トラック大図鑑

教えて!「フレーム」のこと

ここは、神奈川県湘南台の喫茶店「いすゞCafe」。しぶいマスターが一人で切り盛りしている。
若いころはトラックドライバーとして活躍したらしく、
店にはそのころの写真や思い出の品が飾られている。
今日も地元の若いカップルが、おいしい珈琲に惹かれてやってきたようで・・・。

きょうこ

マスター、あたしはキリマンジャロ

あきら

ふー。痛てて…。あ、ぼくもキリマン・・・

マスター

ん?どうしたの、あきらくん。どこか悪いの?

きょうこ

それが昨日草野球やって、カラダねじっちゃってから、背中が痛い痛いって

マスター

病院行った方がいいんじゃないの

きょうこ

だいじょうぶですよ。あきらくん、運動不足なのにはりきりすぎるから

あきら

ひどいなあ。背骨って大事なんだぞ

マスター

大事だよね

あきら

ふー。でもだいぶ良くなったよー。マスター、トラックで背骨の部分っていったらなに?

マスター

うーん。フレームかなあ

きょうこ

フレーム?

マスター

いや、フレームは背骨以上の存在かも知れないね

あきら

フレームって言葉は知っているけど、どんなものかピンとこないなぁ

マスター

うん。今は乗用車ではフレーム自体がない作り方をしているものがほとんどからね。それにだいたい、ふだん見えないものだからピンと来ないのもムリもないかも知れないね

トラックフレームついて

フレーム位置図解

マスターが「背骨以上の存在かも」といったほどのフレーム。なぜかというと、トラックの「エンジン」「トランスミッション」「タイヤ」といったすべての部品はフレームに組み付いているからです。そんな大事な役目のフレームですが、細長い鉄骨のような外見で、トラックの下の方に位置していますので、チラッと見えるぐらいです。

トラックのフレームは、それじゃどんなゴツイものかと思いますが、意外と幅がなく、2.5mも車幅のある大型トラックでも、だいたいその1/3ぐらいの幅しかありません。そんなフレームが車体を支える役目を果たしているのです。

トラックのフレームを見ると、たくさんの穴があいていることに気がつきます。この穴はデタラメにあけられたものではなく、先ほど述べたように「すべての部品」を取り付けるという役目のフレームだからこそ、いろんな部品が取り付けられることを念頭に置いて、あらかじめ穴が準備されています。

トラックというのは、働く車です。そして、その働く場所や用途もさまざまで、「ダンプ」や「消防車」など、働く場所、役目によっていろいろな形があります。
ドライバーが乗っているキャブの部分は同じでも、トラックの使い道によって、「架装物」と呼ばれる、作業を行う部分つまり後ろの荷台部分が変わってくるのですね。
そんな中、いろんな用途に応じて、いろんな部品などがフレームに付くことになります。それにあわせてたいへん多くの種類のフレームをメーカーは準備しておかなくてはなりません。
そして、そのフレームには用途に応じて部品が付く穴をあらかじめ準備しておくのです。
むろん、全部の穴を使わないこともありますので、出来上がったトラックのフレームを見ると、使われなかった穴が残っていて、それが見えることもあるわけです。もちろん、穴が開くことによって強度が落ちないように開発されています。

フレームの種類

ピックアップトラック(D-MAX)
小型トラック(ELF)
中型トラック(FORWARD)
大型トラック(GIGA)
あきら

いまさらだけど、トラックの使い道ってさまざまなんだね

マスター

そう。コンビニの配送や砂利の運搬じゃ全然違うよね

あきら

やっぱり働く車なんだなあ

マスター

フレームの上側、つまり荷台の部分はドライバーや作業する人たちが使いやすいようにしなくてはいけないんだね

きょうこ

乗用車とはぜんぜん違うんだ

マスター

乗用車は、たとえば同じブランドの車だったら、ある程度できあがった形で来るから、そんなに大きく形を変えたりしないよね

きょうこ

そうね

マスター

トラックは使う人たちが働きやすいように、いろんなことが要求されるんだ。フレームもそんないろんなことを頭に入れて開発しなくてはいけないから、単なる長い鉄骨ではないんだよ

フレーム求められること

マスターが言ったように「フレームの上側」は使う人たち、つまり働く人たちのスペース。使う人は荷物をたくさん積みたいので、できるだけ広く場所を使いたいのです。だから、フレームに取り付けた部品がはみ出て、場所が狭くなったり、使いにくくなったりしないように気をつけなくてはなりません。
その上、すべての部品はフレームにつくので、効率的に部品を配置しなくてはいけないし、むろん安全性も高めなくてはいけない。フレームを開発する上では、こんなにいろんな問題を解決するための工夫が必要になるのです。
安全性、という点ではもちろん強度も大事ですが、万が一のことも考えると、「つぶれないように」、しかし衝突時のエネルギーを吸収するために「最適につぶれるように」という矛盾したふたつの問題もクリアしなくてはいけません。
大事な荷物が傷まないように、トラックの後方はフレームの強度を高めます。ただし、前方には人間が乗っています。大きく急激な衝撃があった場合、中の運転手のことを考えると、ある程度フレームが適切につぶれないとかえって危険なので、その辺を両立させるように日々改良が検討されています。

シミュレーション解析例図解

この他にも「剛性」「軽さ」も重要になります。
例えば高速道路を走行していて車線を変更するときなどに、トラックにはねじられるような力が加わります。そんなときにも安定して走行できる適切な剛性を持ったフレームでなくてはいけません。「ねじる」「曲げる」、そんないろいろな力が加えられても対応できるフレームが、操縦安定性のある乗り心地の良いトラックには必要不可欠です。
そしてトラックには、燃費を良くしたり積む荷物を増やしたりできるよう、車体の重量をなるべく軽くすることも求められます。車体の数パーセントの重さをフレームが占めているので、その重量を少しでも減らすこともとても大事なんです。

これらすべてを成立させるために、フレームの開発は様々な工夫をしているのです。

あきら

確かにフレームって人間の背骨以上のたいへんな役目をしているんだね

マスター

うん。ほんとに普段は見えないけれどね

きょうこ

なんか家の大黒柱みたいね

マスター

そう、それがあってこそ部屋ができるんだからね

あきら

何かフレームって男らしくっていいね。ぼくもフレームみたいな男でありたい

きょうこ

あんな草野球で背中を痛めるぐらいじゃムリね。運動不足な男はダメよ!

マスター

おっと。フレームじゃなくてクレームが来たね

こうして湘南台の喫茶店『いすゞCafe』では、マスターとカップルのよもやま話はつきることがないようである。

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