環境・エネルギー問題の切り札「クリーンディーゼル」が拓く新時代

(輸送リーダー:2011年7月号)
株式会社メッツ研究所 矢坂良雄





東日本大震災によりCO2削減目標の達成・石油依存からの変革に暗雲
 2011年3月11日の東北・北関東で発生した東日本大震災は、死者・行方不明者約2万3千人、避難者約14万人(2011年4月22日現在)、被害総額約25兆円と推計される、戦後最大の自然災害となってしまった。
 震災を契機に、都市計画・地方分権・地域社会のあり方に対する発想の大転換、交通通信・物流システムの再編などとともに、エネルギー政策や地球温暖化問題が大きく見直されることになろう。
 2005年、アメリカ南部を直撃したハリケーンによる甚大なダメージを契機に、原油価格は2008年には1バレル130ドル台にまで高騰、世界は、70年代に2度のオイルショックを経験したにもかかわらず、依然として変わらない石油依存体質を際立たせただけでなく、再びエネルギー政策のあり方が厳しく問われる状況にある。アメリカでは、2006年、ブッシュ大統領が一般教書演説で、エネルギー安全保障の観点から「2025年までに中東石油依存度20%を5%に低減」を目標とし、これが、続くオバマ政権も共通して掲げるエネルギー政策の根幹となっている。
 一方、巨大台風、大規模な干ばつ、大雨・洪水、熱波、暖冬、豪雪など地球温暖化が要因と考えられる異常気象が世界規模で多発している。地球温暖化は人的活動によるCO2など温室効果ガスの排出がもたらしていること、人々の生活や経済活動に影響を与えている可能性が高いことは世界の共通認識になりつつある。
 京都議定書(1997年)に掲げられた、わが国の温室効果ガス(CO2など)「6%削減」(1990年度比)の目標は、2008年の「低炭素社会・日本」(いわゆる福田ビジョン)では、長期目標として2050年までに60〜80%、中期目標として2020年までに現状から14%のCO2削減が打ち出され、2009年のコペンハーゲン合意において、当時の民主党・鳩山首相は2020年までの温室効果ガス排出削減の中期目標として「90年度比25%削減をめざす」と明言した。しかし、大震災を経たいま、電力はじめ化石燃料への回帰・依存が再び高まることは必至とみられ、「25%削減」の目標は大きく揺らいでいる。

2000年度以降、順調に推移してきた運輸部門のCO2削減
 わが国のCO2排出量のうち、運輸部門(自動車、船舶、航空機など)からの排出量は約19%を占める。1990年度に比べ1996年度排出量は21%増加したものの、1997年度から2001年度にかけては横ばい、2002年度からは減少しはじめ、2009年度には229百万トン(速報値)にまで減じ、2010年度目標を既に上回って削減している。
 自動車は運輸部門の排出量の87.3%(日本全体の17.9%)を占め、このうちトラック(貨物自動車)に限ると運輸部門の35%を排出しているが、トラックの排出量は1997年度に比べ2001年度にはマイナス(-8.9%)に転じ、2002年度に比べ2008年度は-14.1%に減じており、自家用乗用車などに比べ排出量の抑制に貢献している。これは、トップランナー方式による排出ガス規制や燃費基準の設定をはじめとする単体対策、急加速・急減速の抑制やアイドリングストップなどエコドライブの普及の効果、そして、大多数のトラックにおいて採用されるディーゼルエンジンが、ガソリンエンジンに比べ燃費が良くCO2の排出量が少ないということが寄与していると考えられる。

部門別の温室効果ガス排出量の推移と目標


運輸部門における二酸化炭素排出量の推移


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