流通加工から附帯作業、長距離・近郊輸配送まで対応
島根県松江市に本拠を構える株式会社山陰物流サービスは、代表取締役を務める福田克己氏が、物流代行サービスを提供する会社として2003年に設立された。松江市は、山陰地域の中核都市である。地元企業の本社も多いことから、ビジネスチャンスがある、と考えた福田社長は、地域に密着した流通加工会社をめざしたそうだ。当初は、物流代行業務として、印刷物の折り・帳合・封入封緘や製函、シール貼り、ピッキング梱包、発送代行などの各種サービスを提供していた同社。しかし、その翌年には、運送事業へ参入することになる。取引先の紹介で、地元の運送会社を引き継ぐことになったのだ。前職で大手運送会社に勤務していたという福田社長。当時のことを次のように語られた。
「運送業務は、流通加工業務との相乗効果も期待できるため、参入を決断しました。すでに、流通加工と併せて配送もお願いしたい、という依頼が増えていましたので、お客様の要望に応えられるという思いもありました」
こうして同社は、大型車を含む7台の車両を保有し、運送事業を開始する。しかし当時、運送業界は規制緩和の影響で急激に事業者が増加。過当競争に伴う運賃低下の影響で、しばらく赤字が続いたという。福田社長は、ここが正念場と腹を括り、新たな荷主開拓に取り組んだそうだ。すると、1年ほど経過した頃から一般貨物の定期輸送や貸切輸送業務を獲得。関東、関西方面への長距離輸送から近郊の配送業務まで引き受けるようになり黒字化。現在は、信書、機密書類、宅配荷物、家電、家具、電子部品などの輸配送のほか、引越及び事務所移転業務、地元温泉水の輸送、通販のグッズ発送サービスなども行っている。なお、安全確実性が求められる信書の取り扱いについては、365日24時間の輸配送体制を確立しているそうだ。
「当社の営業スタンスとして、依頼された仕事は基本的に断りません。お客様のご要望に対して、社内で知恵を絞り、できる方法をご提案。その結果、現場での積み替えや搬入搬出、設置作業などの付帯業務も率先して請け負うようになりました。特に難しそうな仕事、面白そうな仕事は、絶対に引き受けよう、という気持ちになりますね。お客様に満足いただけるサービスを提供することが、社員のモチベーションを高めています」
と語られた福田社長。また同社では、信書の取り扱いをはじめ、機密文書の保管・廃棄も手がけるため、2016年にプライバシーマークを取得。さらに、昨年12月には、事業を集約して業務の効率化、シナジー効果の拡大を図る目的で、子会社だった運送会社を吸収合併。これを機に有限会社から株式会社へ商号を変更。島根県を拠点に、多様な物流サービスを一括して提供できる事業体制へ強化した。
- 会社名
- 株式会社山陰物流サービス
- 所在地
- 島根県松江市東出雲町錦浜583-19
- 設立年月日
- 2003年8月7日
- 代表者
- 代表取締役 福田 克己
- 従業員数
- 80名
- 保有車両台数
- 61台
安全確実な運行に貢献 「プレイズム」と「MIMAMORI」
実は、同社は今回2度目の登場となる。5年前、新型ギガの導入をきっかけに「プレイズム」や「MIMAMORI」(別途契約)を活用されるようになった、ということで取材に伺ったのだ。以前にも取材に対応いただいた常務取締役の野津直樹氏に、あらためて「プレイズム」と「MIMAMORI」の活用状況についてお話を伺った。
「当時は、車両が増えた時期で、今まで以上に効率的かつ精度の高い運行管理が求められていました。ことに当社の主要業務である信書の輸配送は、運行ルートや発着・到着時間が厳格に定められていましたからね。その点『プレイズム』は、事務所のパソコンで、いつでもエンジンやDPDに不具合がないかチェックできます。これなら、重大なトラブルを未然に防止できますし、さらに『MIMAMORI』を活用すれば、きめ細かな運行管理や、ドライバーの運転指導が実施できると思いました。実際に導入すると、車両コンディションの管理や運行管理が容易になり、しかも効率的に運行管理が行えるようになりました」
