鹿児島を拠点に橋口グループを形成
昨年6月に設立された株式会社橋口ホールディングスは、運送及び倉庫事業を展開する(株)橋口運輸、(有)ヒガシマル運輸、(有)MIKI物流を傘下に収める持株会社である。同社の代表取締役に就任した橋口美希氏は、グループ各社の強みを活かしながら持続的に成長していけるように、ビジネス戦略や経営計画を立案。橋口グループのけん引役を務めている。
そもそも橋口グループの中核企業である橋口運輸は、1966年に橋口代表の祖父にあたる故橋口信夫氏が鹿児島県日置市で創業した運送会社である。当初は、数台の軽車両で地場の農産物などを運んでいたそうだ。その後、地場の飼料会社や食肉加工会社と専属輸送契約を結ぶなど、順調に事業基盤を固めていく中で、1999年に国道沿いの現所在地に本社を新築移転。これに伴い営業強化と顧客サービス向上を図るため倉庫事業にも本格的に参入。本社敷地内に定温・冷蔵倉庫を開設することで顧客を拡大する。この頃から営業エリアは九州全域に広がった。そして2013年には、関西、関東方面への幹線輸送に対応するため、県外の中継点として、岡山営業所(岡山県美作市)を開設。後に定温・冷蔵倉庫も併設されている。
グループの主な積荷は、食材の宝庫と言われる鹿児島の特産品である。生鳥や食肉(冷凍)、加工食品をはじめ、飲料水、農産品、飼料などを運ぶ。その他では、樹脂原料や資材などの一般貨物も輸送しており、年々取扱量が増えているという。運行エリアは、県内及び九州一円の配送、四国、関西、関東方面への幹線輸送。車両は大型から小型までグループで137台保有、南九州を拠点に独自の物流体制を構築している。
長年、同グループの経理・財務業務に従事してきた橋口代表は、今後は物流事業の実務にも精通し、幅広い視野で事業戦略を策定していく考えである。
- 会社名
- 株式会社橋口ホールディングス
- 所在地
- 鹿児島県日置市伊集院町麦生田410番地
- 設立年月日
- 2021年6月
- 代表者
- 代表取締役 橋口 美希
- 従業員数
- 156名(グループ)
- 保有車両台数
- 137台(グループ)
大型車112台/中型車20台/
小型車5台
岡山営業所はグループの戦略拠点
変化する顧客ニーズに的確に対応することで、着実に事業規模を拡大してきた同社。特に自社倉庫を持ち、集荷から保管、仕分け、配送までワンストップで物流サービスを提供するようになってから、飛躍的に業績を伸ばしてきた。
「商品の保管場所がなくて、お困りだったお客様のために倉庫を建てたのが始まりです。その後、本社に8棟の定温・冷蔵倉庫を建設。さらに、お客様の要望に応えて、岡山営業所においても同様の倉庫を建設しました。現在、岡山営業所は、グループの重要な物流基地として機能しています。近年は、岡山県及び、その近郊のお客様の製品も多数お預かりしています」
と語られたのは(株)橋口運輸の代表取締役社長を務める福島哲二氏。一般貨物から生鮮食品まで積荷の特性や物量、輸送ルート、リードタイムを考慮して、最適な物流サービスを提供できるところが同社の強みである。
ところで、同社には、もうひとつ特徴的な仕事がある。それは鹿児島の特産品である生鳥の輸送だ。創業間もない頃から請け負ってきたという生鳥輸送。現在も、荷室に保冷用のスプリンクラーを装備した専用車両15台を保有しており、生産農家から加工工場まで、県内はもちろん、九州、四国、関西方面からの生鳥を運んでいるそうだ。車両の全面消毒や専用の作業着、帽子、長靴の着用など、厳格な防疫対策が求められるため、ドライバーもベテランが担当している、と福島社長は説明された。
品質、安全、環境領域における3つの経営方針
さて、ホールディングス化による新体制でスタートを切った橋口グループ。具体的に何をめざし、どのように事業に取り組まれていくのか、あらためて橋口代表に、経営方針についてお話を伺った。
「当社が掲げる品質、安全、環境領域における3つの経営方針に基づき、グループにおける統一的な経営戦略を策定。迅速な意思決定のもと、経営資源を有効に活用して、グループのシナジーを生み出していく方針です。また、運送業界が抱える運賃・料金の適正化、ドライバー不足、長時間労働といった課題に対しても、しっかりと向き合い対策も講じていきたいと考えています」
