食品分野へ進出し、総合物流企業へ躍進
豊かな水資源に恵まれ、木材の供給地に近接する静岡県富士市は、近代より製紙産業が盛んで、全国でも有数の “紙のまち”として発展してきた。製紙関連産業は、現在も富士市の主要産業のひとつであり、株式会社タカキューも、段ボール梱包資材などの運搬から運送事業を開始したという。ちなみに、タカキューという社名は、旧名の鷹岡急送を縮めたもの。1998年に社名を変更し、同時に本社を現所在地に移転させた。
同社が食品分野に進出したのは1995年のことである。地元の老舗和菓子店からの配送依頼を受諾したことから始まる。当時は、バブル経済が崩壊して景気が後退し、国内の紙需要の減少などによって、製紙産業に陰りが見え始めた頃だった。代表取締役の佐野寛氏は、先々のことを考え、チャレンジしてみる価値があると判断したそうだ。
「当社は、地元の運送事業者の中では後発組なんです。製紙関連の仕事は、これから過当競争が激しくなることも予想されることから、新たな顧客を開拓する必要がありました。食品は、衛生面や商品の取り扱い方、運行体制など非常に手間がかかる仕事ですが、運送会社としてレベルアップするには良い機会だと考え、お引き受けすることにしました」
これを機に同社に大きな仕事が舞い込んだそうだ。県内のコンビニ配送の仕事である。コンビニ配送と言えば、効率的な運行体制と厳しい衛生管理が求められる高度な配送業務である。しかも、静岡県は東西に長く、アクセスが悪い伊豆半島も含まれる特殊な地域。生半可な気持ちで仕事を受けることはできない。ところが、佐野社長は、躊躇することなく受託することを決断。 1999年に富士配送センター(冷蔵倉庫)を開設すると、食品(お弁当や惣菜、日配品等)のセンター業務(検品・仕分け等)及び県内配送を開始した。
これを皮切りに同社は、家庭用紙製品の保管・配送業務や、通販の商品保管業務なども受注するなど、順調に事業を拡大していく。今では、食品を取り扱う仕事が全体の7割を占めているという。さらに同社は、ここ20年で、富士市内において物流センター4拠点、倉庫4拠点を運営すると共に、グループ企業2社を設立。保有車両も100台を超える規模にまで事業を拡大。県内屈指の総合物流企業へと躍進した。なお、大きく翼を広げた青い鷹のロゴマークが、同社の目印である。
- 会社名
- 株式会社タカキュー
- 所在地
- 静岡県富士市大淵3685-1
- 設立年月日
- 1983年7月13日
- 代表者
- 代表取締役 佐野 寛
- 従業員数
- 246名
- 保有車両台数
- 106台
静岡県下を網羅する静岡イーグル便
現在、社長の右腕として、現場で指揮を執られているのが専務取締役を務める佐野智彦氏だ。佐野専務が同社に入社されたのは、ちょうどコンビニ配送を打診されていた頃だったそうだ。当時、まさか、ご自身がコンビニ配送を担当することになるとは、思ってもいなかったという。
「正直なところ、ウチでは荷が重過ぎる。ノウハウ、設備、人材、何もかもありませんでしたからね。さすがに社長も断るだろう、と思っていました。しかし、その後、社長から『引き受けることにしたから準備を進めてくれ』と指示を受けたのです。ホントに慌てました(笑)」
このときから佐野専務は準備に奔走することとなる。手探り状態ながら、顧客としっかりパートナーシップを結べるように、寸暇を惜しまず社内の体制づくりに取り組んだそうだ。センター運営を開始した直後はトラブルもあったものの、地道に改善を続け、見事にコンビニ配送事業を軌道に乗せた。その後、佐野専務は、この実績をアピールすることで、次々と食品や一般貨物の保管、流通加工、輸配送業務を獲得していく。そして、独自の共同配送サービスを「静岡イーグル便」と命名してブランド化。貸切便から小口の共同配送、冷凍・チルド・常温の三温度帯対応、24時間365日体制で静岡県全域をカバーするなど、顧客の多様な物流ニーズに応えている。
「静岡県内なら、一般貨物でも食品でもケース単位で運べること。さらに、物流業務全般をトータルにお引き受けできることが当社の強み。当社の物流プラットホームを活用すれば、お客様は、事務・管理業務の軽減、効率化によるコスト削減が可能です」
と語られた佐野専務。また同社は、物流拠点を富士市内に集中させるドミナント戦略により、同地域における優位性を実現している。
成長戦略の一環として デジタル化を促進
同社の特徴がもうひとつある。それは業務のデジタル化である。同社は、 2002年にGPS動体管理システムを全車に搭載。運行管理や業務管理をデジタル化することで、社内で情報を共有化できるようにしたのだという。佐野専務は、その目的と効果について、次のように説明された。
「当社の車両には、車載カメラが5台付いています。事故があれば、映像を分析することによって、ヒューマンエラーなのか、あるいは外部環境によるものなのか、真の原因を特定できます。そのおかげで、事故を含めて何かことが起きれば、ただちに対応できるし、問題の原因がはっきりしているので、すぐに有効な対策を講じることができるのです。当社では、車両位置、車速、燃費、荷室内の温度、整備状況などが、すべてリアルタイムで確認できます。これで運転業務のリスクを削減し、ドライバーの負担を軽減しています。また、運行管理、事務作業の属人化を解消し、業務の効率化を図っています。最近は、物流企業でも容易に利用できるシステムが安価で手に入れられるようになりました。もちろん、デジタル化を活用するには、最低限の知識と工夫が必要です」
同社では、IT点呼やリモート面談なども導入済みで、今後もデータやデジタル技術を活用して、業務の効率化に役立てていきたいという。
物流マンのプライドを持ち地域ナンバーワンをめざす
こうして今日まで総合物流企業として確固たる地位を築き上げた同社。それに並行してドライバーや倉庫作業員の数も年々増加。佐野専務は、共に働く従業員に、常日頃から伝えていることがあるそうだ。
「物流マンは縁の下の力持ち。皆さんは豊かな生活を支える大切な仕事を担っており、プロとしてプライドを持って働いてほしい、とよく話しています。また、公道を利用する仕事なので、一般の方に迷惑をかけるようなことがあってはならない。一人ひとりが物流業を代表している、という気概をもって仕事に取り組んでもらいたいと考えています」
もちろん、同社では従業員の努力に報いるため、充実した研修制度を通じて安全性を確保。また、各種免許取得制度によってスキルアップを支援している。さらに、社内マッチング制度で働く人たちのプライベートの環境変化や希望に柔軟に対応。希望すればドライバーをはじめ、倉庫作業員、リフトマン、事務職などから職種を選ぶこともできるそうだ。借り上げの社員寮も完備。最後に今後の展望について、佐野専務にお話を伺った。
「今思えば、食品業界やコンビニ配送へ進出を決めた、経営者としての父(現社長)の判断は正しかったのだな、と感服しています。これからは、この培ってきた物流サービスを、さらに発展していけるよう事業に邁進していく所存です。地域に密着し、地域ナンバーワンをめざしてまいります」
ドミナント戦略によって、富士市の空に高く舞い上がった青い鷹。タカキューは、スケールメリットを活かした物流サービスを提供し、さらに高く飛翔していくことだろう。
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