畑作に適した肥沃な大地が広がる北海道十勝平野。その北部に位置する士幌町は、町の面積の約6割を農用地が占める農畜産業の町である。早くから生産、加工、流通を地域で担う農村工業を導入し、寒地型農業、そして付加価値農業を実現。その農畜産品が生み出す利益によって、町は発展を遂げてきた。最近では、新鮮な空気と清らかな水で育った士幌町のブランド牛「しほろ牛」が特産品として知られており、肉牛の生産頭数が飛躍的に増えている。
この士幌町に本拠を構える北斗運輸株式会社は、地域及び農畜産業の発展に欠かせない建設・土木事業を営む北斗産業株式会社の子会社として、1980年に設立される。畜産業の拡大が見込まれる中で、専属的に配合飼料などの資材運搬を担える運送会社を設立することが目的だったという。当時、北斗産業の木工場に勤務していた現社長の藤澤隆夫氏は、工場の閉鎖に伴い運輸部門設立と同時に課長職で同社に異動となる。以来40年間、事業の推進役として経営に携われてきた。藤澤社長は、当時を振り返りながら次のように語られた。
「当社の創設者である太田寛一氏(故人)は『農民が生産した物は、農民が加工して販売しなければ、農民の生活は豊かにならない』と考え、今日の農村工業の道を切り拓き、士幌町の農畜産業の発展に尽力された人物です。当社の設立時に『農村の隅々まで幸運を運び、それを全国に届ける』と語られ、当社の果たすべき社会的な使命を説かれました。当社は、この言葉にちなんで『運を運ぶ』を社是とし、今日まで運送事業に邁進してきたのです」
1980年12月、バルク車など7台で営業を開始した同社は、主に配合飼料の配送サービスを提供する中で事業基盤を確立していく。また、地域の輸送需要に応え、飼料・肥料の原料や地域の農産物、さらに加工食品、冷凍食品、乳製品などは、道外までも運搬を手がけるようになる。こうして士幌町農業協同合員の一員として運送を担い続けてきた同社は、2019年度には26億4千万円もの売上高となる。
これもひとえに各協力会社と職員のお陰だと藤澤社長は話す。なお現本社は2012年に新築したそうだ。広々とした敷地には、社屋のほか、配合飼料などを一時的に預かる保管倉庫、車両整備場、自動洗車場(屋内)、給油所などが設けられている。