株式会社印南陸運

先代社長の意思を継ぎ、社員一丸となって事業拡大に向けて始動

栃木県大田原市に本拠を構える株式会社印南陸運は、今年4月に経営者が急逝。
残された社員たちは、先代社長の遺志を継ぎ、さらなる事業拡大に向けて歩み始めた。

企業理念を刷新 より結束を固め事業へ邁進

栃木県大田原市において、今年創業35周年を迎える株式会社印南陸運。ところが、この4月、同社に思いがけない不幸が襲った。創業者として長らく社長を務められてきた印南博文氏が急逝されたのだ。あまりに突然のことで、一時社内に動揺が広がったものの、滞りなく葬儀を終えると、代表取締役社長には奥様が就任され、事業運営は、同社の幹部が協力して引き継ぐこととなった。落ち着きを取りもどした同社は、新たな経営体制のもと、社員一丸となって事業に取り組まれている。同社で陣頭指揮を執ることになった大島専務から、先代社長の人柄が偲ばれるエピソードを伺うことができた。

「今年4月に念願の新社屋が完成したのですが、先代社長は、その仕上げとして、外壁に大きなネオン看板を取り付けることにしました。ドライバーが、この看板をめざして毎日無事に帰庫できるように、との想いからです。また、そのときに『私が亡くなっても看板は外すなよ、そこから社員を見守り続けているから』なんて、笑いながら話されていたんです」

先代社長は、完成した看板を見ることなく亡くなられましたが、私たち社員は、その看板を見上げるたびに、みんなで頑張ろう、という気持ちになります。いつも社員のことを気にかけてくれた社長でしたので、本当に我々を見守ってくれているような気がします」

先代社長の名前である“博”の字をあしらったネオン看板は、同社のシンボルとして、社員の心に深く刻み込まれている。また同社の印南常務は、今後の事業運営の在り方について、次のように語られた。

「先代社長は、一から会社を作り上げてきた方です。景気が良いときも贅沢せず、堅実な経営を貫くことで、幾度の不況を乗り越えてきたと聞いています。当社には、そんな社長の経営方針が、しっかり根づいており、これを糧に事業に邁進したいと考えています」
同社は、コロナ禍という、かつてない試練に直面している中で、精神的な支柱を失うことになったが、これまで以上に社員の結束力は高まっているという。

新社屋オフィス(栃木県大田原市)
今年1月に開催された新年会には、急逝された印南博文社長も出席(写真前列のセンター)
会社概要
専務取締役 大島 貴弘 氏
会社名
株式会社印南陸運
所在地
栃木県大田原市薄葉2708-7
設立年月日
1985年10月
代表者
代表取締役社長 印南 千恵子
従業員数
50名
保有車両台数
46台

人が会社をつくり組織が人をつくる

常務取締役 印南 賢一 氏

栃木県を拠点に事業を展開してきた同社は、リフォーム用の住宅用建材やオーバードア(大型の扉、シャッター等)、マンホール蓋などの鋳鉄製品、医療用精密装置、自動車部品、タイヤなど多岐にわたる製品輸送を行っている。主な輸送エリアは、関東一円と東海・中部エリア。2トン車から大型車まで取り揃え、物量や運行距離によって最適な車両を選択。高効率な輸送体制を構築している。また、丁寧な荷役、迅速な対応、清潔な車両など、同社の仕事振りは、顧客から高く評価されており、長期にわたる取引先も多いそうだ。

「当社は、早くからドライバー教育に注力しており、運転技術、荷役作業のスキル向上に努めると共に、コミュニケーション能力を高める指導も行ってきました。“人が会社をつくり、組織が人をつくる”というのが、先代社長の口癖で、当社は、優秀なドライバーを育成することで、提供するサービスの質を高めてきたのです。これが当社の最大の強みですね」
と語られた大島専務。

事務所 主な運行エリア

安全意識を高めることで品質向上、コスト削減

同社がドライバー教育にこだわる理由がもう一つある。それは、ドライバーの安全意識を高めるためだ。安全は、高品質な輸送サービスを実現するだけではなく、燃料費や修繕費、保険料の低減にもつながる。同社では、定期的に安全会議を実施し、安全への取り組み、事故事例に基づく指導を行ってきた。社内には、全ドライバーの月毎の燃費グラフが張り出されており、競うように省燃費運転へ取り組んでいるという。また印南常務は、培ってきた経験則やノウハウは、ベテランから新人・若手へ伝えることが同社の慣例となっていると話す。

「日頃からドライバー同士が声をかけ合って、運転技術や事故情報について情報交換しています。またドライバーには、事故(軽微含む)や交通情報、車両コンディションに関することまで、何かあれば逐一会社へ報告するよう義務づけています。その情報は直ちにメールで全ドライバーへ一斉送信。情報共有化、注意喚起に役立てています」

さらに3月からは、新型コロナウイルスの感染症対策として、手洗い・消毒、マスク、ソーシャルディスタンスについて徹底指導しているとのこと。受領書は、現場でドライバーが記入して顧客に確認してもらうなどの対策が講じられている。

中型トラックフォワード

自前の整備工場と整備管理システムで安全を支える

現在、同社の保有車両台数は46台。駐車場には、メッキパーツでドレスアップされたスカイブルーの車両が並ぶ。

「いすゞ車は、精悍なキャブデザインがカッコイイですね。運転し易く、乗り心地も良いので、ドライバーにも好評です。車両を見かけて応募してくる方が多く、当社ではドライバー不足に悩まされたことがありません。車両は会社の顔ですから、つねにきれいに、整備も万全です。ドライバーに人気の車両は、大事に扱ってくれますし、無理な運転もしなくなります」
> と印南常務。同社の車両は「いい車だね」と、顧客の評価も高いそうだ。なお同社は、自前の整備工場で車両整備や修理を行っている。さらに、先代社長が独自に開発した整備管理システムを活用して、全車両の状態をチェックしており、こうした、きめ細かな仕組みが同社の安全運行を支えているのだ。

自前の整備工場(左)と独自に開発した「整備管理システム」(左下)。月毎、全ドライバーの燃費グラフを掲出(右)し、省燃費運転を推進

先代社長の遺志を継ぎ事業拡大に取り組む

今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴う「緊急事態宣言」により、少なからず事業に影響が出ているという同社。しかし、このまま売上が減少していくのを見過ごすわけにはいかない、と大島専務は語られた。

「先代社長が、手塩にかけて築き上げた会社を我々が潰すわけにはいきません。今までは、お客様に恵まれ、仕事があって当たり前と安心しきっていましたが、これからは、つねに危機意識を持って経営にあたる所存です。具体的には、セールスドライバーを育成し、受注拡大と、お客様の新規開拓に取り組んでいく方針です。幸い当社には、スキルの高いドライバーが大勢在籍していますので、このリソースを上手に活用していきたいですね。

一方で近年、運送業界は、ドライバーに大きな負担を強いる長時間労働の是正など、労働条件や労働環境を改善するよう求められています。当社としても、今後はコンプライアンスを重視した経営をめざす中で、労働時間をしっかり管理し、同時に福利厚生の充実に努め、ドライバーにとって働きやすい職場づくりを進めていきたいと考えています」

コロナ禍の中で、唯一無二の存在だった経営者を失い、思いがけず大きな岐路に立たされることになった同社。しかし、長年ドライバー教育に取り組まれてきたことが幸いし、先代社長の遺志を継ぐ社員たちが、しっかりとした足取りで歩み始めている。これからも同社は、多様な顧客ニーズに対応すると共に、新たな物流時代に適応し、事業を拡大していくことだろう。

大型トラックギガ

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