現在も継続して「MIMAMORI」を活用しているという同社。出発前及び運行中は、車両コンディション(エンジン・DPD)をチェック。並行して「車両位置お知らせサービス」で車両の運行状況を確認することで、安全確実な運行体制を実現しているという。また、運行後は「運転日報」の評価点や「乗務員レポート」の改善ポイントなどを用いて、ドライバーに省燃費、安全運転を指導している。さらに「労務管理サービス」でドライバーの労働時間を厳格に管理。毎月の運行計画づくりに役立てるなど「MIMAMORI」は、同社に欠かせない装備となっている。
新人研修制度と実技試験で人材育成
早くからコンプライアンス経営を実践されてきた同社は、数年前からドライバーの安全教育に注力している。そのわけは、異業種からの転職者が増えているからだという。そのため同社では、新たに安全管理部門も設けると共に、充実した新人研修制度及び実技試験を実施しているそうだ。
「慢性的な人手不足に陥っている運送業界において、応募者が増えることはありがたいこと。当社では、人材獲得の好機と捉え、ドライバー未経験者でも積極的に採用しています。ただし、ここで気をつけなければならないのは、総じて異業種からの転職者は、ドライバーという職業の重責を自覚していないことです。最近は、社会を支えるエッセンシャルワーカーというイメージが先行し、運送業の現状を知らないまま、とりあえず応募してみた、という人も少なくありません。当社でドライバーとして働くのであれば、お客様からお預かりした大切な商品を確実にお届けする、という使命感を持ち、荷扱い、交通マナー、運転技術も、しっかり身につけてもらう必要があります」
と語られたのは安全課で課長を務める内部雄一氏だ。新人社員研修(座学)の日程は、4日間。ドライバーとしての心構えに始まり、業務内容、交通法規、KYT、車両点検など、同社のノウハウを集約した教育カリキュラムにそって教育する。その後、管理職が添乗して運転操作の実技訓練を実施。最終的に、独自に作成した「初任運転者実技指導項目」で、数日間かけてドライバーとしての適性とスキルを採点。80点以上の合格者だけが、晴れてドライバーデビューできる仕組みとなっている。
今後、コロナ禍に伴って失業者が増加し、異業種からの応募者が、ますます増加することも予想される。同社のように、未経験者を即戦力に育成する研修制度の実施は、とても理にかなった取り組みと言えるだろう。
社員の成長が企業を発展させる
ドライバー未経験者を採用して育成しても、すぐに辞められては意味がない。時間とお金が無駄になるばかりか、在籍するドライバーに悪影響を与えかねない。そこで同社は、3年前にドライバーに長く勤めてもらえるよう給与体系を見直した。また、誰もが働きやすい職場づくりを推進し、長時間労働を完全に是正。さらに、ドライバーの健康増進を目的にフィットネス器具を揃えたジムを社内につくった。その隣室にはマッサージルームを設け、事前に予約すれば施術を受けることができるそうだ。もちろん、清潔なシャワー室も完備されている。
「面接時にドライバーの仕事を明確に説明し、応募者のやる気をしっかり把握することが大事ですが、同時に安定した給与体系、働きやすい職場環境も、社員が安心して働き続けられる重要なポイントであり、企業側の責務であると思います。今後は、女性ドライバーを増やしたいと考えており、産休・育休・介護などからの復帰、半休などの取得など、勤務体系なども整備していく予定です。女性が快適に働ける職場は、男性社員にとっても働きやすい職場と言えますからね」
と笑顔で語られた福田社長。将来的には、松江市内に保管、流通加工、輸配送をトータルに行える物流拠点を開設することが目標なのだという。そのためにも、優秀な人材を確保・育成していかなくてはならない。働く社員一人ひとりの確実な成長なくして、企業は発展しないのである。
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