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毎日の運転の中に潜む危険とは? トラックの「ヒヤリハット」を解説!(前編)

突然の出来事に「ヒヤリ」としたり、事故の寸前で「ハット」気づいたり、そんな経験はありませんか?労働災害の経験則として知られる「ハインリッヒの法則」では「1件の重大事故の陰には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件の異常が存在する」と言われます。この300件の異常こそが「ヒヤリハット」です。しかし、「ヒヤリハット」は事故に至らなかったがために、かえって見過ごされる場合も多いと言われます。この記事では、前編・後編の2回にわたって、トラックの運転や仕事に関する「ヒヤリハット」について、その事例とともにご紹介します。今回は、毎日の運転に潜む「ヒヤリハット」について解説します。

「ヒヤリハット」が潜みやすい、乗用車よりも大きなトラックの「死角」

直接見えない、ミラーにも映らない、そんな「死角」がトラックにはたくさんある

「ヒヤリハット」が起きるのはトラックに限ったことではありません。しかし、トラックは乗用車と比べて大きく異なることがあります。それは、運転席から見ることができない「死角」が多いこと。その理由は、トラックは車高が高く、運転席の位置も高いため、乗用車なら問題なく見える側方や直前が確認しにくいのです。また、車両の大きさも、トラックの死角を広げている大きな原因です。大きな車体の幅は、側方の視認性を奪い、長大な全長は、後方の視界を極端に狭くします。このようなトラックならではの死角をできるだけカバーするために、たくさんのミラーが設置されています。それでも死角を完全に無くすことは難しいのです。

最も気をつけなくてはならないのは左側方視界と後方視界

なかでも、トラックでは助手席側の左側方の視界と、後方の視界に最も気をつけなくてはなりません。掲載の視界範囲のイラストをご覧いただければお分かりになると思いますが、助手席の窓の下やその後方で、ドライバーに直接見える範囲は限られています。ミラーを駆使しても大きな死角が残ります。
また、後方視界もかなり限られています。とくに、ドライバンやウイングなどのいわゆる箱車では、後方を直接確認することはほぼ不可能です。このような、トラックならではの死角に、「ヒヤリハット」が沢山隠れています。

トラックの事故が多発する交差点は「ヒヤリハット」の巣窟

交差点は、事故統計からも明らかな「ヒヤリハット」ポイント

冒頭で、「1件の重大事故の陰には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件の異常が存在する」というハインリッヒの法則をご紹介しましたが、これを実際に発生した事故の統計と合わせて見てみるとどうなるでしょうか。令和2年の統計では、車が通常走行する第一走行帯での事故が4,488件と最多となっています。しかし、これに匹敵する4,370件もの事故が交差点内で発生しているのです。その背後には、きっと無数の「ヒヤリハット」が発生しているはず。このように、交差点はトラックの運転において、とくに注意を払うべき場所といえます。

トラックの「ヒヤリハット」事例から学ぶ安全運転のポイント

トラックが最も注意したい交差点や十字路、T字路での「ヒヤリハット」事例

ここからは、実際にあった交差点での「ヒヤリハット」を、事例とともにご紹介します。

  1. 1交差点での左折時に、左後方から直進してきたスクーターを巻き込みそうになったケース

    左折時の巻き込みは、ドライバーもとくに注意をしているはずですが、交差点内の事故件数ではつねに上位を占めています。また、この事例のように、ドライバーが安全確認をした後、気づかないうちにスピードを出したスクーターや自転車が接近しているというケースもあります。交差点を出るまで、徐行を維持しながら側方・後方に注意を払い続けてください。

  2. 2交差点での右折時に、右後方から直進してきた自転車を巻き込みそうになったケース

    このケースでは、右後方の巻き込み確認が重要です。右折開始後も、ミラーだけではなく目視を含めた確認を心がける必要があります。

  3. 3脇道から無理に入り込んできた乗用車に衝突しそうになったケース

    相手が、こちらの予測とは異なる挙動をしたため、対処が必要になったケースです。自動車だけではなく、視界内で認識している自転車や歩行者でも、予期せぬ急な進路変更をする場合があるため、つねに注意を向けましょう。

通常の走行時でも発生する「ヒヤリハット」事例

交差点や合流のない普通の道での、ヒヤリとする事例です。

  1. 1見通しの悪いカーブの先の渋滞に気づかず、追突しそうになったケース

    緩やかなカーブのため減速するきかっけがなく、前方の道路状況の予測も怠っていたケース。進行方向の状況が少しでも不明瞭な時は、減速することが鉄則です。

  2. 2対乗用車
    車両通行帯の無い道路で正面衝突しそうになったケース

    車両通行帯が設定されていない道路では、減速して、距離を確認しながらの行き違いが安全です。場合によっては一時停止して対向車を行かせることも大切です。

夜間走行での「ヒヤリハット」も

24時間、365日、日本の物流を支えるトラックに、夜間走行を欠かすことはできません。しかし、夜間の視界は昼間に比べて圧倒的に狭くなるため、周囲の状況把握が難しくなります。このような夜間走行時の「ヒヤリハット」としてよく聞かれるのが「歩行者に気づくのが遅れた!」といったケースです。冬季は暗い色の服やコートを着る人が増えるので、さらに注意が必要です。また、夜間は動物の活動が活発になるため、郊外で小動物の飛び出しにヒヤリとしたという話もよく聞かれます。こうした「ヒヤリハット」の対策として有効なのが、ヘッドライトのこまめなハイ/ロー切り替えです。法規では、ハイビームは前方100mの障害物を確認できることとされていますが、ロービームは40mです。対向車の防眩に配慮しながらハイビームを活用すれば、より早く危険を察知できるかもしれません。また、スピードも抑え気味にすれば、異常に気づいても対応時間に余裕が生まれます。

まとめ

今回は「トラックのヒヤリハット」をテーマに、具体的な事例を交えて紹介しました。これらの事例から見えてくる運転のポイントは、交差点などの危険が潜みやすい場所では安全確認を確実に、かつ慎重に行うこと。また、予測運転とスピードを抑えることで、異常を早期に察知し、対応する時間に余裕を得られるようにすることです。いずれも特別なことではなく、安全運転の基本に通じることと言えます。次回は、トラックの「ヒヤリハット」の後編として、年間30万件前後も発生している路上落下物や、荷役作業などのドライバーの付帯業務に関連した「ヒヤリハット」について、事例とともにご紹介します。

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