人事制度を見直し物流品質を向上
ホールディングス化への移行に伴い人事制度の見直しを進めているという同社。典型的な労働集約型産業である物流業界では、何よりも人材を確保することが、経営戦略上の最優先事項だからだ。同社では、公平で明確な社内制度を整備すると共に、福利厚生(各種手当て)の充足、職場環境の改善に努めることで、従業員の定着率を高めてきたという。
と語られた橋口代表。もちろん、同社では、人材育成にも注力しており、様々な研修会・講習会(安全運転指導、エコドライブ、車両点検整備等)を実施。多くの優秀な人材を育成することで、物流サービスの質を高めてきた。今後も同社は、物流品質の向上に努める中で、既存の顧客からの受注機会を高めると共に、新たな顧客獲得につなげていきたいという。
- 岡山営業所を起点とした東西への輸送体制を構築。物流拠点として業務拡大を進めている。
- 休憩室を設けた岡山営業所を経由することで、長時間労働となるワンマン運行を削減。コンプライアンスに対応するツーマン運行を可能としている。
代替車両・新車は安全性能で選ぶ
安全への取り組みとしては、グループ各社でGマークを取得済み。運行管理では、早くから24時間(日中・夜間)点呼を実施すると共に、デジタコを活用して、つねに10分単位で運行状況を確認。リアルタイムに車両を把握することで、安全確実な運行を実現している。さらに、近年は、安全運行に配慮して車両の代替年数を10年以内と定めているそうだ。ちなみに、最近は、いすゞ車が増えているとのこと。その理由について、橋口代表は次のように話された。
「当社は、長距離輸送が多いので、安全性能や省燃費性能に優れたいすゞ車に代替することが多いですね。また、静粛性や視認性、加速性に優れ、乗り心地の良いところがドライバーに好評で、こうした点もいすゞ車が選ばれている理由だと思います。それともうひとつ、いすゞ自動車九州さんが、いつも迅速に対応してくださるから。車両を安心して使い続けることができます」
一方、今でも、繁忙期には自らハンドルを握ることもあるという福島社長。自社のドライバーには、わずかでも運転疲労を軽減してくれる車両に乗務させたいと考えている。ちなみに同社では、ドライバーが安心して乗務できるように車両保険にも加入しているそうだ。
カーボンニュートラル、デジタル化による環境対策
最近、同社が注視しているのは、カーボンニュートラル(脱炭素)の動向だという。具体的な取り組みとしては、長距離運行で一部フェリーを活用するなど、モーダルシフトを推進。日常的には、運行データを活用して、アイドリングの削減や省燃費運転などをドライバーに指導しているという。今後は、事務作業や運行管理のデジタル化も進め、さらに運行体制を効率化し、生産性を向上させていきたいという。
- 鹿児島からフェリーを活用することで長時間労働を抑制。
グループがめざす新たな成長ステージ
最後に今後の抱負と事業計画について、橋口代表にお話を伺った。
「物流企業として、多くの人に利便性をもたらし、生活基盤を支えることが、橋口グループに与えられた社会的な使命。これからも、お客様(BtoB)の多様なニーズに応えられるように、適切に物流施設や車両に投資し、グループ一丸となって高品質な物流サービスを提供していきたいと考えています。そのために、私自身も従業員と密にコミュニケーションを取ることで組織の結束力を高め、これまで以上に事業を発展させてまいります。すでに、事業拡充の構想も着々と進めており、年内には岡山営業所に新たな倉庫が竣工する予定です。フレキシブルに活用ができるよう、グループ間での連携を進めていきます」
聞き上手で、発信力もあり、従業員への気配りも忘れない橋口代表。この女性ならではの感性が、組織全体を活性化させ、グループを新たな成長ステージへ導いていくものと期待されている。
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