世界で活躍する日本の物流企業


中国進出のきっかけと業務概要について教えてください。

伊藤忠ロジスティクス株式会社
海上第一本部 食料・プロジェクト部長
原田 茂樹 氏
 冷凍冷蔵物流に関する業務としては、2001年に青島(チンタオ)において、山東省で事業展開されている日系食品メーカー様などを対象とした水産物の倉庫保管サービスをスタートさせました。その後、このサービスを広めるための一手として、自社で輸送サービスを2009年に始めました。当時はリーマンショックの影響もあり、対日向け事業を見直して、中国国内市場に活路を見出そうと転換され始めた日系企業様がおられ、中国国内の輸送においても高品質の輸送サービスを求めるお客様に、応える形で取引が始まりました。
 現在では、青島を基点に北京・上海への幹線輸送を週3便運行しています。また、四川省の成都・重慶・広東省の広州向けのスポット依頼にも対応しています。おかげ様で、当初からお付き合いのあるお客様との取引はかなり伸びており、運行頻度を高めることも視野に入れています。現在の主要取引先様は、中国進出時から取引を始めた企業です。不特定多数の企業に向けた宣伝は行わず、クチコミにより拡大してきました。温度管理・時間管理の厳格さを売りにしていましたから、慣れない環境である以上、不特定多数のお客様向けの混載は無理が生じるため、少数のお客様に特化し2年3年と続けました。その結果、信頼をいただけたものと考えています。

中国での物流事業展開には、どんな苦労がありますか?
 中国において、倉庫サービスのみならず輸送管理まで行うことにはリスクが伴うという認識はありました。そもそも北京・上海の幹線輸送から始めたのは、青島から片道12時間くらいの距離が、問題なく管理できる輸送時間であり、24時間・48時間と伸びた場合は積みかえ等も生じ、なかなか手の内で管理するのが難しいと考えたからです。また、中国では運送事業免許取得の準備だけでも1年近くを要します。当社は全土における運送事業を取得していますが、物流に関する基準が明文化されていない地域もあり、国家基準がなければ地方基準、地方基準がなければ業界基準に従う、といった個別対応が必要となるなど、日本のようにはいきません。

いま中国では、消費動向に変化が起きているようですが・・・
「2010年 国家発展改革委員会発表の骨子」(抜粋)
 ご存知のように、サーモンやマグロ等の水産物の消費が増加しているということは良く言われるようになりました。加えて、昔と比べ温度管理輸送が広まってきたことにより、2009年頃までケーキにはバタークリームが使われていたのが、いまでは生クリームが使われることが多くなる事例が見受けられます。それに呼応するように、物流に対するニーズも、コスト重視から温度管理・安全管理重視の傾向、つまり「食の安全と安心」にあります。実際、いま中国では国家主導でコールドチェーンの拡充が図れらており、つぶさに動向を注視しています。

日本と比べ、規模・レベルにおいて課題が大きいように思えますね。
 そうですね。やはり現地企業において、日本と同レベルの管理ができている企業は少ないと感じます。例えば当社では、車両にGPSを装着し、温度もモニタリング可能です。あるお客様へは1ヶ月単位で温度チャートを提出しており、それらの取り組みを品質確保に必要なコストとして考えていますが、同じように考えられる企業は多くないでしょう。
 しかし、皆さんがイメージされているより、中国は進んでいるとも言えます。例えば上海ではインターネットを利用した集荷(集車)システムがあり、20万台もの車両が登録されています。また、元来暑い南の地域においては、日系物流企業に遜色ない品質で温度管理を行う会社があると聞きます。中国はビジネスのスピードが速いため、あっという間に追いつかれるかもしれません。国家が目標を掲げている以上、業界全体が今後急速に発達していくと考えられます。

中国における事業展開のポイントは何でしょうか?
 従業員の育成です。マニュアル等も大事でしょう。言葉では伝わらないこともあるので、最初は簡単な「荷物を積んだ際に写真を撮る」というようなことから入っていく。そして繰り返し繰り返し教えることです。また、トラブルにはトップが率先して臨むことで、何が問題なのかを彼らに理解してもらうことも大事です。お互いの文化が異なることを前提としてそれらの取り組みを続けることで、離職率を下げ、定着させなければなりません。
 また管理者の育成も重要です。我々の仕事は24時間張り付いて見ることができないため、いかにして信頼できる中堅の管理者を育てるかということが鍵になります。日本の温度管理や安全管理等のノウハウは、もちろんどの国でも通用すると思います。しかし従業員をどうやって使っていくか、そういった点ではやはり現地のやり方に合わせなければうまくいきません。

今後の展望について教えてください。
 いかにしてネットワークを拡大し、幹線輸送網を広げていくかが最重要課題です。日本と違い都市間の距離が長く都市が連続していないため、それらの点を面としてどう繋いでいくかを考えています。既に現地展開している日系物流企業様もおられると思いますので、今後は競争するべき所は競争しつつ、連携をとれる所は連携をとっていきたいですね。

中国進出をお考えの物流企業様へのアドバイスは?
 あまり「日本の物流品質は高いから大丈夫」という意識は持たない方がいいでしょう。確かに日本でやっている方法をやり通せれば、ちゃんとしたオペレーションはできるでしょう。しかし、先ほども述べたように、中国はいま国家主導で急速に温度管理物流のレベル向上を図り、底上げが進んでいます。人材教育に関しても日本で通用していたことが通用しないこともありますから、いまお持ちのイメージに囚われることなく、「百聞は一見に如かず」を実践するべきでしょう。


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