元の農作物や農業用肥料、畜産用飼料などの輸送が増え始めたのは1970年頃から。現在は、主に十勝地域で生産される農産物や食品の輸送をはじめ、飼料、肥料、農薬の配送を行っています」
同社は、1982年に帯広営業所を開設。また、その翌々年に本社を現所在の芽室町に移転した。その後、物流ニーズを先取りして、荷捌き用の物流倉庫(第一、第二)を本社敷地内に建設すると共に、産業廃棄物の輸送業務も手がけていく。また、白間憲二氏が社長に就任してからは、積極的に増トン車(25トン積みトレーラ)を取り揃えることで輸送力を増大。収益力を高めることで経営基盤を強化してきた。輸送エリアは、十勝地域を中心に、道央の札幌や小樽、苫小牧方面、釧路、北見、網走などの道東方面など、全道一円の物流に対応している。
現在の新社屋は2013年に完成。そして昨年は、先進の定温物流倉庫を同町に開設した。今年で創業60周年を迎えた同社は、農産物輸送の総合物流企業として、着実に成長し続けている。
- 会社名
- 株式会社共和貨物自動車
- 所在地
- 北海道河西郡芽室町東芽室北1線8-4
- 設立年月日
- 1961年12月
- 代表者
- 代表取締役 白間 憲二
- 従業員数
- 42名
- 保有車両台数
- 36台(トレーラ43台)
農産物の大量輸送に自社車両で迅速に対応
十勝地域において、最も作付面積が広い小麦。国内では、北海道だけで収穫できる、てん菜(砂糖の原料)。そして、十勝の特産品である豆類。特に小豆は、その品質の良さから全国的にも評価が高い農産物である。大規模農家が多数を占める十勝地域では、収穫量が多いことから機械化が進んでおり、出荷ごとの輸送量も多いという。十勝地域では、7月頃から11月までが各農産物の収穫期にあたる。同社では、この収穫期の輸送に加え、翌年の収穫期まで保管された農産物の出荷業務に従事。また、その間に農業用肥料や畜産用飼料、農薬なども配送する。多いときには10トン単位で出荷指示がくるという。
「農産物の輸送は、年間1,000トンほどの小麦からスタート。安全確実な運行をモットーに、輸送サービスを提供する中で取扱量を増やしてきました。現在は、最大で年間2万トンの小麦を運ぶこともあります。お客様がお困りのときに、迅速に運べることが当社の強み。独自の輸送体制を築き上げており、お引き受けした輸送業務の約9割は自社の車両で対応しています」
と語られた白間社長。現在、同社はトラクタ24台と、25トン積みの3軸トレーラ43台を保有。穀物などのバラ輸送に関しては、道内トップクラスの輸送力を誇る。
自社で荷捌き倉庫と定温物流倉庫を運営
一方、同社が荷捌き用の第一物流倉庫(約300坪)を開設したのは、今から30年ほど前のことだという。その後、2002年に第二物流倉庫(約500坪)を建設。肥料や飼料、農薬、農産物(小豆等)の入出荷及び一時保管業務を代行するなど、農業資材や農産物の安定した供給体制を支えてきた。そして、2021年9月に同社は、念願の定温物流倉庫を開設する。白間社長は、倉庫事業について、次のように位置づけているという。
「当社の中長期的な経営計画として、定温物流倉庫の運営を機に本格的に倉庫事業へ参入しました。今後は、輸送業務の付加価値サービスとして、農産物の保管サービスを提供していきたいと考えています」
定温物流倉庫は、3つのスペースに区切られており、開設と同時に砂糖、小豆、米穀を保管。なお、十勝地域で道産米の保管業務を請け負っているのは同社だけだそうだ。
プレイズムは“転ばぬ先の杖”
ところで、同社で導入されている車両は、全車いすゞ車である。創業時からの取り引きということもあるが、白間社長は、車両メーカーを統一するメリットがあるからだと話す。
「車両の整備や代替計画が立てやすく、何かと便宜を図ってもらえますし、メンテナンスを含む車両コストも低減できるところが、車両メーカーを揃えている理由です。もちろん、いすゞ車の耐久性の高さ、乗り心地の良さ、様々な安全装置を高く評価してのことです。道央方面への運行時は、峠越えのルートになるので、優れた制動力を発揮してくれる永久磁石式リターダがドライバーに好評です。また、故障の予兆を検知できるプレイズムは『転ばぬ先の杖』として、非常にありがたい装備ですね。最近の若いドライバーは、運転操作は上手なのですが、エンジン音の変化どころか、パンクしていても気づかないことも少なくありません。プレイズムは、安全運行対策の一つとして、お客様にも説明しています」
また、同社では、以前に利用していたデジタコが更新できなくなるため、昨年から車載システムを「MIMAMORI」に切り替えたそうだ。車両の動態管理をはじめ、省燃費安全運転指導や労働環境の改善、日報作成など多様な機能を備えた「MIMAMORI」は、業務の効率化に役立っているという。その他にも、同社の車両には、ドラレコや車載カメラ、クリンフット(自動車用薬液噴射装置:防疫用消毒)などを全車に導入。今年度は、トラクタを2台導入する予定だという。
従業員と共に地域と共生していける事業をめざす
白間社長の強力なリーダーシップのもと躍進を遂げた同社だが、一つ大きな課題を抱えているという。それは人材の確保と、運輸業界が直面している、いわゆる「2024年問題」だ。白間社長は、時間外労働の上限規制を見据え、すでに、従業員の4週8休(月22日間勤務)を実施。また、事業の収益性を高めることで、適正な賃金体系を維持しているそうだ。福利厚生としては、夏季、冬季、年末ごとのギフト贈呈(鰻、クリスマスケーキ、農協の冷凍食品等)に加え、無事故・無違反のドライバーには、3カ月に1回、表彰の品としてお米券(5kg分)を進呈しているとのこと。さらに、従業員の労をねぎらうことを目的に毎年社員旅行を実施。今年は創業60周年ということもあり、和倉温泉(石川県七尾市)の老舗旅館「加賀屋」に宿泊したそうだ。これからも同社は、働きやすい職場づくりに取り組んでいく方針である。
また白間社長は、農産物を取り扱う総合物流企業として、主要な地場産業である農畜産業の活性化、発展に貢献していきたいと話す。十勝管内に甚大な被害をもたらした2016年の北海道豪雨の際は、多額の私財を町に寄付するなど地域の復興に尽力。白間社長は、事業をとおして、持続的に地域と共生していける物流事業を展開していくという。
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